第十八章 帰星
修学旅行から、帰ってきました。
修学旅行は終了。生徒たちは家族や友達にお土産を手渡し、土産話に花を咲かせる。
フィリップと取り巻きたちは修学旅行先に選んだのはレーフォ。それではただの里帰りではないかと突っ込まれそうだが、フィリップに言わせればエルフの星以外など旅行する価値などないとのこと。
かなりしつこく要請したらしく、学校側はしぶしぶ了承。
帰ってきたエリスは布に包まれていたリストバンドを取り出す。少し古くなっいるが状態は良い。大切にしていてくれたことが窺い知れる。
「これを両手両足につけて、毎日に鍛えていたな」
虚弱体質を克服するために始めた拳法の特訓。
早速、右手首に付けた見る。鉄が入っているのでズシリとした重さを感じる。
体は変わってもリストバンドから、受け取る感触は同じ。記憶の中に呼び起される前世の鍛錬の日々。
目を閉じて前世のことを思い出し、呼吸を整える。
突き出す右拳、続いて左拳も出そうとしたがリストバンドを着けていないのでバランスが悪い。
「……思い出は思い出なんだな」
リストバンドを外す。これは大切な宝物として置いておこう。
昼食の時間、今日も仲良くエリスとダイアナとケイシーは一緒に食べている最中。
「でも驚いたよな、生の魚を食べるなんて」
ふと、修学旅行の時に食べた刺身のことをケイシーは思い出す。
「それでいて美味しいだもの、本当に驚きだわ」
「また食いてえな」
思い出の味が口の中に広がっていく。
「どんな魚でも良いというわけじゃないみたいだよ、しっかりとした魚にちゃんとした調理をしないとダメだとか」
そうしないと食中毒を起こすし、下手すれば寄生虫にやられる。前世から知っていることをさも調べたようにエリスは話す。
「そうだよな、ラース(ここ)じゃ食えねぇよな」
残念がるケイシー、やはり刺身は地球の日本に行かないと食べられないのか。
「生の魚を食べるとは野蛮な奴らだな」
いつからいたのかフィリップと取り巻きたちが安定の嫌味を言ってきた。
「何でここにいるんだ? お前、専用の車で飯食ってんだろ」
「今日はお抱えのシェフがお休みなんでね、いたしかたがなく食堂に来たんだよ」
やお馴染みキザたらっしさで答えるフィリップ。
「本当に平気で生魚食べたようだね」
話を蒸し返してくる、軽蔑するような眼差しを向けて。
「しかも美味いなんて、君たちヒューマンの味覚はおかしいのではないのかね」
いつも隙あらばマウントを取ろうとしてくる。
日本のことも馬鹿にされ、エリスもかなりカチンときた。立ち上がって文句の一つでも言ってやろうとした矢先。
「君たちも刺身が美味いと解ったのかね」
そこに立っていたのは教頭のボドワン。
同じエルフの登場に身を正すフィリップと取り巻きたち。
「私も地球の日本に行ったことがあるんですよ。その際、刺身を口にしたことしてね、実に美味でしたよ」
勿論、地球に行った時には偽装装置の映像で耳を短く見せていたけど。
さっきまで刺身のことをディスっていたフィリップと取り巻きたちはばつが悪い。
「お寿司と言うのもかなり美味しいものでした。今度、日本に行く機会があるなら、食べてるとよい」
フィリップと取り巻きたちのことは気にせず話を続けるボドワン。
お寿司の話が出てエリスは思わず、そうですよねと同意しそうになって慌てて出そうになった言葉を飲み込む。
寿司を食べたことがあるのは前世の自分で今の自分は食べたことはない。
「寿司ってものあるのか、何か美味しそう名前だな」
まだ見ぬお寿司に思いを馳せるケイシー。
「本当にあの国の食べ物は美味しいものばかり、エリスが旅行先に選ぶだけはあるわね」
何気にダイアナはエリスを褒める。
「あの国は四季も美しいし、見どころも沢山ある。私のお気に入りなんだよ。日本を旅行先に選ぶとはいいセンスをしている」
とボドワンに褒められる。
実のところ日本を選択したのは懐かしくて行きたかったからだが、黙っていれば解らない。
楽しそうに話をしているエリスたちとボドワンを見ているうちに居心地が悪くなったフィリップと取り巻きたちは食堂を出て行く。
短めの話。




