第四十四章 ビースト
三度目の指令がきました。
エリスに三度目の戦いの指令が来たのは旅行から帰ってきて一月半たった日。
内容からして厄介な戦いになりそう。厄介だからこそ、エリスたちに白羽の矢が立ったのだ。
今回は断れそうにない雰囲気であり、元から断るつもりもなし。
戦う時に戦わないのなら、戦士になった意味はない。
「やってやるさ」
やる気を漲らせるエリス。
宇宙港にはダイアナとケイシーが先に到着していた。宇宙戦の後、三人はカード型スマホでのやり取りや待ち合わせて遊びに行ったりしていた。
「なぁ、エリス、ダイアナ。今回の任務、どう思う?」
格納庫に向かう道すがら、ケイシーが聞いてきた。指令には詳しい話は戦艦内で行うとあった。これは公に出来ない任務であることが窺い知れる。
「何か厄介そうね」
「うん」
頷くエリス。指令の内容から、ただのエイリアン討伐任務じゃないのは推察できる。これまでのものとは異なる任務。
そのことを理解したうえで三人は任務を受けた。
「どんなタイプのエイリアンが来ようが、俺がぶっ飛ばしてやるぜ」
エリスの前でかっこつけて見せる。
「でも、油断はしてはいけない」
「エリスの言う通りよ」
同意を示すダイアナ。そこにはケイシーには渡さないからねとの意思が込められている。
当の本人はそんなことは気づいておらず。
格納庫の入り口には赤毛の女性が待っていた。美人の部類に入るが殆ど化粧をしておらず、体格も女性とは思えないぐらいに頑丈なのが一目で解る。服も着崩していてお洒落とはほぼ遠い。
「待ってたぜ、中々、いい面構えしているじゃねぇか」
にゃっと笑った口角に牙が見えた、八重歯ではなく牙が。
ビーストだと、エリスとダイアナとケイシーは同時に気が付いた。
ビースト、肉体強化改造施術を受け、他の生物の能力を移植した戦士。
「アタシはジェイニー・ドハティだ。気軽にジェイニーと呼んでくれ」
今回の指揮を取るのがジェイニー。エリスは父親のアランと同じ匂い、ベテランの兵士の匂いがしていると感じた。
「僕はエリス・リーン」
「私はダイアナ・キブソンです」
「俺はケイシー・エイムズ」
それぞれ、紹介。
「来な」
ジェイニーの後に着いて格納庫に入る。そこにあった宇宙船はオーギュストのように宇宙戦用の戦艦とは違い、輸送船に近い形。それでも武装はしており、輸送船と戦艦の中間と言った感じ。
丸びを帯びたデザインに緑色の塗装なのが亀を連想させる。
中もこじんまりとしていて、非常にシンプル。
ドアの前に立つと一応ノック、返事が来る前に開けた。
部屋の中にいた男たちは文句を言うことも無く、直に床に座ってジャンクフードを食べながらカードゲームを楽しんでいた。
ガラが悪く、人相も良くない男ばかり。
「よう、野郎ども、この三人が一緒に戦ってくれる。何とスペリオルなんだぞ」
男たちにエリスとダイアナとケイシーを紹介。
「ちわっす、若いの」
「可愛い女の子が二人もいるじゃねぇか」
「こりゃ、オレたちも張り切らないとな」
「スペリオルか、初めて見た」
「俺は前に見たことあるぞ」
遠慮なしに語りだす男たち。ジロジロ見てくるが視線にはいやらしさや下心は含まれいない。
「何か、兵士と言うよりも海賊みたい」
思わずダイアナが呟いたここと同じ印象をエリスも持っていた。
「こいつらは見てくれは悪いが、中身までは悪い奴らじゃないぜ」
擁護しているれかしてないのかよく解らず。
「姐さん、こいつらは見てくれは悪いはひどいすよ」
「最も姐さんの言う通りだがな」
ガハハハハッと笑い出す男たち。
荒くれ者のどもの姐さん、ジェイニーにピッタリなイメージ。
よく見れば飲んでいるのはジュースであり、酒は一切飲んでいない。戦いの前にアルコールを摂取することを避けているのだ。ちゃんと、軍人として心得を持っている。
「客人もこんなむさくるしい所は嫌だろ、部屋を用意した」
案内された部屋。
「適当に寛いでくれ、冷蔵庫の中にあるもんは好きに食ってくれてかまわんぞ」
それだ言うと仕事に戻って行った。
一応、三段ベットと冷蔵庫と戸棚はある。それ以外、何にもなし。
「随分、シンプルな部屋だな」
部屋を見回したケイシー。不便ではないなと言うレベルの部屋。
「私たち同じ部屋なんだ」
三段ベットを見れば解る。女二人に男一人が同室。
「多分、そこまで気が利かないんだ」
「がさつそうだったもんな、ジェイニーさん」
エリスが男の子だった頃はケイシーと同室だった。ダイアナも部屋に遊びに来ていたし。その延長線上と考えることが出来るかもしれない。
文句を言ったところで何も始まりそうにないので、三人は受け入れることにして部屋に入った。長い付き合いからケイシーが人としての道を踏み外すことなど無いと、エリスもダイアナも確信をもって断言できる。三段ベットなのは気になるれど。
ジェイニーさんの登場。




