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異世界のしおり  作者: 叡智V
3/3

子どもって体力無限にあるよね:8月6日

その1です。

 



 正直言うと、私は前世であまりアクティブな人間じゃなかった。

 小さい頃は友達と外で走って遊んだり、ツツジの蜜を吸ったり、トノサマバッタの足に紐を付けて遊んだけど……小学四年くらいにはそういった事は卒業して、絵を描いたりゲームしたりが中心に。


 そもそもあまり友達が多くなかった。

 クラスメイトとは話すけど、一緒に遊ぶことは少なかった。友達関係は、狭く深くって感じだった。

 高校でもカラオケとか誘われたりしたけど、大人数で密室ってのが辛くて断ったり。今思えば、ちょっと感じ悪かったかもしれないな〜なんて。


 何が言いたいかというと、私はお家が好きなんですよと。

 暑い日に太陽光に焼かれながら遊ぶなんて受け付けませんよと。



「じゃあ次はテラーがまものやくな! おれはぼうけんしゃ!」

「ずるい! ぼくもぼうけんしゃがいい!」

「じゃあオレはドラゴン! さいきょうの!」

「ボクはゆうしゃ!」


 あーでもないこーでもない、と騒ぐ男子を私はぼーっと見つめる。

 この子達は、私の近所の子供たち。みんなの歳は私と大差ない。精神年齢は違うけど。


 簡単に説明すると、ここは同年代の子との関わり合い方を学ぶ、前世で言う幼稚園みたいなところ。

 ある程度の社会性を身につけるために私も通わされている。

 今は自由時間で、広い校庭でみんなと遊んでいる最中。



 ぼうけんしゃごっこで。


 いや、別にいいよ?

 私も空気読めない訳じゃないし、歳相応の遊びに付き合うのは全然苦じゃないよ?


 でもさぁ、こんな暑っつい日に外で遊ばなくてもいいじゃん。

 元気過ぎない?太陽に殴られてるようなもんだよ?


 建物の中で遊ぶ選択もできるっちゃできる。

 でも、周りがそうさせてくれないのよ。


「フィーネちゃん、あついねー」


 木陰で一緒に休んでいたセリナちゃんが、チラチラとこちらを見ながらアピール。


「そうだねー」

「あついよねー」

「ねー」

「……」

「……ちょっとだけだからね?」


 そう言うと、ぱぁっと顔を綻ばせるセリナちゃん。


 私は苦笑いしながら、差し出された手にポトリと小石サイズの氷を落とした。


 どこから氷を持ってきたのかって?


 魔法です。

 氷魔法は、水魔法の温度設定を下げると使えます。

 魔法を使うには色々と手順があるけど、まあこれくらいならノータイムでできる。


「ふあーつめたい!」


 私のあげた氷をほっぺたに付けてはしゃぐセリナちゃん。可愛い。

 私も暑いので、氷を作っておでこに当てた。

 魔法マジで便利。


「あー! ズルい!」

「フィーネ! おれにもこおりくれ!」


 あ、見つかった。

 自分で言うのもアレだけど、私くらいの歳で魔法を使う子はほとんどいない。

 だから、みんな私の魔法目当てで群がって来る。でも悪い気はしない。


「ぼうけんしゃごっこおわったの?」

「これからだ! おれがぼうけんしゃで、フィーネはまほうつかい!」

「ボクはゆうしゃだぞ!」


 この世界には秘境や遺跡がいっぱいあって、冒険者はそういった所を探索する人々のことだ。

 勇者は、魔族というやばい種族の頂点に立っていた、魔王とかいう死ぬほどやばい奴を昔倒した人の事だ。

 どっちも子供たちの憧れの的。感覚的に前世で例えるなら、冒険者はY〇uTuber、勇者は……なんだろ……織田信長になりたい、的な?


 違うか。


 それにしても、異世界系の作品ってよく冒険者が出てくるし、実際にあるんだ!とはなったけど、思ったより普及してないというか。世間からの目はホントにY〇uTuberがドンピシャな気がする。

 まあ、危険な所を冒険したり、凶暴な魔物(動物が魔力暴走ってのを起こすとなるらしい)を倒して一攫千金とか、夢はあるけど真っ当に生きる人からすれば「何してんの?」って感じだろうし、仕方ないんじゃないかな。この国の治安を守っているのは騎士団だし。


 でも、冒険者って華があるんだよね。子供たちが憧れるのも分かる。


「フィーネ、こおり!」

「はいはい、せんせいにバレないようにね」

「ありがとう!」


 集まってきた子らにも氷をあげた。

 実は、魔法の使用は先生に禁止されている。

 そりゃ魔法には火魔法とか雷魔法とか危ないのもある訳で、大人がそんな魔法も使える四歳児を自由にさせるわけがない。責任能力のせの字もないような歳の子供が、他の子を怪我させるリスクなんて無いのが一番だからね。


 だから、勝手に魔法を使うと怒られる。これくらいなら黙認してくれる事もあるけど、火魔法なんて使った日はものすごい説教をくらう。


……あれは怖かった。使った私が馬鹿だったんだけどね。


 氷で少し涼んで、冒険者ごっこや校庭の遊具で遊んだ後は、待ちに待った昼ごはんの時間だ。


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