第四十章 新敵の名
今回も会議回になります。
召集を受け、ラースの星連会議場に各星の代表者たち集まった。今回も遠方の星の代表者はモニターで参加している。
席についているヒューマンやエルフやドワーフやリトルグレイやレプティリアンなど、様々な種族。
立ち上がるトム。
『まずはエイリアンと勇敢に戦い、散っていった戦士たちに黙祷を』
各星の代表者たち、モニターの向こうの代表者たちも立ち上がり、黙祷。
黙祷が終わり、各星の代表者たちが席に着く。
『では、話を始めます』
各星の代表者たちの前にモニターが浮かび上がる。
『先日、冬の星にてタイプ不明の大型エイリアンと遭遇、討伐いたしました』
トムがモニターを操作して骸骨型のエイリアンを映し出す。全長十二メール、全身が凍り付いた骸骨の姿。所々に皮膚や筋肉や内臓が残っている。耳はエルフと同じ先が尖っていた。
異形の姿に、ところどころに残っているエルフの特徴。砂漠の惑星に現れたタイプ不明の大型エイリアンと類似点が見受けられる。
「砂漠の惑星のタイプ不明の大型エイリアン同類と見て間違いないだろうな」
ドワーフの意見と各星の代表者たちも同意見。エルフだけは自分と同じ種族の特徴を持っているエイリアンに不愉快さは感じつつも、状況証拠から同意を示す。
『今回はサンプルを入手することに成功し、解析に掛けました』
解析データが各星の代表者たちのモニターに送られる。驚きの声を上げそうになった者もいたが、二度目なので何とか堪えた。
『見ての通り、骸骨型のエイリアンのDNAと行方不明であるエルフのDNAは一致いたしました。間違いなく、骸骨型のエイリアンは行方不明のエルフは同一人物です』
フィリップの取り巻きの一人、行方不明のエルフのDNAは家族の許可を得て入手したヘアブラシの毛から採取した。
訪れる沈黙。各星の代表者たちもある程度答えには察しがついていたが、実際に証拠を示されれば気分が良いものではない。
「認めねばなるまい、エルフがエイリアンになったと言う事を」
議長の言う通り、物証が提示されたからには認めなくてはならない、どんなに認めたくなくとも。自身がエルフである議長が認めたのだ、彼の言葉には重みがある。
「何故、エイリアンになったのだ? エルフ以外にもエイリアンになる可能性があるのか……」
発言するレプティリアンの顔色は良くない、レプティリアンからではない不安から。最悪、自身がエイリアンになる可能性もあるのだから。
何故、どうしてエイリアンになったのか? 誰もがエイリアンになる危険性があるのか? 各星の代表者たち共通の疑問であり、不安でもあり、恐怖でもある。
『この件に関し、本日はある御方に来てもらっております』
トムの言った後、一呼吸の間を置いて会議場にある人物が入ってきた。
純白のローブを纏った整った顔立ち、ヒューマンなのかエルフなのか種族も性別も解らないミステリアスな雰囲気の人物。
儀式星ヴァルミネの神殿の御子の登場に、誰もがも声を上げてしまった。御子は殆ど、聖地から出てこない。よほどのことがない限り。
御子が会議場へ来たと言う事は、そのよほどのことが起こっているという証。声を上げてしまうのも仕方がなし。
「御子です」
拡声器を使ったわけでもない大声でもないのに、会場にいる全員に声が届いた。
「結論から言います、エイリアン化の原因は闇の精霊によるもの」
闇の精霊とは聞きなれない言葉、最年長であるエルフの議長も初めて聞く。
「闇の精霊とは、文字通りの闇に陰に属する精霊のこと」
各星の代表者たちの心の内を悟り、補足する。
「それは精霊と関係のあるものなのでしょうか」
ヒューマンの代表が尋ねれると、御子は頷いた。
「精霊は光に陽に属する存在。精霊と闇の精霊は対極をなす」
各星の代表に選ばれるだけあり、会議場に集まった者たちは聡明である。すぐに精霊と融合したスペリオルに結びつけるのに時間はかからない。
「精霊と融合した者がスペリオルになるように、闇の精霊と融合した者がエイリアン化したのです。便宜上、エイリアンと呼んでおりますが、正確には異なります」
代表者たちの結びだした答えは正解。
「闇の精霊は何人とも接触することなく、深淵の底に蠢き、日の当たる世界に出てくることはありませんでした。しかし、今回、闇の精霊は日の当たる世界に出てきて人と融合した」
本来、日の当たる世界に出てこないはずの闇の精霊が出てきてエルフと融合した。本来、起こりえないことが起こっていると言う事は、何かが起こり始めている。
言い知れぬ不安が代表者たちの心中を覆っていく。気のせいだとか大げさだと言って目を塞いだところで事態は好転しない。現実を現実と受け止めくてはならない。
「闇の精霊はありとあらゆるものに害をなす存在」
砂漠の惑星と冬の星を起こったことと同じことが、他の星でも起こる。
「このまま、放置していれば全宇宙の生命が絶たれてしまうやもしれません」
二度に渡って闇の精霊との融合者と戦ったトムは思わず生唾を飲み込む。一度目は魔法を使い、二度目に戦った時は凍り付いた動物の投げつけて攻撃してきた。
共に恐ろしい敵。
「奴らは何が目的なのか」
ドワーフの代表の静かに言った。
エイリアンに目的などない、ただ本能のままに殺戮と破壊を行うだけなのだ。
ならば人間と融合した奴はどうなのだろうか?
「それは私にも解りません。闇の精霊が日の当たる世界に出てきたことの初めてのことなので。ただ、危険な存在であることは間違いないでしょう」
何でも知っていそうな御子も解らぬこと。それでも、御子が聖地から出てくる事態が起こっている。
おそらく、宇宙規模の問題が起ころうとしている。誰も何も言わなかったが、誰もがそのことが解った。
「ならば、やるべきことは一つ。例え元は人間だったとしても仕留めること」
議長の意見に誰一人として異論などは一つも出なった。野放しにしていい問題ではない。
『闇の精霊と融合した者をイヴィルと命名したいと思います』
トムの命名にも異論は出ず、闇の精霊と融合した者はイヴィルと呼ばれることとなった。
闇の精霊との融合者、イヴィル。




