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社交界でマウントの取り合いになってしまった夫人、つい見栄を張って自分の夫を「高身長で騎士団のエース」「王国一の豪腕」「槍の達人」と大嘘をついてしまうが、夫は王国一の大賢者だったりする

 ペトラ王国のとある公爵家邸宅にて、貴婦人のみの夜会が開かれた。

 こういった催しに参加するのも貴族の嗜みであり、仕事ともいえる。


 伯爵家出身のフレイヤ・マインツもまた、自慢の赤髪をなびかせ、その赤を際立たせる白いドレスに身を包み夜会に臨んだ。

 彼女の振舞いは明らかに他の貴婦人を一歩も二歩もリードしており、このままいけば今夜の主役は彼女になるものと思われた。

 ところが、フレイヤは思わぬ再会を果たすこととなる。


 正面から歩いてきたのは、カミラ・ハーゲン。彼女と同じく伯爵家の出身。

 結わいた金髪と切れ長の瞳を持つ彼女もまた、フレイヤに匹敵する存在感を醸し出している。

 このカミラは、フレイヤにとって最大のライバルともいえる存在なのである。


 カミラとの因縁は貴族学校時代から続いており、勉強も、スポーツも、人気も、常にトップにして互角。かといってお互いに切磋琢磨するような仲ではなかった。

 水と油、犬猿の仲、不俱戴天。これらの言葉がぴったりといえる二人だった。

 お互いに「他の誰に負けてもいいから、こいつにだけは死んでも負けたくない」と本気で願うほどだった。


 そんな二人が久しぶりに顔を合わせてしまった。

 当然睨み合い、火花を散らす。


「お久しぶりね、カミラ」


「ええ、フレイヤ」


「まさか、あなたがいるなんて思わなかったわ。おかげで気分は最悪だわ」


「こっちこそ。あなたがいると知っていれば、参加を見送ったのに」


 牽制すらなく、いきなり抜き身で斬り合うようなやり取りだった。


「相変わらず髪が赤いのねぇ、フレイヤ。頭の上が火事になってるのかと思ったわ」


「あなたこそ金髪が自慢のようだけど、せっかくの金色があなたの貧相さを引き立ててるわね」


 互いに顔を引きつらせ、怒鳴りつけたい衝動を抑えながら、攻撃ならぬ口撃を繰り広げる。

 話題は移り変わっていき――


「そういえばカミラ、あなた結婚したそうね」


「そっちこそ。今では夫人だって聞いたわ」


 互いの夫に焦点が当たる。こうなると、もはやこの後どうなるかは火を見るよりも明らかだ。


「カミラ、あなたの夫はどんな方なの? きっとさぞ凄い人なんでしょうねえ」


 フレイヤが先手を取った。

 カミラは考える。この返しの一手を誤れば、フレイヤとのマウント合戦は敗北に終わる。かといって答えに窮するわけにはいかない。

 その時、他の婦人らからこんな会話が飛んできた。


「今はどんどん魔法研究が盛んになってるわね。これからは魔法を極めた人が勝ち組になるでしょうね」


 これを耳にしたカミラ、すかさずこう答える。


「私の夫は……賢者よ。選ばれた魔法使いしかなれないと言われる称号を持っているの」


「賢者……!」


「絶大な魔力を誇り、その気になれば隕石を落とすことすら可能よ。どう? あなたの夫にこんなことができて?」


 フレイヤもまたどう返すか悩む。すると、こんな声が聞こえてきた。


「王立騎士団がまた大活躍したらしいわね。我が国の誇りよね、彼らは」


 これだ、とフレイヤは思った。


「私の夫は……騎士団のエースよ!」


「なんですって……?」


 カミラは驚いている。これはいい攻撃が入ったと思い、フレイヤはさらに情報を盛りつける。


「夫は190センチの長身を誇り、王国一の豪腕ともいわれているの。槍を振るわせれば右に出る者はいない達人なんだから」


 夫対決は互角。だが、このままでは終われない二人は、どちらともなくこんな提案をしてしまう。


「だったらフレイヤ、今度の日曜日、お互いの夫を連れてきて見せ合いでもしましょうよ」


「いいわよ、望むところよ!」


 フレイヤは受けて立った。

 だが、その内心は青ざめていた。

 なぜなら、彼女が言った「夫は騎士団のエース」「王国一の豪腕」「槍の達人」といった自慢話は全て真っ赤な大嘘だったのだから。


「ど、どうしよう……」



***



 邸宅に戻ったフレイヤは、すぐにリビングに向かった。すでに夫ノエルも帰宅している。


「お帰りフレイヤ。夜会は楽しんできたかい?」


 こう微笑むノエルに対し、フレイヤは開口一番こう言った。


「お願い! 騎士になって!」


「へ!?」


 ノエルは困惑する。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんだよ、いきなり……話が見えないんだけど」


「見えなくていいの……お願い、騎士になってえええええええ!!!」


 今にも泣き出しそうなフレイヤ。ノエルは妻を落ち着かせるべく、ゆっくりと語り始める。


「フレイヤ、冷静になってくれ。僕は騎士じゃなく……大賢者だ」


 夫ノエルはまだ若いが、大賢者という地位にあった。

 魔法使いの中でも優れた者にしか与えられない“賢者”の称号。“大賢者”はその賢者の中で特に秀でた者にのみ名乗ることを許される称号である。

 つまり、ノエルは肩書き上“王国一の魔法使い”であり、多くの魔法使いを統べる立場にあった。

 明るめの金髪で眉目秀麗の彼は、男女問わず大勢の人間に憧れられている。


「嘘ついちゃったの」


「……え」


「あなたが騎士だって嘘ついちゃったのおおおおおおお!!!」


 フレイヤは夜会であったことを全て話した。

 宿敵カミラと再会し、マウントの取り合いになり、「夫は騎士」と大嘘をついてしまった。


「マウントの取り合いって、ようするに自慢合戦ってことだよね? だったら僕は大賢者って言えばそれでよかったんじゃ……」


「だって……向こうが先に『夫は賢者』って言ってきたのよ? それに対して『私の夫は大賢者』って言ったら、なんか嘘っぽいじゃない!」


「そ、そうかなぁ」


「それに、なんていうかカミラとは別のベクトルで攻めないと、このマウント合戦は勝てないって思っちゃったの! その時、騎士団の話をする人が近くにいたものだから、つい騎士だって……」


 夫が大賢者というのは紛れもなく強力な手札だったが、色々な要素が加わって、フレイヤは「夫は騎士」という実像のない手札を切ってしまった。

 嘘をついてしまった以上、フレイヤとしてはノエルに騎士になってもらうしかなくなった。


「お願い! あいつとのマウントの取り合いに勝つには、あなたに騎士になってもらうしかないの! 今度の日曜日までに! あいつに負けたら、私もう表を歩けない!」


 矢継ぎ早に懇願するフレイヤ。

 しかし、これには温和なノエルも不服を唱える。


「うーん……嘘はよくないと思うけど。それに僕は大賢者だよ? 君だって僕が大賢者だから惚れた部分はあるはずだ。それだったらそのことを堂々と自慢すればいいじゃないか」


 すると、フレイヤは突如真顔になった。


「は? なに言ってるの?」


「え」


「私はノエル・マインツという“男”に惚れ込んだから、あなたと結婚したのよ。あなたが大賢者だから、なんて一切考えたことなかったわ」


 この言葉にノエルは赤面してしまう。


「なに赤くなってるのよ! 昨日今日知り合ったカップルってわけでもあるまいし!」


「ごめんっ!」


 フレイヤはさらにノエルに泣きつく。


「無理を言ってるのは承知よ……だけどお願い! 騎士になって! いえ、なって下さい!」


 愛する妻にここまで言われてしまうと、ノエルとしても返事は一つしかない。


「分かったよ……騎士になるよ」


「……ありがとう!」


 涙ぐみつつ笑顔を見せる妻を見て、ノエルも「君には敵わないな」と苦笑する。

 そして夜会でどんな嘘をついたのか改めて確認する。


「えーとね、まず身長は190センチ」


「190センチ!?」


 目を見開くノエル。


「僕、165センチしかないんだけど……」


「そうなのよね。私よりちょっと大きいぐらい。だから……魔法で25センチほどなんとかならない?」


「背を伸ばす魔法はないなぁ……」


「だとしたら、10センチぐらいのシークレットブーツを履くしかないわね」


「シークレットかな、それ」眉をひそめるノエル。「それに、それでもあと15センチ足りないよ」


「うーん……帽子でなんとかしましょう」


「なんとかなるかなぁ」


「あとは遠近法でごまかしましょう」


「遠近法でどうやって……?」


 ノエルの指摘は無視され、フレイヤは他についた嘘も白状する。


「それと……王国一の豪腕だって言っちゃった」


「豪腕……!」


 ノエルはローブの袖をめくり、自分の細腕を見せる。天変地異クラスの魔法をも自在に操れるノエルだが、筋力は平凡だ。腕を曲げても、力こぶは殆どできない。


「これが……豪腕?」


「うーん、お世辞にも太いとはいえないわね」


「だろう? どうするの?」


「だったら、『腕は細いけどパワーはすごい』みたいな設定でいきましょう!」


「無理があるような……。だけどそうするしかないか」


 残るは「槍の達人」設定をどうするか。


「僕……槍を握ったことすらないんだけど」


「槍の達人になれる魔法ってないの? 『唱えたらあなたもランスマスター!』みたいな」


「そんな便利な魔法はないなぁ」


「だったら、日曜日までに多少槍を扱えるようになってちょうだい! あとは私が上手くごまかすから……」


 両手を合わせて拝むフレイヤに、ノエルもやむなくうなずく。

 愛する妻に恥をかかせないために、無理だと分かっていても、騎士にならなければならない。

 ノエルは親友の顔を思い浮かべた。


「ドレクスに頼むしかないか……」



***



 次の日、ノエルは騎士団駐屯地を訪れていた。

 ある男に会うために。


 まもなくその男はやってきた。


「おお、ノエル!」


「ドレクス、お久しぶり!」


 やってきたのはドレクスという甲冑をまとった騎士。

 短い黒髪に精悍な顔つきをしている彼こそが、ペトラ王国王立騎士団の現団長である。縁故ではなく実力で今の地位まで上り詰めた男であり、人望も厚い。

 ノエルとは親友同士であるが、互いに大賢者と騎士団長という立場で忙しく、すっかり疎遠になってしまっていた。


「たしか結婚したそうだな。ろくな祝いもできんで、すまん」


「こっちこそ。君が結婚したのは知ってたけど、何もお祝いできなかった。ごめん」


「ハハ、お互い多忙になったが、俺たちの友情はいつまでも変わらんさ。ところで、俺に用件とは?」


「君の力で、僕を騎士にして欲しいんだ!」


「お前を騎士に?」


「うん……」


 我ながら無理をいっていることに改めて気づき、ノエルはうつむく。


「一体なぜ?」


「それは……言えないんだ。何も言わずに騎士にして欲しい」


 ノエルは妻のマウント合戦の件については隠すつもりでいた。いくら親友といえども、そのことは話せなかった。

 これに対し、ドレクスは――


「かまわんぞ」


「え、ホント!?」


「ああ、俺には団長として騎士任命権があるからな。今すぐにでもお前を騎士にできる。むろん、それでお前が俺の下になるということもない。偉大な大賢者を俺の下につかせるなど、俺としても不本意だからな」


 親友の気遣いの数々にノエルは感動する。だが、言い辛そうに言葉を続ける。


「実は……形だけじゃダメなんだ」


「……どういうことだ?」


「僕を槍の達人にして欲しいんだ! 今度の日曜までに!」


「なんだとお!?」


 この無茶振りには、さすがのドレクスも驚いてしまった。

 しかし、そこは親友の頼みである。無下にはしないと決める。


「ノエル、お前……槍を持ったことは?」


「……ない」


「うーむ……おそらくお前では騎士の扱うロングランスは重すぎて持てまい。ちょっと待ってろ。一番軽い槍を持ってくる」


「ありがとう」


 まもなくドレクスがショートランスと呼ばれる短めの槍を持ってくる。

 彼にとっては軽すぎてオモチャのような代物であるのだが――


「お、重い……!」


 やはりノエルでは持ち上げることすら一苦労だった。

 これでは“槍の達人”を演じるなど不可能である。


「筋力を上げる魔法があるだろう? それを使えば……」


「あるけど……それを使うと腕周りに魔力のオーラがほとばしるから、魔法に頼ってることがバレバレなんだ……」


「なるほど……」


 ドレクスは一計を案じる。


「実は子供たちが騎士団を見学に来た時のために、“紙の槍”というのを用意してあるんだ。騎士の体験をさせるためにな。それを貸そう」


「それなら僕でも扱えそうだ! ありがとう、ドレクス!」


「いやいや、こんなことで王国一の魔法使いに礼を言われるとむずかゆいものがあるな」


 これでノエルの用事は済んだ。

 身長は靴と帽子でごまかし、豪腕は細腕のまま嘘をつき通し、槍は紙の槍を振るう。これでなんとかするしかない。

 ノエルが礼を言って帰ろうとすると、ドレクスが引き止める。


「ちょっと待った」


「ん?」


「ちょうどよかった。実は俺も、お前に相談したいことがあったのだ」


「僕に……? どんな?」


 ノエルは嫌な顔一つしない。むしろ、自分を助けてくれたドレクスに早くも恩を返せると心が軽くなった。


「俺を……賢者にして欲しい!」


「賢者に!?」


 事情を聞くと、ドレクスもまた詳しいことは話せないが「今度の日曜日までに賢者にならないといけない」らしい。

 しかし、騎士と違って、ノエルには賢者任命権があるわけではない。ドレクスもそれは承知している。


「せめて……魔法を使えるようになりたいのだ」


「使えるってどれぐらいに?」


「うむ……隕石を落とせるぐらいには」


 ノエルは愕然としてしまう。


「隕石って……おそらく隕石を落とす魔法を使えるのは、この王国にも僕含め数人いるかってところだと思う。それぐらいの高等魔法だよ」


「やはり難しいか……」肩を落とすドレクス。


「でも、他ならぬ君の頼みだ。やるだけやってみよう。まず、君の魔力を測定するよ」


「頼む」


 ノエルはドレクスに手をかざし、内に眠る魔力を測定する。潜在的な魔力が多いほど、魔法の素質があることになるのだが――


「どうだ?」


 ノエルは険しい顔つきで答えた。


「君だから、はっきりと答えさせてもらう。君に魔力はほとんどない……典型的な戦士タイプといえる。日曜日までに魔法を覚えるというのはとてもじゃないけど……」


「……」


 ドレクスは黙っているが、落胆は隠せない。


「ありがとう、ノエル……。はっきり言ってくれて、助かった」


 だが、ノエルも一つの案を思いついていた。


「だけど、僕もなるべく協力するよ。賢者用のローブは用意するし、魔力がなくても魔法を撃ち出せる魔道具も貸す」


「いいのか? 魔道具など貸してしまって……」


「君なら絶対に悪用はしないからね。親友として全力を尽くさせてもらうよ」


「すまん……。その気持ちがなにより嬉しい」


 騎士になりたい大賢者と、賢者になりたい騎士団長。

 お互いさほど力にはなれなかったが、二人とも友のために力を尽くした。


 ノエルは今日ドレクスに会ってよかったと思った。次の日曜日、きっと妻に恥はかかせない。同時にドレクスの抱えている事情もうまく解決することを祈った。



***



 日曜になった。

 ノエルはその小柄に合う甲冑をどうにか探し出し、身につけた。さらに10センチのシークレットブーツを履き、長めの帽子をかぶる。手にはドレクスに用意してもらった紙製の槍を持っている。

 どう見ても騎士には見えない夫を、フレイヤは褒め称える。


「うん、バッチリ! 騎士団のエースにしか見えないわ!」


「そ、そうかなぁ」


「騎士に転職しても、あなたは王国一になれるわよ!」


 フレイヤの目もだいぶ曇っているようだ。


「見てなさいカミラ……このマウント勝負、私の勝ちよ!」


 ノエルは呆れつつも、妻に恥をかかせる結果にだけはすまいと気を引き締めた。



……



 待ち合わせ場所は王都内の国立公園。

 ここにフレイヤとカミラがそれぞれの夫を連れてくることになっている。


 先にたどり着いたのはフレイヤ。


「ふふふ、私の夫の“騎士団のエース”ぶりを見せてあげなきゃ!」


「が、頑張るよ」


 ノエルは緊張している。慣れないシークレットブーツのせいで足元はふらついている。


 程なくして、カミラが公園に現れた。

 横には彼女のいっていた「賢者の夫」を連れ添わせている。

 ただし、かなり異様な外見だった。


 長身で大柄な彼女の夫は、明らかにサイズの合っていない賢者用のローブを着ており、肩幅も腕も魔法使いとは思えないほどがっしりしている。


 まずはフレイヤ。


「さあ、我が夫にして騎士団のエース、ノエル・マインツよ!」


 続いてカミラ。


「彼こそが、私の夫にして王国有数の賢者、ドレクス・ハーゲンよ!」


 鼻を高くする妻二人に合わせるように、夫二人も顔を見合わせる。

 そして――


「あーっ!!!」


 同時に叫んだ。


「ドレクス!?」


「ノエル!?」


 先日会ったばかりの親友二人が、早くも再会を果たした。


 フレイヤとカミラはそれに気づかず夫たちに命じる。


「さああなた、槍の達人ぶりを披露して!」


「ドレクス、お得意の魔法を披露してあげて!」


 ノエルとドレクスは全てを理解し、目で合図をして、ゆっくりとうなずく。


「ここは僕たちが夫としてビシッと言ってあげた方がいいね」


「その通りだな」


 二人は自分の妻に叫んだ。


「下らないマウントの取り合いはもうやめろ!!!」



……



 なんとも滑稽な一幕だった。

 フレイヤは大賢者である自分の夫を「騎士団のエース」と偽称し、カミラもまた騎士団長である夫を「賢者」と偽称していた。

 全てはマウントを取るために。そのために無茶な変装までさせてしまった。


 怒られた夫人二人はさすがに反省したが、すぐに立ち直っていた。


「ノエルはね、魔法の腕はすごいけどそれ以上に優しいんだから!」


「あら、ドレクスだって決して武芸だけの男じゃないわ。包容力があって……」


 和気藹々と夫の自慢話に花を咲かせている。

 お互い夫に無茶をさせたことが明るみになり、いがみ合うことの空しさを学習したからかもしれない。


 そんな二人をノエルとドレクスも呆れながら見守る。


「すっかり仲良くなってるよ、あの二人……」


「とても学生時代から憎み合ってたとは思えんな」


「本質的には似た者同士だったから、一度意気投合したら、仲良くなるのも早いのかもしれないね」


「うむ、そうだな」


 そして、甲冑姿とローブ姿をした互いの身なりを見て苦笑する。


「お互い……全然似合ってないね」とノエル。


「仮にも大賢者と騎士団長が、妻のためにここまでしてしまうとは……惚れた弱みというやつだろうな」


「まったくだね」


 大賢者や騎士団長も愛する妻には敵わない。それを悟り、夫二人は笑い合った。






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[良い点] マウント合戦の結果がこんなほのぼののんびり系で、 さらに好きになったのが立場ではなく本人の資質と言うか性格が好きみたいなのとか、最後は惚れたから負けて被害は納得して動いた本人達だけというの…
[良い点] 最後のオチがほのぼのでステキでした。どっちもラブラブじゃーん!
[良い点] これ、「そう」なんだろうなぁ。 だけど「どう」決着つけるんだろう? ってワクワクハラハラしながら読んでたら、意外とご主人ズが正面から落とし前つけさせたのが素敵です。 カミラさんたちも、「…
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