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第五章 初めての中間試験

 サブタイトルそのままの中間試験の話になります。

 軍学校に入学して初めての中間試験。

 前半に筆記試験、後半に実技試験が行われる。

 生徒の誰も彼もが机の前で頭を抱えてう~んう~んと、うなり声を上げていた。

「これは、またやっかいだな」

 あれ程、勉強を続けてきたエリスにもそう言わせる難問ぞろい。

「やってやろうじゃないか」

 闘志を燃やし、問題を解き始めるエリス。これぐらい突破できないとエイリアンと戦う戦士になるなんて夢のまた夢。



 中間試験後半の実技。

 VRヘッドギアを装着して仮想空間で戦闘機を操縦してエイリアンと戦う。

 エリスは前世の趣味を軸にこれまで特訓をこなしてきていたが、軍学校となればVRヘッドギアに加えて疑似コクピットに座っての訓練となる。

 疑似コクピットは操縦に応じて360度回転する。VRヘッドギアの仮想空間の感覚だけではなく本物重圧が身体にかかるのだ。

 攻撃を受ければ疑似コクピットとはいえども衝撃がくる。命に別状はないけれど、身体に加わる負担は軽くはない。

 普段の授業でも疑似コクピット訓練の後にトイレに駆け込み吐く生徒がいるのに、中間試験となれば更なる難解なミッションをクリアしなくてはならない。

 いつもよりも多くの生徒がトイレへ向かった、その中にはケイシーの姿も。

 ただ軍学校に入学しただけあり、みんなトイレまでは持ちこたえていた。

「この程度で音を上げていたら、エイリアンと戦って生き残れなんかしないよね」

 一層気合を入れ、疑似コクピットを操縦する。


「入学して最初の試験で、まさかパーフェクトを出すとは驚きです、このエリス・リーン生徒は」

 褒めているのは試験官の1人で教頭のボドワン。彼もエルフではあるが実力のある相手は素直に認める。

「本当にそうですな、良い生徒の指導をなさっているようですね、ローズモンド先生」

 校長のエックハルトの評価も高い。エックハルトとボドワンは戦場で戦っていた時からのパートナー。

「だが仮想は仮想、現実の戦闘とは違う。仮想空間でエイリアンを倒せても本物相手に倒せるとは限らない。私たち教師のやるべきことは生徒たちが生きて帰れるように鍛え上げることだ」

 ローズモンドの言葉には厳しさの中に生徒を思いやる気持ちが込められている。

「その通りです、我々は生徒たちの体だけじゃない、心も強い戦士に育てなくてはなりません」

 ボドワンが同意を示す。

「あの子たちを戦場に送り出す以上、それが私たち教師の果たさなくてはならない義務です。それを肝に銘じなくてはなりません」

 優し気な顔ながらエックハルトの言葉には重みがあった。


 中間試験は終了し、翌週に発表される試験の結果。



 カード型のスマホに送られてきた中間試験の結果を見ているエリス。

「学年順位2位なんてエリスは凄いね、私なんて……」

 エリスの順位を褒めるも、ダイアナは自分の成績に顔を暗くする。

「これは最初の試験なんだから、そんなに気にすることないよ」

 嫌味で言っていないことは誰にでも解る。

「そうそうエリスの言うとおり、最初の試験結果なんて気にする必要なんて~全く無し」

 自分の成績は棚上げしてエリスの順位をケイシーは我がことのように喜ぶが、急に喜びの表情を急に曇らせる。

「しかし1位があいつかよ」

 ケッと口にしなかったものの、そんな気持ちをケイシーは持つ。

「ヒューマンの貴様が2位だと、カンニングでもしたのかね?」

 相変わらずの侮蔑の言葉を吐きながら、成績1位のフィリップが取り巻きを引き連れ現れる。

 ただでさえ初対面で嫌味な奴と印象を与えて置いて、エリスの成績をカンニング呼ばわりされたことでダイアナとケイシーは不快感100%になる。

「先生たちが見ている前でカンニングなんかできると思っているの」

 フィリップの毒気を真正面から、受け止めてみせる。

「ハァ? 実力で2位を取ったと言うのか、ヒューマンが。これは面白いジョークだ」

 大声でフィリップは笑いだす、続いて取り巻きも笑いだす。

「あのさ、筆記試験はともかく、実技試験はエリスがダントツでトップだよ」

 カード型のスマホで調べた事実をダイアナが指摘した途端、フィリップと取り巻きの笑い声が止まる。

「どんなイカサマをしたのか、聞かせてくれないかな」

 先ほどの馬鹿にした笑顔は何処へやら、険しい顔で睨む。

「実力だよ」

 臆することなく、堂々と言い放つ。

「教師は騙せても、エルフである私までは騙せない」

「ほぅー、私たちが騙されたってか、それは聞き捨てならないな」

 いつの間にか、そこにはローズモンドが立っていた。

「私の目が節穴だとでも」

「いえ、そうことでは……」

 同じエルフのローズモンドの迫力に、フィリップも押されてしまう。

「エリス・リーン、フィリップ・カディオ。お前たち2人で模擬戦闘をしろ」

 いきなり模擬戦闘をしろと言いだした。これにはエリスもフィリップもポカンとした顔になる。

「じかに競えばエリスの実力が本物かイカサマかは解るだろう。私とて節穴と思われるのは不愉快だからな」

 有無を言わせないローズモンドの迫力、誰だってNoなんて言えない。エリスもフィリップも模擬戦闘を了承せざるなし。

「模擬戦闘は一時間後だ」

 準備に向かうローズモンド。

 ローズモンドの姿が見えなくなると、

「レベルの差と言うものをその身に教えてやる、ヒューマン」

 勝ちを誇った笑顔をフィリップはエリスに向ける。その笑顔から取り巻き共々、自身の負けは無いとの絶対の自信が窺い知れた。



 対エイリアンライフルを持ったエリスは廃墟の中を探索中、決して警戒心を崩さない。

 突然、昆虫タイプのエイリアンが現れ襲い掛かってくる。

 対エイリアンライフルで正確に腹に二発撃ち込み、止めに頭にも二発撃ち込こむ。

 背後から掴みかかってきたヒューマノイドイプのエイリアンの腕を掴んで投げ飛ばし、地面に叩きつけて対エイリアンライフルを額に押し付けて引き金を引く。

 突然、物陰からヒューマノイドイプと昆虫タイプのエイリアンがわんさかと出てきたではないか。

 1mmたりとも恐れることなく、エリスは対エイリアンライフルを連射モードに切り替えてぶっ放す。

 次々倒れるエイリアンたち、壁の後ろから飛び出してきたのは助けを求めるのは尖った耳を持つエルフ。

 咄嗟に対エイリアンライフルの連射を止める。

 エルフが無事避難したのを確認してから、再び連射モードでエイリアンを掃討を再開。

 襲い掛かって来るエイリアン、時折群れの中に逃げてくるエルフが混じっており、その度にエリスは掃討を止めて非難させる。

 廃墟をぶっ壊し、巨大な爬虫類タイプエイリアンが出現。

 すぐに対エイリアンライフルを連射モードからにランチャーに切り替え、まずは一発ぶち込み、続け様に問答無用で数発を打ち込む。

 倒れる爬虫類タイプエイリアン。

 しばらくは警戒していたが、新たなエイリアンが現れる兆候は無し。


『エリス・リーン、模擬戦闘は終了だ』

 ローズモンドの声とともに、周囲にあった廃墟も倒れているエイリアンも非難した人の姿も消え、エリスはただ広い部屋に立っていた。

 廃墟もエイリアンも助けを求めるエルフも全ては精巧なホログラムで作られた虚像。

 エリスが手に持っている対エイリアンライフルはいわゆるモデルガンの部類。

 モデルガンと言っても本物と寸分たがわない形で重量も同じ。

 モデルガンなのは軍学校に入学して初めての中間試験で、いくらなんでも本物の対エイリアンライフルを持たすわけにはいかないので。


 ローズモンドの用意した模擬戦闘は仮想空間でのエイリアン戦。

 模擬戦闘と言っても中間試験とは比べ物にならない程に難しもので入学したての生徒に出すような物ではなく、はっきり言って意地悪と言っても差し障りがない。

 先に受けたフィリップの模擬戦闘の内容は平等を期すためにエリスと同じ、ただしある一点を除いては……。



 約一時間で模擬戦闘の結果の発表となった。

 ローズモンドの前に呼び出されるエリスとフィリップ。自身の勝利を確信しているフィリップは、必死に笑いを堪えている。勝利が確定すると同時に嘲笑してやるつもり。

 悔しがるエリスの顔を想像し、笑いを堪えるのをさらに強くする。

「模擬戦闘の結果、勝者はエリス・リーンだ」

 結果を聞いた瞬間、堪えていた笑いが一気に凍り付く。そして出た言葉が、

「先生、発表を言い間違っていますよ」

 だった。

「勝者はエリス・リーンで間違ってはいない」

 たちまちフィリップの表情が険しく変わっていき、

「何故、私の負けなんだ! ヒューマンなんかにエルフである私の負けるはずなんてあり得るものか、同じエルフであるローズモンド先生が解らないんだ!」

 怒号を飛ばす。

「ヒューマンだとかエルフだろうが関係ない、私は正当な模擬戦闘の結果を発表しただけだ」

 フィリップの怒号をものともせず、淡々と伝える。

「ではどうして私が負けたのか、是非とも理由を聞かせてもらいたい」

 どうしても自身の負けを認めることのできないフィリップは負けた理由を求める、エリスを睨みながら。

「フィリップ・カディオ、それはな避難民を撃ったからだ。助けを求める避難民を全員、お前は撃った。たった1人、避難民を撃っただけでも失格といってもいい。それに対し、エリス・リーンは全ての避難民を助けた。これが本当の戦闘なら何人殺したか、解っているのかフィリップ・カディオ?」

 知りたがっていた理由をしっかり教えてやるローズモンド。

「避難民よりもエイリアンの殲滅を優先するのが戦士であるべきだ。そもそも避難民と言っても、たかがヒューマンではないか!」

 エリスとフィリップが受けた模擬戦闘内容のある一点違いは避難民。エリスにはエルフの避難民、フィリップにはヒューマンの避難民が用意されていた。

 たかがヒューマンではないかと言われ、エリスは多少むかついたがここは我慢することとが出来た。

「何と言われようが、模擬戦闘の結果は覆ることなない」

 はっきりと言われたフィリップはギリッと歯を軋しらせ、再度エリスを睨みつけ部屋を出ていく。

 出て行ったフィリップの背中を見て、ローズモンドは難しい顔をしていた。



 模擬戦闘後、集まったエックハルトとボドワンとローズモンド。

「うまくいかなかったですな」

 心の底から残念そうなエックハルト。

「フィリップには負けることで種族間の偏見を無くしてほしかったんだがな」

 それこそローズモンドが模擬戦闘の対決を持ち出した一番の理由。

 フィリップの鼻を折ることで目を覚まさせる。入学試験も中間試験も総合で1位を取っているのだ、一皮むければいい戦士に育つと言うのに。

「思った以上に彼の種族間の違い対する偏見は根深かったのか……」

 ボドワンも残念そう。

 ローズモンドの目論見は外れ、フィリップの偏見と確執は強くなってしまった。

 一方、エリスは転生して初めてエルフやドワーフに出会ったが、様々なファンタジー作品で触れ合っていたので本当にいるんだな程度で受け入れることが出来た。







 子供の頃、ゲームセンターにエイリアンを撃つゲームがあり、時々人間が助けを求めてくる。

 でも人間の中から、エイリアンが旅出してくることも。

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