第三十三章 砂漠の惑星
砂漠の惑星での初陣。
宇宙戦艦は砂漠の惑星に着陸。タラップを降りる兵士たち、既にヘルメットを被っている者もいれば者いれば、手に持って降りてくる者もいる。エリスとダイアナとケイシーもヘルメットを手に持って被っておらず。
砂漠だけあり、とても暑い気温だがスーツの温度調節機能のおかけで快適な気温を保っている。
陽光が眩しい、顔も暑い。エリスとダイアナとケイシーはヘルメットを被った。これによる強い陽光や舞い散る砂から目と肌を護ることが出来る。
ケイシーがヘルメットに装備されている機能を使い、星の情報を検索。
「どこもかしこも砂砂砂砂砂。エイリアンも何が楽しくてこんな砂ばかりの星に来たんだか」
スペリオルになってもエイリアンの感性はいまいち理解できず。
エリスもヘルメットの機能で星の様子を確認。前世で砂漠は映像や写真でしか見たことは無い。今、目の前には広がってるのは砂漠どころか砂の惑星。広いなんてなんてレベルではない、この星の殆どが砂なのだ。
ダイアナは砂を掴み上げ、さらさらと落としてみる。ラースの砂とは違った感触の砂。
砂の中にいた小さなトカゲ。どうやらお昼寝していたらしく、突然お日様に晒されて驚き慌てて逃げて行き、砂の中に潜り込む。
「この星にも生息している生き物がいるのね」
スーツの温度調節機能が無ければ一般の人間は数時も持たないだろうが、こんな砂漠の星に対応して生きている生物がいる。
そんな生物も抹殺するエイリアンを退治するため、エリスたちはこの星に来たのだ。
宇宙戦艦からコンテナが降ろされる。中身は食料や水に武器やサポート用のロボットなど、この星で活動、戦争するために必要な物資。
コンテナの中のから基本装備として対エイリアン用ライフル一丁と対エイリアン用銃一丁が兵士たちに配られた。また個人が希望する装備も。
エリスも装備を受け取った。エイリアンを倒すための武器を。
訓練やシミュレーションとは違い、最初から実戦で使用する目的で武器を手に取る。
対エイリアン用ライフルは大型なだけあり、その重量はかなりのもの。だからと言って重くて持てないのなら兵士にはなれはしない。
さらにエリスとダイアナとケイシーはスペリオル。力も強くなっているので重さなんてへっちゃら。それでも対エイリアン用ライフルの抱えている重み、引き金を引く重みは感じる。
背中に荷物を背負い、手には対エイリアン用ライフル、腰のホルスターには対エイリアン用銃を基本装備とした兵士たち。
宇宙戦艦から下ろされる大型装甲車。この大型装甲車は簡易基地としての役目もあり。
大型車を下ろしたの後、宇宙戦艦は飛び立つ。そのまま大気圏外で待機、帰還時に迎えに来る。
飛び立つ宇宙戦艦は三機の飛行物体を残していった。円盤状の形を見たエリスは思わず、
「UFOだ」
と言ってしまった。そう前世でネットなとで見たUFOそっくりなのだ。
「UFO? 何それ」
首を傾げるダイアナ。UFO、未確認飛行物体や空飛ぶ円盤は地球での呼び名。
「気にしないで独り言だから」
ここは誤魔化しておくしかなし。
「あれは飛行サポート機だな」
ケイシーが教える。
そう言えば軍学校の授業で学んでいたことをエリスは思い出す。偵察や攻撃をしてくれる無人の飛行サポート機。
『UFOじゃなくて、ドローン……。もしかして地球で目撃されているUFOの正体ってこれなのかも』
心の中でそんなことを考える。
「さぁ、出発するぞ」
砂の惑星に降り立つ前にエイリアンのいる場所は把握している。トムの号令と共に対エイリアン部隊は出発。
空には三機の飛行サポート機。部隊の後方には大型装甲車。また飛行サポート機から発せられる電波によって部隊にはステルス効果が付与され、かなり接近しない限りエイリアンに気付かれにくい。
プロの軍人の集まりだけあり、部隊の移動速度は速い。半日もかけずにエイリアンの生息場所に到着。
「結構な数いるな……」
まずは指揮を任されているトムがヘルメットの望遠機能でエイリアンの群れを確認。
続いて部隊のみんなも確認する。
「まとまってくれているとは有り難い。一気に殲滅できるぜ」
兵士の一人が言う、ヘルメットで見えないが唇の両端は吊り上がっていた。
エリスもエイリアンの群れを確認、わらわらとまとまっているもののタイプ不明の大型のエイリアンの姿は見えない。
「タイプ不明の大型がいない」
エリスが指摘すると、トムも見てみる。
「確かに姿が見えないな」
トムに続いて兵士たちも周囲を調べてみても、タイプ不明の大型のエイリアンの姿はどこにもいない。
「隠れているとしたら……」
トムが周囲を見渡す。あるのは砂の山ばかり、隠れるような場所は見当たらない。あるとすれば一つだけ。
兵士たちの目が砂に向けられる。隠れる場所と言ったら、ここぐらいしか見当たらない。
「二機の飛行サポート機はエイリアンの群れへの一斉攻撃。残り一機と部隊はタイプ不明の大型のエイリアンへの攻撃態勢のまま待機」
トムの指示通り、二機の飛行サポート機から発射させた高出力のレーザーがエイリアンを次々と蒸発させていく。
エイリアンも口から火を吐き反撃を試みるものの、空中に浮遊している二機の飛行サポート機には届かず。二機の飛行サポート機はエイリアンの攻撃を計算し、届かない位置にいる。
一機の飛行サポート機の放つ電波のステルス効果で部隊はエイリアンに認識されておらず。
容赦なしの飛行サポート機の攻撃に、数を減らしていくエイリアンの群れ。
『なんか宇宙戦争で見たような、攻撃している側は火星人だけど』
駆逐されていくエイリアンを見て、エリスはそんなことをことを思った。思っていながらも、いつでも攻撃できる状態は崩さない。可愛いい見た目でも軍人なのだ。
群れていたエイリアン全体がほぼ灰と化した。
「まとまってくれたおかげで、俺たちには出番は無くて済みそうだな」
兵士の一人が軽口を叩く。
残るはタイプ不明の大型のエイリアン。二機の飛行サポート機と兵士たちは即時攻撃できる体制で待ち構えている。
いつもの声は聞こえなかった、それは宇宙の女神と融合したから。それでも解った、それが直感なのか能力なのかは解らないが。
「上だ!」
エリスは対エイリアン用ライフルを何もいないはずの空中に向かって撃つ。
空中に銃痕が生じたかと思うと景色が歪み、そこにタイプ不明の大型のエイリアンの姿が現る。
敵は砂の中に潜んでいたのではなく、空中に隠れていたのだ。
「ステルスを使っていたたのは俺たちだけじゃなかったんだな」
明確な答えをケイシーが出す。タイプ不明の大型のエイリアンはステルスを使って、その巨体を隠していた。
存在自体は脅威でもエイリアンの知能は高くない。本来、ステルスを使って隠れるなんて知恵はないはず。
しかし、タイプ不明の大型のエイリアンはステルスを使って隠れていた。つい今しがた目の前で見たことを否定するような狭量な思想の奴はここには一人もいない。
「全員、回避体制を取れ」
トムの指示が轟く。何故、エイリアンがステルスを使っていたのか考えるのは後でいい、今は戦闘中なのだ。
タイプ不明の大型のエイリアンが地上目掛けて、落ちてくる。指示と同時に回避行動を取っていた兵士たち。
落ちてくるなり、タイプ不明の大型のエイリアンは周囲に砂を巻き上げる。
いち早く回避行動を取っていたことと、三機の飛行サポート機がバリアー展開してくれたおかげで兵士たちは砂の被害を受けず。
「一清掃射」
トムの命令は早い。兵士たちの行動も早い、すぐさま一清掃射。ほんの少しエリスもダイアナもケイシーが出遅れたのは初陣が故。
二機の飛行サポート機も発高出力のレーザー攻撃。
巻き上がる弾幕と砂でタイプ不明の大型のエイリアンの姿が見えなくなる。やったかとはエリスは言わない。言ってしまったら、やれていなくなるので。
巻き上がった弾幕が晴れた。そこには全身銃創だらけのタイプ不明の大型のエイリアンがいた、満身創痍のふらふら状態。
「止めを」
下されるトムの指示。兵士たちは対エイリアン用ライフルの照準をタイプ不明の大型のエイリアンに合わせる。
タイプ不明の大型のエイリアンの口が開いた。
「オ……オ・ズル・ナヨキ……」
唱えたのは治癒魔法の呪文。魔法はエルフの得意分野、とてもじゃないがエイリアンが魔法を使うことなんあり得ないどころか、喋る知恵さえないはず。
だが、目の前でエイリアンは確かに呪文を唱え、全身の銃創が治癒していっている。
魔法を使うエイリアン。普通では存在しない敵が現れた。どんな存在だろうが、やることは変わらない。
「一清掃射」
二度目の命令。兵士全員が対エイリアン用ライフルの引き金を引く。
「モル・カマデ・ベ」
またもエイリアンは呪文を唱えた。たちまち光の壁が張られ、対エイリアン用ライフルの弾丸を防ぐ。
間違いない、タイプ不明の大型のエイリアンは魔法を使う。
光の壁に防がれ、弾丸が一発も通らず。
掃射が止まったタイミングをタイプ不明の大型のエイリアンは見逃さない、その大きな体を振るって体当たりをかましてきた。
咄嗟に一機の飛行サポート機が動き、体当たりの直撃を受ける。
破壊され、墜落する飛行サポート機。すぐに兵士たちは対エイリアン用ライフルの攻撃を再開するものの、
「モル・カマデ・ベ」
光の壁で防がれてしまう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
気合を発し、ケイシーは巨大化。精霊殿の時は六メートルの大きさだったが、今回は十メートルの大きさ。大きくなった分、筋骨もさらに逞しくなっている。
今、着ている服はどんなサイズにも対応する伸縮自在の服なので巨大化しても破れない。
「どっせぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
しっかりと踏み込み、十メートル巨人の体重を乗せた鉄拳を光の壁に打ち込む。
対エイリアン用ライフルの弾丸でも破れなかった光の壁をケイシーの鉄拳は破った。
そのままタイプ不明の大型のエイリアンを掴み上げると、上空へとぶん投げる。
宇宙には様々な星が存在する。途轍もなく熱い星もあれば途轍もなく寒い星ある。例えばOGLE-2005-BLG-390Lbと言う太陽系外惑星の摂氏は約-220℃。未来から来た液体金属で出来たサイボーグを瞬間冷凍させた液体窒素でも沸点は-196℃。
瞬時にタイプ不明の大型のエイリアンは凍り付く。
そこへダイアナのサイレントの力を込めたボイスをぶっ放す。音が力となり、タイプ不明の大型のエイリアンを直撃。
凍結されたタイプ不明の大型のエイリアンは木っ端みじんに砕け散り、まるで雪のように砂漠へ降り注ぐ。
「連携、見事」
しっかりと褒めるトム。エリスとダイアナとケイシーが培ってきた仲は伊達ではなし、何も語らずともお互いの考えが解る。正しく以心電信。
飛行サポート機が二機が周囲を飛び回り、エイリアンが残っていないか探索。
しばらく飛び回って探索しても、エイリアンの姿は確認されず。どうやら、見逃したエイリアンはいない様子。
「飛行サポート機を一機失ったが、未知のエイリアンと戦って死者が出なかったのは幸いだな」
トムの言葉には兵士たちの労いの意味も含まれている。数人のけが人はいるものの、重傷でなく戦闘には差しさわりは無し。
「これも君たちのおかけだ。ありがとう」
トムはエリスとダイアナとケイシーにお辞儀をした。続いて兵士たちも。
プロの軍人になってもこんなに褒められるのは気恥ずかしい、しかも初陣なので尚更。
「この星での任務は終了した。撤収作業にかかれ」
締めくくりのトムの指示。そのまま迎えに来た宇宙戦艦で帰ればいいというものではない。星に住んでいるものたちに迷惑がかからないようにする必要がある。最悪、残して言ったもので生態系を破壊してしまう可能性も。地球で言うところの飛ぶ鳥跡を濁さず。
慣れているのか兵士たちは効率よく撤収作業を始める。エリスとダイアナとケイシーは出遅れてしまう。
撤収作業の訓練はやってはいるが、初めての本番ではぎこちなさが出てしまった。回数を重ねれば慣れてくるだろうが。
薬莢や墜落した飛行サポート機の残骸やコンテナなど、環境に悪影響を与える物は一片たりとも残らず回収してエリスたちは迎えに来た宇宙戦艦に乗る。
宇宙戦艦に戻った後、まずはシャワーで戦闘の汚れと汗と疲れを洗い流す。エリスが入ったのは女性用。気恥ずかしさはあるものの、逞しいプロの軍人たちの中、女性の体でシャワーを浴びるなんてことは流石に出来ない。
元日本人してはゆっくりお風呂に浸かりたいが、戦艦には設置されていないので帰った後の楽しみに取っておく。
シャワーの次は食事、エリスとダイアナとケイシーは食堂へ。
簡易だが、栄養もスタミナもたっぷりの料理。体力回復にはもってこい。
いただきますと三人は食べ始める。
「軍学校に入る前だったら、多分、飯は食べられなかっただろうな」
「多分、私もそう」
「僕も」
初陣、それもあんな異様な敵との戦闘。些細なミスでも死に繋がるのが戦場。並の精神なら、碌に食事も喉を通らないだろう。
食べれるときに食べて寝れるときに寝る。命がけの戦闘の後でもそれが出来てこそ、エイリアンと戦うプロフェショナル。
「ここの飯も旨いよな」
「「うん」」
ケイシーにエリスもダイアナも同意。美味しい料理が普通に食べれる、とてもいい環境。誰も彼もがエイリアンに怯えることなく、そんな環境で過ごせるようにするのが自分たちの役目。
食事を終え、お茶を飲んでいると、
「あっ」
唐突にエリスは思い出した。どこかで見たような気がしたタイプ不明の大型のエイリアンの顔。その顔をどこで見たのかを。
「あのタイプ不明の大型のエイリアンの顔、フィリップの取り巻きの一人だ」
軍学校時代、何度もしつこく絡んできたフィリップと取り巻きたち。その一人の面影がのタイプ不明の大型のエイリアンの顔にはあった。
えっと言ってからダイアナとケイシーは記憶を弄る、思い出したくない連中だが、それでも思い出す。
フィリップの取り巻き一人一人にタイプ不明の大型のエイリアンの顔を当てはめて行くと、一人当てはまる奴がいた。
「言われた見れば確かに……」
「ああ、似ているな」
ダイアナとケイシーも似ていること認識。
「何で似ているんだ?」
ケイシーが口にした浮かび上がった疑問。当然、エリスもダイアナも同じ疑問を持つ。
偶然似ているだけなのか、それとも何か理由があるのか。もしかしたら、タイプ不明の大型のエイリアンが魔法を使ったことに関係しているかも。
嫌な予感がしてならないエリス。
「取り合えず、トム艦長に報告しよう」
ここで考えていても答えは出ない、この件は自分ただけで答えを出してはならないと判断した。
報告を聞いたトム。彼はエリスの報告を新人の戯言と、無視するような無能ではない。
何より、エリスは軍学校を首席で卒業した優秀な人物。そのことをトムは深く理解している。
「解った、調べてみよう」
タイプ不明の大型のエイリアンは凍って粉々に砕けてしまったが、しっかりと録画している。
すぐに空中にモニターを浮かび上がらせ、映像で確認してみることに。
モニターに映し出されたタイプ不明の大型のエイリアン、顔の部分をアップ。
「確かにこの顔、所々、エルフの特徴が見受けられる」
特にエルフの特徴である尖った耳、タイプ不明の大型のエイリアンの耳も尖っていた。
「ただ君の言っている人物と似ているかどうかは、私には判断できない。このことは帰ってから調べてみることにする」
トムはフィリップの取り巻きにあったことがなく、どんな顔をしているのか解らないのだ。ここは多くの者たちと検証する必要あり。
「このことは他言無用に」
「はい、解っています」
下手に話せば皆に動揺を起こしかねない。ダイアナとケイシーは信頼しているからこそ話した。
「もう戻りなさい」
エリスは一礼してから、退室。
エリスが退室した後もトムは独自で調べる。
「……サンプルを採っておかなかったことが悔やまれるな」
サンプルがあれば何かわかったかもしれないがタイプ不明の大型のエイリアンは粉々に砕け散り、砂漠の砂と混じり合ってしまった。今から採取するのは不可能だろう。
ラースの大気圏外に浮かぶ宇宙港に宇宙戦艦が寄港する。
降りてくる兵士の中にエリスとダイアナとケイシーの姿あり。
いろいろもやもやした部分はあるものの、一応初陣は勝利。
兵士の中には一杯飲みに酒場や行く者たちもいるが、お酒を飲まないエリスとダイアナとケイシーは酒場へは行かず。
「腹減ったし、何か美味いもんでも食いに行こうぜ」
二つ返事でエリスとダイアナは受け、三人で食堂へ。
夕食を食べている途中、読んでいたミステリー小説の謎が解けたことがあり、その経験を参考にしました。




