第二十九章 スペリオルたち、ラースに帰る
エリスたちがヴァルミネを発ちます。
残っていた生徒たちも集合。これで今年“儀式”に参加した全生徒はヴァルミネを離れることになる。
スペリオルたちは他の徒たちを見下すことなく、軍学校の仲間として宇宙船へ搭乗。そもそも、スペリオルになったからと言って他者を見下すような輩はスペリオルになれはしない。精霊に選ばれるには心の良さも必要。
帰りの宇宙船、エリスとダイアナとは隣でケイシーは後ろの席。本人たちの希望を通ししてくれた模様。
ヴァルミネに来るときは男の子だったのに、今はスペリオルで女の子。そう考えると、何か感慨深いものがある。
やがて宇宙船は進みだし、飛び立つ。
宇宙船が飛び立ったころは生徒たちも雑談したり、ゲームをしたりおやつを食べたりと楽しんでいたが、ワープに入るころには眠りに落ちていき、やがて殆どの生徒が眠りに落ちる。
殆どの生徒が眠る中、数少ない起きている生徒の中にケイシーもいた。
ふと、前の席を見ればエリスとダイアナが寄り添うようにして眠っている。
そんな二人を見ているうち、
「何か癒されるな」
自然とケイシーは笑顔になっていた。
ラースに到着した宇宙船。欠伸をしながらエリスはダイアナと一緒に降り、ケイシーは背伸び。
スペリオルになった生徒となれなかった生徒は、ここで別れる。
なれなかった生徒はそのまま帰るか、適性があって希望する者はヴァルミネで受けなかったスチールとビーストの“処置”の手続きに向かう。
儀式直後は迷っていても、ラースに帰るまでに決心した生徒もいる。
「スペリオルになった者は、私に着いて来い」
ローズモンド共に講堂へ。
講堂には校長のエックハルトと教頭のボドワンが待ってた。
「まずはスペリオルになったことを祝福いたします」
いつも変わらない優しい顔で会釈。隣にいたボドワンもふた呼吸の間を置いて会釈する。
ローズモンドの会釈に続き、生徒たちも姿勢を正しお辞儀。
「皆さんは大きな“力”を得ました。その“力”を使い道を強要するつもりはありません。その“力”はあなたたち自身の“力”。どう使うのかはあなたたち自身の自由です」
顔を上げ、優しい顔ままで語る。
「ですがこれだけはしっかりと心にとどめて置いてください。“力”持つと言う事は“力”に大して責任も持つと言う事を。“力”が大きければ大きい程、責任も大きくなると言う事を」
エックハルトの話はエリスとダイアナとケイシー、スペリオルになった生徒たちの心にしみ込んでいく。
生徒たちはエックハルトの言葉を深く受け止めた。“力”を得たからと言って、それに溺れてはいけない。
エリスが融合したのは“宇宙の女神”。どれ程の“力”をあるのか、どんな“力”を持っているのか、まだ完全に把握して切れておらず。
「ただ“力”を恐れる必要はありません。何故なら、その“力”はあなたたちの一部なのですから。そのことを理解していれば、おのずと道は見えてくるでしょう」
誰一人として、聞き流している生徒はいない、真剣に聞いている。みんな、エリスが抱いていた同じ思いを抱いていた。
エックハルトの話はスペリオルになった生徒たちに、行くべき方向を指示してくれた。そんな気がしたのは全員同じ。
「皆様に宇宙の女神のご加護があらんことを」
入学式の時にもした祈り。
“宇宙の女神”はエリスと融合した。手にした“力”でみんなを護れるなら、惜しむことなく使いたい。
そのために“力”を望んだ。それがエリスのやるべきこと、そう確信している。
講堂を出た後、スペリオルになった生徒たちは解散。
「凄い、みんなスペリオルになれたんだ」
手を振りながら、駆け寄って来るギード。エリスとダイアナとケイシーが帰って来ると聞いて会いに来てくれた。
「えっ!」
性別が変わったエリスを初めて見てギードは硬直。
「……確かにスペリオルになった際、体が変化することがあると聞いたことはあるけど……」
硬直が解けたギードは三人を見る。
少し大きくなり、逞しくなったケイシー。少し髪が青みがかり、瞳は緑みを帯びたダイアナ。
エリスの変化は少しと言っていいのだろうか? 性別が変わってしまっているのだから……。それも、元々が可愛い顔立ちだったので美少女と言っても過言無しのエリス。
この先、どう対応すればいいのかギードが思い悩んでいると、
「体は女の子になっても中身は変わっていないから、今まで通りでいいよ」
ギードの心の内を察したエリス。この時、見せたのは以前とは変わらない笑顔。その笑顔に嘘偽りは微塵も存在しておらず。
「これまでと変わりなく、君たちの機体を整備させてもらうよ」
それぞれの手を出し、それぞれ握手を交わす。
ラースに帰ってきたした。




