第42話 学園祭開幕――華やぎの裏で、侵入は始まる
朝。
アステル学園の正門が開かれ、
街から人々がなだれ込んでくる。
商人、家族連れ、貴族、冒険者。
学園祭は年に一度、
一般人にも開放される最大の行事だった。
色とりどりの魔導灯。
宙を舞う幻影広告。
甘い匂いと、焼き物の煙。
ティオ「やっば!!
テンション上がるわこれ!!」
ルカ「屋台多すぎ!」
ミーナ「ひ、人……多い……」
シオン「……警備配置、確認。
外周は強いが……内側は薄い」
(最初から分析モードだな……)
俺は、
特待クラスの腕章を付け、
展示区画へ向かっていた。
(今日は“制御の実演”。
壊さない。目立ちすぎない。
それで終わるはず――)
■ 特待クラス展示――「制御の魔術」
展示区画には、
透明な結界で囲われた小さな舞台。
観客席には、
子どもから大人まで、
期待の目が集まっている。
アストレア教官「落ち着いていけ。
今日は“安全”が最優先だ」
俺「はい」
最初は、
他の特待生の展示。
火を球状に保つ制御。
水流の形状維持。
風の精密誘導。
どれもレベルが高く、
観客から歓声が上がる。
(……すごいな。
普通に魔術展示として完成度高い)
そして――
俺の番が来た。
■ ユウトの展示
アストレア教官「次は、
ミナト・ユウトによる
“位置干渉の制御”だ」
ざわっ、と空気が動く。
(やっぱり注目度高い……)
俺は、
結界内に置かれた小さな木箱を見る。
(壊さない。
消さない。
ただ――)
(位置を、少し変える)
指先で“触れる”イメージ。
次の瞬間。
木箱は、
音もなく、三十センチ横へ移動した。
「おお……!」
「今の、どうやったんだ?」
「転移魔法じゃないぞ……?」
俺は一礼する。
(よし……問題なし)
アストレア教官も頷いた。
(このまま、無事に終われば――)
その時。
■ 違和感
胸の奥で、
欠片が微かにざわめいた。
(……?)
一瞬、
空気が“冷えた”。
視線を巡らせる。
観客席の端。
フードを深くかぶった人物。
(……さっきから、動いてない)
ただ立っているだけ。
でも――
周囲と、噛み合っていない。
(来た……)
■ 同時刻、学園内の別地点
中庭。
リリアは、
友人たちと屋台を見ていた。
リリア「……っ」
胸を押さえ、立ち止まる。
友人「リリア?どうしたの?」
リリア「……ごめん。
先に戻る」
(嫌な……未来……
はっきりしないけど……近い)
彼女は、
展示区画の方向を見る。
(ユウト……)
■ 展示区画・異変
再び、舞台。
次の展示者へ交代しようとした瞬間――
《……キィ……》
結界が、
かすかに軋んだ。
アストレア教官「……?」
次の瞬間。
観客席の一角から、
黒い霧が噴き上がった。
「きゃあ!!」
「な、なに!?」
悲鳴。
結界の外側で、
人々が混乱する。
フードの人物が、
低く呟いた。
「……捕捉」
その視線が、
一直線に――俺を射抜く。
(……狙いは、俺)
■ 侵入者
アストレア教官「警備!!
侵入者だ!!」
だが、
霧は“視界”ではなかった。
感覚を、ずらす。
人々が、
自分の位置を見失い始める。
子どもが転び、
人波が崩れる。
(まずい……
このままだと、怪我人が出る)
俺は、
一瞬だけ、迷った。
(力を使えば、目立つ。
でも――)
リリアの言葉がよぎる。
《一人にならないで》
《無茶しないで》
(……でも)
(今、守れるのは――)
■ 選択
俺は、
舞台から一歩踏み出した。
アストレア教官「ミナト!
出るな!!」
俺「……すみません」
(壊さない。
消さない。
でも――)
(人を、守る)
胸の奥で、
欠片がはっきりと応えた。
(……やる)
俺は、
霧そのものではなく――
“霧が広がる空間”に触れた。
(ここから――
ここまで)
(動け)
次の瞬間。
黒い霧は、
人のいない上空へと“押し上げられた”。
悲鳴が止まる。
侵入者が、
初めて驚いたように目を見開く。
「……ほう」
「やはり――
欠片保持者」
俺は、
侵入者と向き合った。
(ここからだ)
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