第43話 学園祭騒乱――欠片狩りと、守るための戦い
黒い霧が上空へ押し上げられ、
展示区画に一瞬の静寂が落ちた。
観客たちは、
自分たちが助かったことを
まだ理解しきれていない。
侵入者は、
フードの奥から俺を見つめ、
低く笑った。
「……見事だ。
空間を“操作”するのではなく、
配置を再定義したか」
(専門家か……
こいつ、俺の力を知ってる)
アストレア教官が叫ぶ。
「ミナト!
距離を取れ!
結界班、侵入者を――」
「無駄だ」
侵入者が指を鳴らす。
次の瞬間、
周囲の結界が“ずれた”。
完全に壊れたわけではない。
だが――
守るべき位置から外れた。
警備魔術が、
侵入者をすり抜ける。
(こいつ……
俺と似た系統……!?)
侵入者「安心しろ。
私は戦闘が目的じゃない」
フードの奥、
覗く瞳は冷たく澄んでいた。
「回収が目的だ」
■ 欠片狩り
侵入者の背後に、
黒い紋様が浮かぶ。
《位相固定・断層展開》
空間が“段差”のように歪み、
俺との距離が一気に詰まる。
(速い……!)
侵入者は、
俺の胸元に視線を向けた。
「その欠片は――
君には過ぎたものだ」
(……渡す気は、ない)
俺は後退しながら、
観客席の方向を確認する。
(まだ人がいる……
ここで派手にはやれない)
侵入者は、
俺の迷いを見抜いたように言った。
「いい判断だ。
だから――」
「奪う」
侵入者の手が伸びる。
その瞬間。
■ 光が割り込む
「――させない」
澄んだ声。
白い光が、
侵入者と俺の間に差し込んだ。
リリアだった。
光の結界が展開し、
侵入者の手を弾く。
侵入者「……光のアークライトか」
リリア「ユウトから、
離れて」
(リリア……来るなって言ったのに……)
侵入者は、
少しだけ興味深そうに言った。
「未来視の芽。
なるほど……
“対”として育てられている」
(知りすぎだろ……!)
■ 連携
俺は、
一瞬で決断した。
(守る。
リリアも、観客も)
俺「リリア、
人を外へ!」
リリア「……わかった!」
彼女は即座に動き、
光の誘導路を作り出す。
混乱していた人々が、
自然と出口へ流れていく。
(すごい……
判断が速い)
侵入者は舌打ちした。
「連携が早いな」
(学園での訓練は、
無駄じゃなかった)
■ 本気の一歩手前
侵入者は、
掌に黒い水晶を浮かべた。
「時間切れだ」
水晶が、
俺の欠片に“共鳴”する。
胸が、強く脈打つ。
(……引き抜く気だ)
エリスの言葉がよぎる。
《奪われれば、
あなたは“空っぽ”になる》
(それだけは……!)
俺は、
欠片に語りかけた。
(壊さない。
奪わせない。
――閉じる)
空間の“結び目”を、
一気に締める。
侵入者の水晶が、
ひび割れた。
侵入者「……!」
初めて、
表情が歪む。
「まだ、未完成のはず……
ここまで干渉できるとは……」
■ 退却
侵入者は、
距離を取りながら笑った。
「いい。
今日は退こう」
黒い霧が、
再び足元に集まる。
「だが覚えておけ。
欠片狩りは、
私一人じゃない」
「学園は――
安全地帯ではない」
霧が弾け、
侵入者の姿が消えた。
■ 静寂のあと
結界が復旧し、
警備が場を制圧する。
観客は無事。
大きな怪我人もいない。
アストレア教官が、
俺の前に立った。
「……よくやった」
エリスも、
珍しく素直に言う。
「最適解だった。
被害最小、
目的達成」
リリアは、
俺の袖を掴んで震えていた。
「……怖かった」
俺は、
彼女の手を握り返す。
「……守れた」
(それで、いい)
■ 変わったもの
学園祭は、
途中で中断された。
だが――
何かが、確実に変わった。
・欠片狩りの存在
・ 学園の安全神話の崩壊
・ 俺が“守る側”に立った事実
胸の奥で、
欠片が静かに応える。
(次は――
もっと大きな選択が来る)
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