第4話 幼児、勉強を始める(周りがざわつく)
魔力測定でB+(ただし属性なし)という謎の結果を叩き出してから、数日。
俺はすでに“次なるステージ”に突入していた。
◆ 今日の一歩 ◆
・身の回りの物の名前を覚えましょう
・数字に触れてみましょう
(ついに来たな……数字フェーズ……!)
前世で毎日、エクセル地獄に苦しみ倒した俺が、
この異世界で“数字に触れる”とは。なんか運命を感じるぞ。
とはいえ――
俺はまだ一歳半だ。
周囲から見れば「ちょっと歩けるようになった幼児」でしかない。
しかし成長ログシステムは容赦ない。
◆ 特別アドバイス ◆
『今日から“読む・書く・計算”の下準備を始めても問題ありません』
(いや、誰の基準!?)
こんな早熟育成ゲームみたいなメッセージを幼児に出すな。
■ まずは絵本から
母さんが棚から絵本を出してくれた。
「ユウト、これ読む?」
(よし、来た!)
ページをめくる。
絵本は、村の動物や果物の名前が書いてある簡単なやつだ。
「これは“りんご”。分かる?」
(分かる、けど言えない……!)
「……んご!」
「そう、それ! リンゴ!」
(惜しい! いや幼児的には満点か)
◆ スキルログ ◆
《識字準備 Lv0 → Lv1》
《言語理解 Lv4 → Lv5》
(爆上がりしてる!)
文字を“読む前の段階”でもスキルがあるのか。
芸が細かいシステムだな……。
■ 数字に興味を持ちすぎる幼児
次の日。
父さんが畑仕事の準備をしている横で、
俺は棒で地面に“1”という線を引いてみた。
「ユウト、それ……棒で遊んでるだけか?」
(いや違います、数字を書いています)
今度は“2”っぽい線も書く。
「……なんか、模様が多くないか?」
(数字です)
3も書こうとしたが、曲線がむずかしい。
幼児の指じゃまだ制御が甘い。
「ユウト、天才か? 天才なのか?」
(いや、そんな期待するとハゲるぞ父さん)
◆ 今日の一歩 ◆
・数字の形を“目で覚える”ことから始めましょう
※ 書けなくても問題ありません
(フォローが優しい!)
画面から人間味を感じてしまった。
ログのくせに気遣いができるやつである。
■ 村の子どもたち、ざわつく
村の子ども会(といっても三〜四人)が俺の家に遊びにきた。
「ユウトー、あそぼー!」
年上の子どもたちは、俺を“可愛い弟分”扱いしている。
しかしその日は違った。
「ねぇユウト、絵本読んでるの?」
(読んでます……読めてはないけど)
「なんか……字をじーっと見てる……」
「え、赤ちゃんってこんなに集中する?」
子どもたちがざわつく。
「ユウトってさ……なんか……転んだり泣いたりしないよね?」
(いや泣くときは泣くぞ、昨日も夜中に……)
「お母さんが言ってた。“ユウトは天才肌かもしれない”って」
(母さん余計なこと言うなぁ!!)
子どもたちの視線が、俺に集まる。
「ユウト……将来、学園行くの?」
(行くよ。行くけど、まだおむつしてるよ)
イメージと現実のギャップがすごい。
■ 夜、父さんが真剣な顔をする
「リア……俺は思うんだが……」
(また始まった)
「ユウトは……天才児なんじゃないか?」
(ほら来た!)
「いや、ほら、村でBランクなんか出ないし、数字も好きだし、なんかいろいろ……すごいし……」
母さんがクスッと笑う。
「あなた、落ち着いて。ユウトはまだ子どもよ? 才能なんてこれからよ」
「そ、そうだな……」
父さんは言いつつ、満面の自慢顔だった。
(やめろ……! その顔されると、こっちも頑張らざるを得ないだろ……!)
そんな俺の胸のうちに合わせるように、ログが光った。
◆ 特別ログ ◆
『学園入学を目指すため、早期教育モードを開きます』
▼ 新メニュー開放
【成長計画】
・言語:Lv5(成長中)
・計算:習得前
・魔力操作:Lv2
・体力:幼児平均より少し高め
▼ 次の一歩
・身近な単語を増やしましょう
・日常生活で“数える”機会を意識しましょう
(うお……いよいよ本格的に“教育”始まった感あるな)
幼児の教育と言えば、“積み木を積む”“色を覚える”レベルなのに、
俺の画面はもう RPG の成長計画みたいになっている。
(まあ、やるけどな……)
これを積み上げれば絶対強くなる。
強くなれば学園にも入れる。
学園に入れば、成り上がる舞台に立てる。
(絶対、やりきってやる)
幼児は、まだ言葉もろくに話せないが――
心の中では、すでに決意の炎を燃やしていた。
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