第二十三章 不安
始まりは一家団欒。
最終順位一位になったエリスを両親は祝福してくれた。
今夜はそれを祝うパーティ。
テーブルに並べられる料理の数々。食べてみて味で分かった。料理人たちだけに任せたのではなく、シャーロット自身が腕を振るってくれたことに。
「おめでとう、エリス」
褒めてくれるシャーロット。母親のお祝いの証の料理。
「ありがとう、母さん」
素直に気持ちで答える。
「よくやったといいたいが、本番はこれからだぞ。学生と本物は違う。学生気分では戦場では生き残れない」
厳しくとも実のあるアランの言葉。流石は父親であり、元軍人。戦場を生き抜いた戦士から語られる言葉。
「うん、解っているよ、父さん」
守りたいものを守る、そのためにエリスは戦士を志した。目的達成まで、あと少しの所まで来ている。
ここまで頑張ってきたエリス。ここまで頑張っても、まだ心の中で燻ったいる不安。
そんなエリスを見ているアラン。
「エリス」
食事の後、アランに呼び止められる。
「久しぶりに稽古をつけてやろうではないか、どのぐらい腕が上がったか見てみたいしな」
軍学校に入るまでは、毎日のように父親と特訓をしていた。
「はい、解りました」
二人で庭に出る。
アランとエリスは庭に出て、特訓を開始。
以前に受けていた内容に比べ、随分と厳しくなっている。これは軍学校でエリスが成長しているのを見越してのこと。
ひとしきりの特訓が終わって庭の片隅に座るアランとエリス、父と子。
「何か聞きたいことがあるんだろう」
その事も見越していた。こんなところはやはり父親である。
「卒業をするときは“処置”を受けることなるかもしれない。“処置”を受けたら、僕は僕のままでいられるんだろうか……」
サイボーグ化のスチールも肉体強化改造施術のビーストも精霊と融合するスペリオルも、これまでの自分とは違うものになっしまうのでないか……。
一度、転生と言う大技をやった身。転生したことで以前の自分とは違う体となり、住んでいる星さえも変わってしまった。
今、住んでいる場所も馴染んでいている。築いた関係も守りたいほどに大切。
だからこそ、卒業が迫ってきた今になって不安が出てきてしまった。
念入りに山登りの準備を進め、いざ、登ろうと麓に来て山を見た途端、その高さに怖気づいてしまう。例えればそんな感覚かも。
「そうか、お前でもそんな思いを抱くこともあるんだな」
楽し気でもあり親しげでもある顔になる、そんな中にも父親としての顔もあるアラン。
「実はな、父さんも軍学校卒業まじかの時、同じことを思ったんだぞ」
「えっ」
エリスは父親を尊敬しているし、強い人だとも思っている。そんな父親も迷いを抱いていたなんて。
エリスの心を見透かしたアランはにこやかな表情で話す。
「俺はスペリオルにもビーストも適性が無くてな。ノーマルかスチールと悩んだ結果、ノーマルを選んだんだ。まぁ、戦場で重傷を負い、サイボーグ処置を受けたんだがな」
右手の義手を動かしてみせる。
「結局のところ、自分自身で決断するしかないんだ。父さんもそうやって決めたんだぞ」
アランの言葉には諭すような導くような力があった。
「だが、これだけは覚えておけ、エリス。お前がノーマルを選ぼうかスチールになろうがビーストになろうがスペリオルになろうが、俺の息子であることは変わらない。それは母さんも一緒だぞ」
息子の頭を優しく撫ぜる。
心の中に渦巻いていた迷いが消えていく。つくづくエリスは思った。父親と母親の子供に生まれ、本当に良かったと。
楽しく過ごせた卒業まじかの家族との団欒。
アランもシャーロットも使用人たちも、いつもと変わらい態度でエリスに接してくれた。
アランの言う通り、エリスがスペリオルになってもビーストになってもスチールになっても、みんなの態度は変わらないだろう。
これなら、堂々と“処置”に臨める。
転生者でも“処置”で変わってしまうことに対する不安。




