拝啓、浪人生。
読んでくださりありがとうございます
保育園に裕太を迎えに行くと、裕太のぱんだ組
の先生が、今日裕太がどんな事を
して過ごしたかを教えてくれるのでした。
毎日、教えてくれるのでした。
「お母さん、今日、裕太くんが、
スタンガン、カザフスタン、ガタンガタン
と言ってお友達を笑わさそうとしてて、
お友達は…きょとんっと…してたんですけど
私や他の先生が爆笑して…
そして、裕太くんが
変なくねくねダンスと言って
腰を上手にふって、左手をあげて
私や他の先生を、楽しませてくれてました。
…お家でお笑い番組かなんか観るんですか…?」
「旦那が元お笑い芸人で…昨日の夜に
酔っぱらって家で
スタンガン、カザフスタン、ガタンガタン
とか、変なダンスしてて…
裕太に悪影響ですかね…?
悩んでて。」
「お父さんの事が大好きなんですね!
悪影響な訳、無いハズですよ。
おもしろかったですし。」
「ありがとうございます。
裕太は他の子と仲良くやれてますか?」
「はい!今日もけんじろう君とあきと君と
お外で鬼ごっこしてましたよ。」
「良かったです。」
「お疲れ様でしたー。じゃあね裕太君。
サンハイ、先生、さようなら、みなさん
さようなら。お母さんお疲れ様でしたー。」
「お疲れ様でしたー。」
裕太と車に乗ると
「スタンガン、カザフスタン、ガタンガタン」
と言って1人で爆笑してるのです。
正直、疲れます。スーパーの在庫管理と品出し
のパートをして、バタバタ保育園に迎えに行って
この後も裕太の体操着や給食着、下着類を
洗濯機に入れる物と入れない物を分けて。
裕太のバッグに補充するビニールを三角におって
名前を書いて。水筒を洗い、一呼吸。
「スタンガン、カザフスタン、ガタンガタン」
ゲラゲラ旦那と同じ笑い方の裕太。
一呼吸出来ない。
テレビを付け、無駄にボリュームを上げ、
テレビに向かって悪口を吐き捨て
少し回復。
スマホでスクロールの嵐。
少し回復。
やる気が出てきたので夕食作り。
旦那と私と裕太が好きな唐揚げ。
この際、大量に作ろう。そう思い、冷凍庫に
ストックしている鶏肉パック2つ入りを、3パック
解凍して、スマホで音楽を流しながら
揚げる。揚げて揚げて揚げまくる。
「ポッポッポーハトポッポッポーマーメがほしくてもーあげませんーそーりゃあげませんー。」
「それ初めて聞いた!裕太?!自分で考えたの
今のその、うた?」
「うん。じぶんでかんがえたよ。おもしろい?」
「おもしろいというか…凄いよ。」
「でも、ママ、わらってないじゃん。」
「そうだけど、上手だったからびっくりしたの。」
「びっくりさせてごめんなさい。」
「いいんだよ。明日、先生に歌ってみたら?」
「せんせい、わらってくれる?」
「たぶん。」
「きょう、からあげ?」
「うん、そうだよ。唐揚げとご飯。」
裕太はテーブルの回りをぐるぐると走りながら
「ママの、からあげっ、あらっどこい
ママの、からあげっ、あらっどこい
ママのからあげっ、あらっどこい」
そう連呼するのでした。
しばらくするとピンポーンとインターホンが鳴り
誰だろうと思いながらカメラを観ると、
誰も映っていないのです…。
「どちら様ですか…。」
「地球外から帰ってきました。今日は唐揚げだな。」
旦那でした。
「はいはいー。今開けた。」
「お邪魔しまスロベキア。」
「はいはいー。」
旦那の祐介です。
30才まで売れない芸人をして、30歳から
大手カラオケ会社に入社して1年で統括部長になり
37歳の今も統括部長です。
私的には、社長は無理でもまだまだ出世して欲しい
のです。
旦那とは、
私が遅れて大学を卒業し、
内定を貰ってた造船会社が就職氷河期で
内定取り消しになり、
オープニングスタッフのカラオケ、
歌ックス
のバイト先で出会いました。
その時の彼は統括部長でした。
そして私と彼は付き合うことになり
すぐに妊娠しそのまま結婚になったのです。
私が遅れて大学を卒業したのは
私が浪人生だったからです。
その時は悲惨でした。
行きたかった国立の大学に落ち、
時間だけある浪人生でした。
それ以外、時間以外は何も
有りませんでした。
予備校は行ったり行かなかったり、
親には予備校に行ったふりをして、
ネカフェで漫画ばかり。
もしくは実家の2階の私の部屋で
寝ているばかり。
親から怒られるばかり。
予備校に行っても時間は過ぎなく。
永遠の様な時間でした。
自分の未来に絶望していて。
ネカフェに行って家に帰り、
罪悪感と、
絶望、
という
重力、
が
私の身体にのしかかっていました。
死にたい。
とも思っていました。
小学生、中学生、高校生、
勉強も、スポーツも、恋愛も、
全てがトントン拍子すぎました。
特に勉強は出来るほうでした。
当時の私は
いい大学に行けると思っていました。
偏差値が高く、社会的地位がある大学に
行けるもんだと、
思ってました。
素敵で優雅なキャンパスライフを送るもんだと
思ってました。
けれど、落ちました。
特段、やりたい事も無く。
とりあえず
いい大学に行こうとばかりに。
だから
なので
大学に落ちた時は
不安、
絶望、
が有りました。
毎日、毎日、
当たり前に予備校なんか行けませんでした。
何のエネルギーも無く。
生きていても仕方がない。
そう思っていました。
かといって自害する行動力も無く。
漫画、漫画、漫画
寝る、寝る、寝る
予備校、予備校、予備校。
当然ながら親から怒られ。
全てが嫌になり。
漫画、漫画、漫画
罪悪感、罪悪感、罪悪感
寝る、寝る、寝る。
負のループに落ちてました。
時間だけは沢山有りました。
予備校に行っても家に帰れば、
時間が余り、
心労が溜まり。
謎の自殺願望。
何のバイトもせず、
実家の家事手伝いもせず。
ただ、ただ、
時間だけが
ヌメーと
有るだけでした。
大学も国立に行ければ良いけど、
良い就職先につけるのか。
私立に行くと、あとあとの奨学金を返すのが
苦痛になるはずだ。
そもそも大学に行く意味は有るのか。
かといって高卒で就職したら
給料が低い。
生涯年収を考えるとやっぱり国立の大学がいい。
だけど勉強するのも嫌だ。
時間が有るのだからネカフェに行こう。
親はある程度、お金が有るのだから
このままでいいや。
そう思いネカフェで漫画を読むと
家に帰ってからが
辛い。
何の為に生きるのか分からない。
そういう浪人時代でした。
今の私は時間が無い。
「はなえの唐揚げは世界一だな。」
そう言って旦那がパクパク食べるのでした。
「ママのからあげおいしい。」
「サラダ無くてゴメンね。」
「野菜なんか、入らないさー。肉と米。」
「ぼく、からあげだいすき。ママもパパも
だいすき。」
「裕太ー、可愛いいなー。パパも、大好きだよ。
はなえのご飯食べると明日もまた頑張ろうって思うんだ。いつも美味しい晩御飯ありがとう。」
「こちらこそ。」
旦那は食べ終わると、きまって
庭でタバコを吸うのでした。
その間に私はお風呂のお湯をはりながら
1人でお風呂に入るのでした。
少し値段が高めの入浴剤を入れて
ゆっくり湯船に浸かり1日の疲れをとるのです。
お風呂からあがるとすぐに、
旦那と裕太がお風呂に入り、
私は換気扇の下で電子タバコを吸うのです。
料理で使った皿は綺麗に、旦那が洗ってるのです。
風呂場からは、よく分からない歌が
聞こえてくるのです。
なんの歌かは分かりませんが
たぶんオリジナル曲でしょう。
旦那と息子の事なので。
私はその間にソファーにゆっくり腰掛け
テレビを観ながらスマホスクロール。
旦那と息子は風呂から上がると
畳の部屋でよく分からない相撲の様な
プロレスの様な何かをしながら
叫びあってる。
裕太が寝る時間になると私もたたみの部屋にいき
おふざけに少し付き合い
3人で裕太の部屋に行き、
旦那と私とで絵本を読み聞かせ裕太を寝かしつける。
その後は私の時間だ。
ドラマが有る。
後ろで旦那が晩酌をして
ドラマが、終わるといつもなんやかんや
旦那が話してくる。
「そうさー100パーセントはーなえー。もうアイラブユーのはーなえー。」
この歌を、歌う時の旦那はだいたいアレがしたい。
「俺、先に寝室行くね。」
「はーい。」
私は換気扇の下で電子タバコを吸って。
スマホを、いじって。歯を磨き寝室に行った。
「はーい。今日は何の日か分かるかな~。」
と言って全裸の旦那のアソコにリボンがついてる。
もう、大きくなってる。
「今日は危険日という日ですよね〜。」
何故か旦那は私の周期を把握してる。
私はYes、No枕が欲しいのですが
旦那は長いのです。旦那とそれをすると睡眠時間
が削られるのですが、一応付き合います。
私も女なので。求められるのは嬉しいのです。
長いですが。
「まだ2人目は欲しくないからゴムつけてね。」
「ゴム1枚で足りるかなー今日は3枚だなー。」
長いです…。
次の日、
けたたましい目覚まし時計で起きるのですが、
まだ眠い。
昨日のアレが、長くて。
疲れがとれないのです。
ですが、アレをした翌日は旦那が必ず
朝ご飯を作ってて、
毎回、トップオブザワールドの曲が
流れているのです。
「今週、週末、私の実家に行こう」私がそういうと
「分かったー。何持っていけばいいかなー。」
「何も持ってかなくていいよ。」
「いやー、たえちゃん喜ばせたいし。」
たえちゃんとは私の母です。
「テキトーに道の駅で買ったら?」
「テキトーじゃ可哀想だよー新ギャグ用意しとこー」
「いや、困るでしょ。」
「冗談だよ。」
「冗談か、本気か分からないんだよ。」
「じゃあ、パンプキンスープ作ろう。」
「それは本当のやつ?」
「どっちだと思う〜?」
その週の週末、朝から旦那が本当に
パンプキンスープを作っていました。
「何時から作ってるの?」
「6時から作ってるよーん。」
「マジ?」
「マジ。だって、たえちゃんの喜ぶ顔みたいんだ〜。」
「ありがと」
そういうやり取りをして裕太と旦那と私と実家に
行ったのでした。
「たえちゃん、お父さん、
おっはよーございまーす。」
「おはよう。裕太君また大きくなったね。」
母が、言いました。
「おはよう裕太、待ってたぞ、
今日キャッチボールするか?それともフワフワランド行くか?あっおもちゃ買いに行こうか」
父が言いました。
「おもちゃかってーブルブルわん」
「スタンガン、カザフスタン、ガタンガタン」
「スタンガンって、な~に?」
母が言いました。
「あっ、、たえちゃん、パンプキンスープ作って
来ました。食べましょう。」
裕太と父は、
おもちゃ屋に出かけ、
残った私と旦那と母とで喋っていたのでしたが
「もうそろそろ2人目も、いいんじゃない?」
母が言うのでした。
「はい!欲しいんですけど、はなえが…」
「今は裕太で、手一杯。」
「弟か妹がいたほうが楽よ。
私たちは、はなえ産んだあとに、すぐ2人目欲しいと思って。子作りしたけど、出来なかったのよ。
だから私大変だったのよ、弟か、妹いた方が楽よ。
子作り嫌いな訳じゃないでしょよ。」
「お母さん、気持ち悪い。」
「何が?」
「その子作りという言葉。」
「いいじゃん別に。ですよね〜たえちゃん。」
「そうよね~」
「僕、子作り大好きです!」
「あらやだ。恥ずかしわ。」
気持ち悪くなった私は家の中をうろつき自分が
使ってた部屋に入ってみたのでした。
私が使ってたものはそのままにしてあって
私の胸の中がジーンと愛というかモゾモゾっと
柔らかいものがジーンとしだし。
ふと自分が使っていた学習机の引き出しを
開けてみました。
そこにはいくつかのノートの切れ端があって。
そこには
死にたいだとか
消えてしまいたいだとか
生きる意味あるのとか
書いてありました。
私は、照れるというか懐かしいというか
恥ずかしいというか可愛いらしく思えたのです。
他の引き出しを開けたのですが
真っ白な紙に
未来の私、生きてますか?
幸せですか?
そう書いてあったのです。
私はその時の、自分を思い出し、
その時の自分の頭を、ナデナデしてあげたくなり
その紙に
机の上にあったペンたての中から
シャープペンシルを選び
ちゃんと生きてますよ。
幸せですよ。
そう書いたのでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
にゃーw




