第二十八章 下山したよ
精霊殿での特訓が終わったエリスたち。
個々の特訓を受けた全員がスペリオルの“力”を使いこなせるようになり、鍛錬が終了。
精霊殿では数か月は過ごしていたのに、神官の言った通りに外では数日しかたっていなかった。
スペリオルになった生徒たち十二人は山を下りる。行きは途中で一泊したが、スペリオルになったことでどんな難所も難なく乗り越えて半日もかけずに下山。
ホテルに戻ってきたエリスたち。既にヴァルミネを発った生徒もいるが、待っていていてくれた生徒たちもいた。
スペリオルの帰還に大半の生徒は歓迎と憧れの眼差しで出迎える。
その中には探すまでも無く、フィリップと取り巻きの姿はなく、ヴァルミネを発った後。
「皆、見違えるほどに成長したな」
出迎えてくれたローズモンド。言ったことはお世辞ではない、スペリオルになったことで体格の変化や雰囲気が立派になっている。さらに鍛錬により、磨かれことでさらに立派度が増していた。
ローズモンドの止まった視線の先にいたのはエリス。
エリスは体格の変化どころではない、性別変わり女の子になってしまっているのだ。
「まぁ、そのなんだ、相談があるなら何でも乗ってやる」
教師であると同時に女性でもある。いろいろアドバイスできることもあるだろう。
「その必要はありません」
ドーンな感じで言い放つダイアナ。
「エリスにいろいろ教えるのは私の役目です」
そこには一歩も引くつもりはないぞとの意思が込められていた。
エリスとダイアナは幼馴染、彼女ならエリスも気兼ねなく接することが出来る。そうローズモンドは判断。
「そうだな、いろいろと教えてやるといい」
ローズモンドはダイアナに任せることにした。
「私が色々と教えてあげるからね、エリス」
エリスの手を取るダイアナの目が輝いているのは気のせいではない。
帰ってきたスペリオルたちも解散となり、それぞれの宿泊している部屋に向かおうとした。
エリスとケイシーは同じ部屋。そのまま一緒に向かおうとした矢先、ダイアナはエリスの肩を掴んで、
「どこへ行くつもりなの?」
と止めた。
「部屋だけど」
何の気兼ねも無く、普通に答える。
「エリス、今の自分の体のこと、解っている?」
「あっ」
そうである。今、エリスの体は女の子になっているのだ。ケイシーは男の子、つまりはこのまま部屋に行けば男女が同じ部屋に泊まることになるのである。
「あなたたち、一緒の部屋で寝るつもりなの?」
云われてケイシーも自覚する。男の子だった時から、あんなに可愛かったのだ。女の子になったエリスを横にして、果たして理性を保つことが出来るのだろうか……。
「今日は俺一人で寝ることにするよ」
はっきり言って理性を保つ自信の無いケイシーはエリスをダイアナに託すことにした。
「一緒の部屋で寝ようね、エリス」
有無を言わせず腕を掴んで引っ張っていく、ダイアナは内心勝利の雄叫びを上げていた。
ほぼ連行される形でダイアナの部屋に来たエリス。
意気揚々と服を脱ぎ始めるダイアナ。
「ダ、ダイアナ、何してるんだよ」
顔を反らし、慌てふためく。
「シャワーを浴びるのよ」
それが何か? 的な感じで返答。
「僕がいるんだよ」
今、ここに自分がいることを主張。子供の頃は一緒にお風呂に入ったことはあることはあるのだが、子供の頃は子供の頃なのだ。
「もう女の子同士なんだから、気にする必要は無いでしょ。エリスも早く準備しなさい」
どうやら、シャワーへは一緒に入るつもりらしい。
確かに女の子になったとはいえ、気持ちの問題がある。
「エリス、女の子の体の洗い方解るの? ネットで調べただけでは解らないこともあるのよ」
気持ちがどうであれ、女の子になったからにはこの体で生活しなければならない。色々教えてもらうには勝手知ったる仲の方がいい。
それならばダイアナ以上のうってつけはいないだろう。
「……解った一緒に入ろう」
その選択しかない。少し恥ずかしそうにしながら、エリスは服を脱ぎ始める。
シャワールームに入るエリスとダイアナ。
気恥ずかしいことこの上ないエリスが顔を背けていると、
「顔を背けていたら、体の洗い方を教えられないでしょ」
おっしゃる通り。でもダイアナは気恥ずかしくないのだろうか? それどころか嬉しそうですらある。
恥ずかしさを押し殺し、エリスは正面を向く。
生まれたままの姿のダイアナ。子供の頃に比べ、成長して女らしくなっている体。
押し殺した恥ずかしさ再び復活しようとした時、ダイアナがしげしげとエリスの体を見ていた。
「何か私より、プロポーション良くない? うん、間違いない、確実に私より良いプロポーションしているわよ、エリス」
そんなこと言われても全然解らない。前世を含めて女性の裸なんて家族と子供の頃のダイアナぐらいしかない。
その手の本やゲームや動画なら前世で見たことはあるが、二次元とリアルではまるで違う。
しかし、ダイアナは容赦しない。
「この見事なプロポーションの体。綺麗に洗う方法、私が教えてあげるからね、エリス」
舌なめずりしそうな気持を押さえ、ボディスポンジを手に取るダイアナ。
風呂上り、パジャマ姿のエリスはベットの上でぐったりしていた。
「お風呂はリラックスするためのものなのに、何でこんなに疲れるんだよ」
エリスとは対照的にダイアナは元気いっぱい、ほくほく状態。
「これからも色んなことを教えるから、頑張ろうねエリス」
これから覚えることは沢山ある。これからも頑張らなくてはならないことが沢山ある。
「うん、一緒に頑張ろう、ダイアナ……」
そう言われたダイアナの嬉しい気分は爆上がり。
「そうよね、エリス」
声をかけようとしたら、ベットの上でエリスは寝息を立てていた。
「女の子になっても、寝顔は可愛いままなんだね」
そっと触れてみても起きる気配はない、それほどまでに深く眠っている。余程、疲れたのだろう。
「宇宙の女神と融合したからと言っても、私にとってはエリスはエリス。それを変わらないからね」
エリスの頭をそっと撫ぜる。
ダイアナ先生。




