第三十四章 初陣後
各星の代表による、会議から始まります。
ラースにある星連会議場。集まった代表者たち、遠方の星の代表者はモニターで参加。
ヒューマンやエルフやドワーフやリトルグレイやレプティリアンなど、様々な種族が集まっている。
それぞれの見やすい場所に浮かび上がるモニターにトムの姿が映し出された。
『艦長を務めているトム・ターナーです』
本人はモニター越しではなく、ちゃんと会議場内に来ている。
『まずはこれを見てください』
画像がタイプ不明の大型のエイリアンに切り替わる。
『これは先日、砂の惑星に現れたタイプ不明の大型のエイリアンです』
トムはモニターを操作して顔の部分をアップさせる。
「これは……」
「顔が人みたいだな」
「おいおい、似すぎていないか」
「この顔の特徴はエルフ?」
タイプ不明の大型のエイリアンの顔のことを意見し合う代表者たち。
次に戦闘シーンが流される。そこではタイプ不明の大型のエイリアンが呪文を唱え、治癒と光の壁の魔法を使っていた。
エルフの似のエイリアンも驚くことなのに、魔法を使ったとなると恐るべき事態。
見間違いかと巻き戻して再確認する代表もいたが、結果は変わらず。
僅かにフェイクであることを期待してモニターを隅から隅まで見ても、その可能性は皆無。そもそもトムが質の悪い悪戯をするような人物でないことは誰もが皆が知っている。
エイリアンだけでも厄介な相手なのに、さらに魔法を使うとなると厄介を超える相手になってしまう。
『一人の新兵により、あるエルフに似ているのではないかと指摘がありました』
画像をフィリップの取り巻きの一人に切り替える。
『この者が指摘のあったエルフです』
新たに投下された爆弾級の情報。画像を食いように見る代表者たち、確かに似ていると他人の空似ではないかと、大まかに分けて二つの意見が上がる。
『AIに解析にかけたところ、95%で一致が見られました』
またも騒然となる代表者たち、一体どういうことなのか? 何が起こっているのか?
『私も気になり、当の本人を探したところ……』
騒然となった場は一旦は収まり、トムの話の続きに集中する。
『当の本人は軍学校で仲の良かった五人と共に行方不明であり、捜索願が出されておりました』
フィリップと取り巻きは行方不明。そのデータを代表者たちの端末に送る。
代表に選ばれるだけあり、データが偽りや間違いがないことはすぐに理解。ではなぜ、行方不明のエルフとタイプ不明の大型のエイリアンの顔が酷似しているのか? 代表者たちは議論を開始。
「ひょっとして、エイリアンが擬態しているのか?」
「もしかすると、体を乗っ取られたのじゃないの」
「エイリアンに変貌した」
レーフォの代表者エルフが口にした。この中でも最古参の一人であり、議長を任されている。
エルフの代表者が言ったことは誰もが頭の中に思い浮かびながらも、意識的に否定していたこと。それならば魔法を使ったことにも説明が付く。
元々、魔法を得意とするエルフがエイリアンになったのだから魔法が使える。
認めたくなかったのだ、エイリアンと戦う側がエイリアンになってしまっということを。その理由は簡単、怖いから。
もしかして自分たちもエイリアンになるんじゃないか……。これはある意味、死ぬよりも怖い。軍人はいつ死ぬかは解らないし、いつ死んでもおかしくはない。
軍人になった時から、死ぬ覚悟はできていてもエイリアンなる覚悟は出来てはおらず。
しかし、認識してしまったからには否定は出来ない。ならば何故、エルフがエイリアン化してしまったのかが議題になる。
だが話し合っても答えが出てこない、何せ前代未聞の出来事。
『すまない、サンプルがあれば何か解ったかもしれないのに』
頭を下げるトム。タイプ不明の大型のエイリアンは凍結され、粉々に砕け散り、砂に交じってしまった。サンプルを回収することは不可能。その責任は指揮を執っていた自分にある。
「それは仕方がない。初めて遭遇した大型タイプであり、ましてや魔法を使うエイリアンなんた。戦って犠牲者を出さなかったことでも、評価に値する」
議長の発言に異議を唱えるものなど無く、むしろ満場一致で同意。
「次に同種と思われるエイリアンと遭遇した際、サンプルを採取すればいい。ただし、最優先事項は命を守ること」
サンプルを採取するが難しい場合、討伐を優先することが決定。誰一人反対する者はいなかった。
「では、今回の会議はこれで終了する」
☆
初陣の勝利を祝し、アランとシャーロットはパーティを開いてくれた。伯父とダイアナも招待。
戦勝を祝うと言っていても、このパーティの真意はエリスとダイアナが初陣で無事に帰還したこと。
だからこそ、伯父とダイアナも招かれた。
父親も伯父も初陣の勝利を同じ理由で祖父から祝ってもらえた。祖父も曾祖父から祝ってもらえた。
リーン家で代々行われてきたこと。
エリスのグラスの中身は約束通りのノンアルコール、ダイアナも同じ飲み物で乾杯。
食後は雑談の時間。他愛もないが楽しい話を語り合う。
雑談の最中、一人また一人と部屋から出て行く。気がつけば、エリスとダイアナ二人きり。
みんな気を利かせてくれたのだ。隣同士の席にしたのもこれが狙い。
しばし黙ったままのエリスとダイアナ。二人の間に二人だけの時間と空間が流れる。
傍から見れば女の子同士、でも心は男の子と女の子。
「ちょっと、外へ出ようか」
「うん」
二人で庭に出る。
「夜風が気持ちいいね、ダイアナ」
「そうね」
言葉通りに夜風が心地よい。空を見上げれば満天の星が輝いている。街の明るさのため、山に比べればレベルが落ちるものの、それでも美しい。
「あの中に砂漠の惑星もあるのね」
満天の星の中に初陣で戦った砂漠の惑星がある。
「エイリアンが暴れている星、エイリアンと戦っている星も」
ダイアナの言う通り、今この時もエイリアンは犠牲者を生み出し、そんなエイリアンと戦っている戦士たちがいる。
エリスもダイアナも星々に暮らす民を護る戦士であり、スペリオルの力を持っている。
エイリアンとの戦いに勝利したからと言って初陣に過ぎない。エイリアンとの戦いは、まだ始まったばかり。
無論、今後の戦いも勝ち続けるつもり、例えどんな相手でも。
二月経つと、次の戦いの指令が届く。同じ指令がダイアナとケイシーの元にも届いるころ。
強制ではない、したがって拒否する権利はある。だがエリスもダイアナもケイシーもその権利を使うつもりはない。
次なる戦いへ。




