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戦車の誕生(1)

 ハウスが「第2章 第一次世界大戦」に書き並べたように、いわゆる西部戦線でどちらも大きく前進できなくなり、塹壕戦に移行すると、これを打開しようと様々な兵器と戦術が一度に少しずつ導入され、試されました。戦車もそのひとつです。


 皆さんが公道で乗る機会のある自動車は、どれも細長いアクセルペダルと、ちょっと横長のブレーキペダルを持っています。あれはもともと、イギリス政府が有事の徴用を条件に自動車取得に補助金を出したとき、補助金を受ける条件として運転方法を統一した名残だそうです。すでに第1次大戦のころ、自動車は後方の兵員輸送などに使われていました。


 それに機関銃を乗せて、当時の非力なエンジンに耐えられる程度の装甲板を張れば、装甲車の出来上がりです。ただし既に述べたように、榴弾が戦場を穴だらけにしましたから、当時の装甲車は西部戦線では道路状況の良い区域から戦場に踏み出すことができず、ドイツが崩壊寸前になった大戦末期にいくらか追撃戦に加われた程度でした。もちろん兵士と陣地が西部戦線ほどみっしり配置されていない他の戦線では、部隊の移動はもっと自由であり、何よりも騎兵がまだ偵察と襲撃に活躍していたのですが、西部戦線に話を戻しましょう。


 侵略者の銃騎兵を蹴散らす架空の国の陸上戦艦は、H.G.ウェルズが1903年から雑誌に載せた小説The Land of Ironcradsに出てきます。もちろんこれは、陸上戦艦という漠然としたアイデアを出した人々の長いリストの中で、当時の最新例であって、直ちに軍組織の反応を引き起こしたわけではありません。


 アメリカのホルト社(後のキャタピラー社)は1908年からキャタピラ[後の名称]を持った牽引車を売り出し、類似特許を買い取るなどしてイギリスにも進出を図っていました。塹壕戦を目の前にしたイギリス政府の要人はひそひそと話し合い、海軍大臣のチャーチルが手を上げて、Landship Committeeを創設して「開けた地形を押し渡って鉄条網を踏み破る、機関銃と装甲を備えたキャタピラ車両(チャーチルのアスキス首相への書簡、要約)」の開発に乗り出しました。


 スウィントン工兵少佐(急速に昇進し、1919年には少将)は、第2次ボーア戦争(1899-1902)で鉄道建設に活躍して高位の勲章を受け、そこでの小集団戦術を明快に解説した著書で広く知られ、第1次大戦では陸軍大臣から「戦時特派員」として公式報道を担い、要人に知り合いが多くいました。陸軍側からLandship Committeeとの合同会議にもぐりこんだスウィントンは後に、戦車というものを思いついたのも、要人たちを焚きつけたのも自分だと主張しましたが、この種のことはひとつひとつ証拠を確かめることが困難で、勝利にはいつも多くの父親がいるものです。はっきりしているのは、1915年6月1日にスウィントンの出したメモランダムが、まだ存在しない戦車のイメージを明確にしたことです。


 スウィントンの描いた戦車のイメージはこうでした。ガソリンエンジン、キャタピラ走行、時速4マイルのarmored machine gun destroyer。武装は2ポンド[40mm]砲と重機関銃。奇襲効果のため直前まで秘匿すべし(50両同時投入、攻撃幅3マイル)。鉄条網は攻撃前夜の砲撃で破砕する。各戦車はあらかじめ位置の知られた機関銃座を狙ってつぶす。戦車による歩兵壊滅は期待できず、戦車が歩兵砲火を引き付ける間に、ドイツ歩兵へは後から突撃するイギリス歩兵が対処する。ドイツ砲兵を沈黙させるべく[カウンターバッテリーに]イギリス砲兵が働く。


 お気づきでしょうか。チャーチルのイメージは「鉄条網破砕車」なのに、スウィントンは「機関銃座制圧車」だとしています。チャーチルは後にも、戦車の正面にワイヤーカッターを取り付けることはできないかと提案したことがあって、このイメージをしばらく持ったままなのですが、「すごい新兵器」はいろいろなことを期待されるのです。


 もうひとつ指摘しておきたいのは、ふたりの構想のどちらにも、当然ながら、「戦車による対戦車戦闘」への言及がないことです。ドイツ軍はイギリス戦車を見て戦車の開発を決意し、まず国内にあったホルト社トラクターを分解調査することから始めました。同じような基礎技術は戦線の向こう側にもあるのです。


スピットファイア量産契約時の航空大臣であったカンリフ=リスターは、のちに初代スウィントン伯爵に叙されましたが、スウィントン少将の縁戚ではないようです。

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