第四十一章 家族旅行
リーン家が家族旅行に行きます。
リゾート星キキサノに家族旅行に来ているエリス。
キキサノの名物は温泉。星のいたるところにありとあらゆる効能がある温泉が湧き出ている。治せないのは恋の病だけとも言われており、湯治目的で訪れる客もあり。
ホテルまでの道すがらが漂ってくる、特有の香りは温泉街に来たことを実感させてくれる。どこかヴァルミネの街並みに似ているような気も。
予約したホテルは貴族だけあり、超が付くほどの一流。
チェックインを済ませるアラン。フロントの対応が丁寧なのは貴族が相手だからではなく、お客様だから。全ての宿泊客に丁寧な対応を心掛けているからこそ、超一流と評価されているのである。その分、値段も高い。
カードキーを受け取り、リニアエレベーターに乗って最上階へ。
「わぁぁぁぁぁ」
部屋に入った途端、エリスは思わず声を出してしまった。大窓から一望できる街の景色、正にパノラマ。窓に近づき、じっくり眺めてみる。
スペリオルになったことで視力が格段に上がっているため、遠くまで隅々まで見えた。
そんなエリスの様子を楽しそうに見ているアランとシャーロット。しっかりしているように見えて、まだまだ子供なんだなと。でも、前世はおじさんなんだけど。
荷物をタンスにしまった後は備え付けの簡易な服に着替え、一家そろって地下にある温泉へ。
エレベーターから降りるリーン一家。どの星の種族も関係なし、アランのようなスチールも入つても楽しめる温泉。
地下全体が温泉施設になっていて、入浴以外にもジムやインドアスポーツやマッサージがなどの施設が充実している。
「さぁ、行くわよ、エリス」
母親のシャーロットに手を引かれ、連れて行かれる。
エリス自身、解ってはいた。シャーロットに連れて行かれたのは女子の脱衣所。
女子の脱衣所に入るのは経験済みなのと、解ってはいたので多少の心構えは出来てはいたものの、それても恥ずかしいことは恥ずかしい。
出来るだけ端っこへ行って、素早く服を脱ぐ。しかし、これは第一の試練に過ぎないのである。
入るのは女性用の大浴場。何人もの女性たちが生まれたままの姿で入浴を楽しんだり、体を洗ったりしている。
いつまでたってもこれだけは慣れることは出来ない。出来るだけ、視線を足元に集中させ周囲に意識を向かないようにする。同時に人とぶつからないように注意することも怠らない。
十分にシャワーでかけ湯してから湯舟へ。体が温まったら、湯から出て体を洗う。これらの行動を周囲に意識が向かないままに実行する。
そんなエリスをシャーロットは優しそうに楽しそうに見ていた。軍学校の訓練や実戦を潜り抜けた戦士でも子供は子供なのだ。
再び湯船に浸かるエリス。女の子になったころに比べれば、多少なりとも抵抗力を見についていたのでリラックスすることはできた。やはり、お風呂はこうあるべき。
「こっちよ」
入浴の後、シャーロットに連れて行かれたのはマッサージ部屋。
「二人、お願いします」
エリスの返事を聞く前にマッサージを二人分を予約。
ほんの少しの待ち時間でシャーロットとエリスの順番が回ってきた。
「最近、肩と腰が凝っているのよね」
マッサージ師に重点的に揉んでほしい個所を告げる。
隣のベットでうつ伏せに寝そべるエリス。
「背中を重点的に」
あまり凝ってはいないが、凝っていると言われれば凝っているかな個所である背中をマッサージ師に告げる。
「あら、可愛いのに随分と鍛えておられるのですね」
「はい、その通りです」
流石はプロ、触っただけでエリスが鍛えることを見抜く。
適度な力で揉まれ、解されていく筋肉、とても気持ちいい。
精神も鍛えているので寝落ちすることは無い。ふと、隣を見るとシャーロットが転寝していた。
入浴とマッサージの後は食事。部屋ではなく、一階の大食堂で食べる。
アランとシャーロットとエリスは席に着いた。
立食形式で各々が好きな料理を取りに行くスタイル。
まずは何から食べようか、皿を片手にエリスは見て回る。オードブルにスープにサラダにメインディッシュにデザート、超一流と言われるだけあって、どの料理も一級品の素材を一流の料理人が調理したもので美味しそう。
入浴と施術のお陰でお腹が減った状態、いきなり大量の料理を取らずに、まずは軽めに海鮮と野菜を皿に乗せた。
シャーロットは入浴と施術に加え睡眠までしているので、より一層食欲が増している。フードファイターかと言わんばかりの勢いで食べる。
肉に海鮮に野菜とアランはバランスよく食べていく。
食事の後、アランとシャーロットとエリスは明日の観光に備えて早めに就寝。
翌日、リーン一家が向かったのは宇宙中のアーティストが集まり、街中に己が作品を展示しているエリア。
建物も壁もガードレールも標識も、街の全てが芸術作品になっている。
「すごい……」
思わず呟くエリス。ヒューマンにエルフにドワーフにリトルグレイにレプティリアン、様々な種族の芸術家たちの作品。ヒューマンの感性にあったものやヒューマンの感性ではよく解らないものまで並んでいる。
キキサノは温泉と芸術の星。
「……あれは」
一つの作品に引き付けられたエリスは近づいて見てみる。なぜか懐かしさを感じさせる作品。
「これは地球から、やってきたヒューマンが作った作品だな」
「地球だって」
「ああ、地球にいた頃は普通の人だったのだが、宇宙と触れ合ったことで才能が開花して芸術家になったのだそうだ。地球に帰そうとしたのだが当人が拒み、キキサノで一生を過ごしたそうだよ」
懐かしさを感じるはずである、地球人の作品なのだから。
『アブダクションは本当にあったんだ……』
誰にも聞こえないように心の中だけで呟く。
ホテルに戻った後は入浴して食事。今日もエリスはシャーロットに連れられ、女性用の大浴場へ。
ゆったりとした時間を過ごし、十時を回った頃には寝息を立てていた。
地球人の作品を見た影響なのだろうか、エリスは夢を見た。前世で暮らしていた地球の夢を。
前世で住んでいた家、子供の頃に遊んだ公園、通っていた学校、働いていた会社。ふわふわと飛ぶように夢の中で通り抜けて行く。
修学旅行でも地球に訪れ、前世の両親とも再会できた。
現世の故郷がラースなら、地球は前世の故郷。双方とも思い入れは強い大切な場所。
旅行行った時に食事がバイキング形式だったのでも話の中もバイキング形式にしました。




