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読み切り[児童文学 or 童話風]

夢の中みたいな冬の夜に

作者: 立菓
掲載日:2023/12/14

 オレは、正月の三が日が好きじゃない。


 それは、自分の実家が神社だから。

 家業の手伝いやらで、毎年、初詣はつもうでの人混みに放り出されるのは、ちょっと抵抗ていこうがある。……さわがしいとこは、正直得意じゃないしね。



 実家はと言うと、『清能せいのう稲荷神社』っていう、古くからある由緒ゆいしょ正しき神社。

 オレらの家族は、岐阜県ぎふけんの西側にある清能町せいのうちょうに住んでいる。



 オレの父親は神社の神主。そんで、大学生の兄貴が神社をぐ予定。


 オレの名前は清王俊せいおう しゅんで、今年で小五。

 兄貴の進路が決まっているので、どうやらオレは、家業をぐプレッシャーが全く無いらしい。



 ああ、高二の姉貴は将来パティシエをなるために、専門学校を目指している、と言ってたかな……?

 とはいえ、巫女みこ格好かっこうは気に入っているようで、オレとは違い、家業の手伝いは楽しそうにやっているみたい。



 話は戻るけど、別に『清能せいのう稲荷神社』自体は嫌いじゃないんだ。緑が多くて、広々とした場所って、気分がいいしね。


 人混み……とゆーか、多くの人としゃべんないといけない状況が、オレはすんげー苦手で。

 オトンやオカンみたいに、多くの氏子うじこさんたちに挨拶あいさつとか雑談とかするのってムズいし、気乗りしないんだ。



 まっ、そんな感じで今年の大晦日おおみそかも、お守りやら絵馬やら破魔矢はまややらを運んだり、カウンターに並べるために種別したりして、オレなりに頑張がんばって手伝ったんだ。




 そして夜になって、神社の敷地内で、おき上げの準備が終わった後――

 一匹の白い動物が、遠くからオレをじっと見つめているのに気が付いた。


 その後、その動物は神社の小道、山につながる遊歩道に入っていった。



 オレは気になって、その動物のあとを自然と追いかけていったんだ。

 大きな白い野犬か? それとも別の動物かなぁ?? そんなことを考えながら、オレは白い動物についていった。


 遊歩道を抜けると、歩きにくい細い獣道けものみちに入っていく。その獣道けものみちは、山の遊歩道よりはずっと長いようだ。




 ……と、白い動物は、山の中ではあるけど、広く開けた場所に向かった。

 少しだけ疲れていたけど、オレも一踏ひとふん張りして、白い動物を再び探した。


 その広く開けた場所に着くと、すぐに白い動物は見つかった。その動物は、高いとこにある木造の建物の手前、めっちゃ長い階段の下に居るようだ。

 てっ、……んっ?? この建物、どこかで見たことあるような?



 それから、建物の周りの様子も不思議だった。昨日は全国的に大雪だったのに、ココは全く雪が積もっていない。


 あと、篝火かがりびは建物の側、土の上に数カ所しか置かれていないのに、あまり暗くないみたいだ。星もたくさん見えて、満月も出ているからか、空からの明かりが強いように感じたし……。


 それに、ダウンコートも着なくていいくらい、秋の昼間のように心地よく涼しかった。



 ふと再び建物を見てみると、白い動物が階段を上っているのに、オレは気が付いた。

 オレは建物のそばに行き、階段に近づいていった。階段の真ん前で足を止めると、高いところにある建物の方に目をやった。



 白い動物が建物に入ると、すぐにその動物と一緒に、一人の女の人が外に出てきた。ゆっくり、ゆっくりと階段から降りてくるようだ。


 その女の人は小柄で、変わった格好かっこうはしていた。それと、頭の上の方に一つかみをまとめて、一部のかみらしていて、白いワンピースのような服を来ていた。

 女の人の年齢ねんれいは、二十代……なかばかな?


其方そなたが『清能せいのう稲荷神社』の神主の息子、次男の……しゅんか?」


 その女の人は階段の下まで降りてくると、オレの顔をやさしく見つめた。


「あっ、はい。そうです……??」


「我はウカノミタマじゃ。……ああ、此処ここは京都にある伏見稲荷大社ふしみいなりたいしゃの近く、神々がむ異界じゃよ。

 其方そなたと会って、少し話してみたいと思うてな。それで、其処そこにおる白狐しろぎつねの若葉に、そなたを此処ここまで案内させたのじゃ。若葉は、其方そなたたちの神社を担当しておる」


「では、ご子息しそく様。どうぞ中へお入りください」


 ええぇぇぇ!? うちの神社におまつりされている、超々有名な五穀豊穣ごこくほうじょうと金運・商売繁盛しょうばいはんじょうの『神様』と、オレ話してたっ??


 それに今になって、初めて白い動物が狐で、しかも神様の『位の高〜いお使い』だって気付いたしっ!!

 あと、そこの木造の建物も、歴史の教科書にってたこともね!



 何かの魔法で一瞬いっしゅん、オレの眼鏡めがねがVRゴーグルになったかと、勘違かんちがいしたよっ!!


 てかっ、どう考えても、自分が()()()()()()としか思えない……。




 オレは建物の中に入ると、ウカノミタマ様から温かい緑茶をご馳走ちそうになった。


 白狐しろぎつねの若葉ちゃんは背筋を伸ばして、ウカノミタマ様の真横に座っていた。

 若葉ちゃんもウカノミタマ様と同じように、上品さがあるようだ。


しゅんは、確か……キカイと言ったか。高等なソウチ……に関する職に、興味があったかえ?」


「あ、はい。……プログラマーやらシステムエンジニアやら、ですね」


「そうか……。そういう一人で黙々とこなせるような職を目指しているとはいえ、社会に出てから、同じ目標を持つ仲間とうまくやってくには、意思疎通いしそつうおこたってはいかんぞ、しゅんや。

 ……とは言っても、その幼き年で、ほとんど愚痴ぐちも言わず、家業の手伝いを毎度している姿には、実は感心しておる。大人になって働き始めたら、いずれは役に立つ故、今後も家業の手伝いを続けると良いぞ」



 俺が家に帰る時、ウカノミタマ様と若葉ちゃんが山道まで送ってくれた。


此処ここは、人間界とは時間の流れが違う故、神社に戻った時は、数分しか時間が経っていないだろう。大切な息子の帰りが遅いと、其方そなたの家族も決して心配することは無いから、安心すれば良い」


 そして、「目の前の光の中に入れば、すぐに神社に戻れるぞ」と、ウカノミタマ様はオレに言った。


 山道の入口に見えた薄い黄色の光の中に入ると、ウカノミタマ様が言っていた通り、あっという間に『清能せいのう稲荷神社』の御本殿ごほんでんの前に着いた。




 オレは家に戻ると、急いで夕飯と風呂を済ませ、明日からの家業の手伝いのために、早めに寝ることにした。

 そうして布団の中に入ると、オレはウカノミタマ様からのアドバイスをふっと思い出した。


意思疎通いしそつうを言い換えたら……、そっか!! 氏子うじこさんたちとのコミュニケーションが、()()()()()()かも、か……)


 オレはまだまだガキだからか、ピンと来てはいないとこもあるのかな?

 だけどっ、少しでも苦手なことを克服こくふくしようとするのはイイコトだと思うから、コミュニケーションの練習ができる家業の手伝いは、できる限り続けていこうと思う。


 オレらがまもっている神社に、これからもたくさんの参拝者に来て欲しいしね!



〈おしまい〉

 最後まで読んで頂き、ありがとうございましたm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] もうすぐお正月ですね〜。 神社、大忙し!
2023/12/27 08:35 退会済み
管理
[良い点] うわぁ、自分の家が神社というのは憧れなので、この作品にひきこまれました。 お祀りしている神様と話せるなんて、夢があります。 しかもアドバイスをいただけるなんて、なんて素敵な! 絶対にアドバ…
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