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宇宙(そら)の女神~転生先は異世界ではなく 異星でした~  作者: 三毛猫乃観魂


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第三十一章 卒業後……

 卒業式から帰ってきた後の話。


「何故、私が卒業生代表に選ばれないのだ! 私は優越種であるエルフであり、あいつは劣等種のヒューマンであるのに!」

 ブツブツと文句を言いながら、道を歩くフィリップ。

 最も優れた種族であるはずのエルフである自分がスペリオルになれなかったというのに、ヒューマンであるエリスがスペリオルになり、あまつさえ宇宙の女神と融合したことをフィリップは認めることも許すことも出来ない。

 卒業生代表の演説中、何度も抗議をしてやろうと思ったが、教師たちが睨みを聞かせいた。特にローズモンドに関しては邪魔したら命の保証はないぞとの殺気すら感じ、全く動くことかできず。

 皆かがエリスに拍手を送る中、フィリップは憎悪を膨れ上がらせていた。


 今も頭の中で満タンになっている怒りと憤りを解消できないため、帰る気も起きず人気(ひとけ)のない道を行ったり来たり。

「どうして、私が選ばれない認められないのだ。この私をないがしろにする世界など、間違っている。何故、誰もそのことが解らないのだ!」

【悔しいか?】

 どこからか声がする。禍々しい闇を濃縮したような声が。

「誰だ!」

【憎いか?】

「どこの誰だ、この私を誰だと思っている。最も優れた種族であるエルフのフィリップだぞ!」

 怒鳴りつけても誰も出てこない。それどころか周囲を見回しても誰の姿も見えない。

【力が欲しいか?】

 ここでやっとフィリップは声が直接頭の中に聞こえていることに気が付く。

【力が欲しいか?】

 再度、声は聞いてきた。考える必要など、今のフィリップには無かった。

「当然だ、私は力が欲しい。何人も上回る力が!」

【ならば汝、我を受け入れよ】

 途端、体に“何か”が入り込んできた。

 得体のしれない、凍えるよりも冷たい畏怖なる“何か”と融合していく。

 それは深淵の闇よりも尚も暗い、究極の闇そのものになるような、究極の闇と一体化する。そんな感覚がフィリップを支配していった……。



    ☆



 女の子になってしまったエリスに対し、両親は性別が変わったところで子供には変わらないと、あっさりと受け入れてくれた。

 ダイアナとケイシーに続き、両親の気持ちをエリスはとっても嬉しく思う。

 ただシャーロットから、女の子の服の着かたどころか下着の着け方。果ては女の子の生活の仕方を教えてあげようかと言われた際、ダイアナに教えてもらったと遠慮した。

 幾らなんでも十五歳にもなって、母親に女の子の生活の仕方を教えてもらうのは体は女の子でも男の子の身として恥ずかしすぎる。前世の年齢も合わせれば尚更。


 夕食は誕生日パーティかと思う程の料理が並ぶ。これらの料理の数々は卒業祝いと同時に……。

「さぁ、食事を始めよう」

 アランの一言で食事が始まる。


 夕食を終え、一息ついた。

「エリス、言っておきたいことがある」

 夕食を食べていた時とは打って変わり、真剣そのものの眼差しで見てくる。

「軍学校を首席で卒業し、スペリオルになったこと立派な戦士になったことは嬉しく喜ばしい、武勲を立てれば誇りに思う」

 おもむろに話を続ける。

「だが一番に願うことはお前が無事に五体満足で帰ってくること。例え武人の家の当主であってもそれが父としての本音なんだ」

 それが父親としての一番の思い。父親だけでなく母親のシャーロットも思いは変わらない。

 今日の料理はそんな両親の気持ちの表れ。

「ありがとう」

 両親の気持ちに、エリスも気持ちで答えた。


 就寝の時間、ベットに寝っ転がり天井を見る。白い天井、その遥か上には宇宙がある。

 フェガヌの一件以来、大切な人たちを守る力が欲しいとがむしゃらにやってきた。そして“力”を手にした、宇宙の女神の力を。

 手を上してみると、宇宙に手が届きそうな気がしてくる。否、本当に届くのだろう、論ではなく、感覚で解るのだ。

 この身に宿った宇宙の女神。エリスは大切な人たちを守れる力が欲しいと強くなりたいと思って来た。

 そして実際に力を手にして強くなった。力と強さが手に入ったからと言って慢心する心算などなく、完全に使いこなしてみせると心の中で誓う。


 早朝、目を覚ましたエリスは顔を洗ってから、トレーニングウェアに着替え外に出る。

 卒業したと言っても鍛錬は怠ることはしない。日々の積み重ねが大切なのは今も変わらず。

 まずは基礎トレーニングで体を解し、10㎞走る。

「父さんも付き合おう」

 アランもトレーニングウェアを着て出てきた。

 父親が柔軟体操を終えるのを待ち、エリスは一緒に走り出す。


 一緒に走り出す二人。元軍人で今も衰えていない体力、軍学校でみっちり鍛え上げたエリス。バランスの取れたペースを維持しながら走っていく。

 女の子になったエリス、プロポーションもいい。走る姿は絵になり魅惑的でもあり。

 早朝のランニングをやっているのはアランとエリスだけではない、他にも走っている人たちはいる。

 トレーニングウェア姿で走ってる美少女。年配者も若者も男子ならば、ついつい見てしまう。中には女子さえも。

 美少女でも中身は男の子、周囲の視線などに全く気に留めず。

「……」

 無言でアランは周囲の視線の盾になるように走る、父親の気遣い。

「?」

 そんな気遣いに元は息子は気が付かず、走り続ける。


 帰ってからは順番にシャワーを浴びて汗を流した後、親子揃って食堂へ。

 母親の作ってくれた朝食を食べ、エリスは自室に戻って読書していると、ヘアのドアがノックされた。

 出るとシャーロットの姿があった。

「これから買い物に行くんだけど、一緒に来ない」

 そう言えば最近一緒に買い物に行っていなかったなと、久しぶりに行くのもいいかと考え、

「解った、準備するから少し待ってて」

 誘いを受けた。それが母親の罠とも気が付かずに……。


 準備を終えて出てきたエリスの姿を見たシャーロット、

「あら、男の子用の服なのね」

 と上から下まで見て一言。

「そうだよ、見た目がどうであれ、僕は男の子だからね。そもそも、女の子の服なんか持っていないし」

 シャーロットが不敵に微笑んだのを見落としてしまったエリス。


 列車で都心部のデパートに来たエリスとシャーロット。買い物に付き合ってほしいと頼まれ、快く引き受けた。

 荷物持ちでもするのかと思っていたら、シャーロットが入っていったのは女性用の服売り場。

 エリスに嫌な予感が横切る。

 いろんな服を見て回っているシャーロット。その服の全てが彼女のサイズではない。

 深まる嫌な予感。

「これとこれ、これも似合いそうね」

 嫌な予感が嫌な確信へと成長していく。

「早速、試着しましょ、エリス」

 嫌な予感程よく当たるは転生先でも健在だった。

 笑顔で手招きしているシャーロット。

『体は女の子になちゃったけど、心は男の子なんだよ。女物の服なんて着られないよ』

 と耳打ち。神殿で着たのはやむにやまれぬから。

『何を言っているの、体は女の子なのだから女物の服を着なくちゃ。それともこの先、ずっと男物の服を着続けるつものなの』

 と耳打ちを返される。

 全く持ってその通りである。この先のこと、さらに宇宙の女神と融合していることも考えれば男物の服を着続けることは難しいだろう。

 その上、シャーロットの押しの強さにエリスはあらがえない。

「……解ったよ、母さん」

 時には諦めることも必要なんだなと、つくづく思い知らされながら試着室へ。


 試着室に入ったエリス。

「ブラジャーの着け方はね」

 外から下着の着け方からスカートの履き方までご丁寧に教えてくれる。

 ちゃんとやらないと試着室に入って手伝おうとするのは目に見えていた。それだけはどうしても避けたかったので、がんばって女物の服を着こなして見せた。

 シャーロットの選んでくれた服はどれもこれも、エリスによく似合っていた。流石は母親と言ったところ。

「可愛いわよ、エリス」

 傍から見れば、仲のいい母と娘。

 神殿の時もそうであったが、女性物の下着をつけ女性物の服を着るのは気恥ずかしくて仕方がない。でも鏡に映るスカート姿は不覚にも可愛いと思ってしまった。

 シャーロットのセンスは間違いなし。


 買い物を済ませてデパートを出る。エリスの持っている荷物の中身の大半はエリスの服、女性物だけど。

 どんな量の荷物だろうが服ならば軽い、今のエリスなら車の一台ぐらい、簡単に持ち上げられるが。

「いい時間だから、何処かでお昼にしましょう」

 二人で手ごろな店に入る。


 昼食の後、店を出たシャーロットとエリス。

「さてお化粧品を買いに行きましょうか」

 とんでもないことを耳にしたエリス。

「それって、もしかして僕の用、お母さんのじゃなくて」

 一部の望みに賭けて聞いてみるが……。

「何いているの、エリスのお化粧品のことよ」

 解ってはいても聞きたくはなかった答え。

「それは嫌だ。お化粧なんて絶対に嫌だ」

 思いっきり抗議。譲歩するのは下着が限界。

「お化粧した方が奇麗になれるわよ」

「今のままで十分だよ、僕は軍人なんだから」

 軍学校を首席で卒業したエリス。まだ正式になってはいないが、じきに軍人になる。

 エリスの顔をじっと見るシャーロット。

「うん、そうね、お化粧しなくても十分に奇麗なだわ」

 どうやら、お化粧はしなくて済みそうなので、エリスはほっと胸を撫でおろす。

「でもお肌のお手入れは必要ね、洗顔料に化粧水にローション、後は乳液も」

 笑顔のシャーロットに手を引かれるエリス。手を振りほどいて逃げようと思えば逃げれるのだが、シャーロットにはそれをさせない“力”があった。

 母は強しと言う事なのだろうか……。


 テキパキと丁寧かつ的確に洗顔料や化粧水やローションや乳液の使い方をシャーロットは教える。

 エリスも優秀であり、飲み込みも良い。したがって短時間でスキンケアをマスターしてしまった。


 スキンケアセットを買い終え、店を出てくるシャーロットとエリス。

 本日の買い物はこれで終了。

『なんか疲れた……』

 軍学校を首席で卒業しても疲れる時には疲れる、身体以外の所で。



 買い物から帰ってきたエリス。

 ベットの上に並べられた女物の服にスキンケアセット。これを使うことになると思うと、ついため息が出る。ため息を吐くと幸せが逃げると言うが、こればかりは仕方がない。

 胸ポケットに入れたカード型スマホが振動する。出てみると、相手はダイアナ。

「明日、私とエリスとケイシー三人で会わない。話したいこともあるし。時間があればでいいんだけど」

 そう言えば卒業式以来、直接ダイアナにもケイシーにも会っていない。久しぶりに会うのもいいし、本日の買い物の息抜きもしたい。

「うん、僕も行くよ」



 翌朝、身支度を整えて約束の場所へ向かうエリス。着ている服は男物、やはり女物の服を着るのには抵抗がある。


 待ち合わせの場所にエリスが到着。森林や池のあり、豊かな自然が心地よい。

 ラースの都心部には高いビルが立ち並ぶ街並みだけではなく、こんな場所も造られている。

「エリス」

 噴水のある池の傍で手を振っているダイアナ、隣にはケイシーが座っている。

「ごめん、待った」

 と駆け寄って来るエリスの姿を見たケイシーは不覚にもときめいてしまった。『ごめん、待った』のセリフが直撃した模様。

 相手は元は男。ケイシーは雑念を払うため、心中で難しい数式を思い浮かべる。

 そんな内情を知らないエリスとダイアナは、とりあえず近くの自動販売機で飲み物を買って一息つく。

 本題はここから。

「俺たちは軍学校を卒業した。いずれ軍人として戦場に行くことになるだろう」

 その事はエリスもダイアナも解っている。卒業前に戦場を経験してはいるが、あの時は戦艦内にいたので、どちらかと言えば見学に近い。

 だが軍人ともなればエイリアンと実際に戦うことになる。今までと違って、本物の命の保証のない世界。

 エリスもダイアナもケイシーもその覚悟を持って軍人になった。

「覚悟して軍人になったからといっても、簡単にくたばる気はないがな」

 それはエリスもダイアナも同感。

 命の保証のない世界とはいえ、生きて無事でいたいという思いは三人とも強い。最もスペリオルになったからには生命力も強靭になっているが。

「軍学校でも実戦経験でも、いつも俺たちは一緒だった」

 入学した時から、エリスとダイアナとケイシーは一緒だった。

「だからな、これからも一緒でいればどんな過酷な場所だろうが生き残れる気がするんだ」

 ここで少しケイシーは恥ずかしそうな表情になるが、そのまま話を続ける。

「一緒に戦ってほしい」

 エリスとダイアナの答えは決まっている。ケイシーが言いださなければ自分たちの方から言っていた。

「ケイシー、一緒に戦おう」

「私も一緒だよ」

 築かれた三人の絆は卒業したぐらいでは壊れやしない。







 家族と友人の関係は変わらず。

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