第十七章 再会
修学旅行の続きになります。
翌日、向かった先は青々とした木々と花が立ち並ぶ日本庭園。
ただ並んでいるのではなく、美に従って並んでいる。細部まで手を抜かない庭師の腕の良さ。
「いろんな花が咲いているけど、どれもこれも奇麗ね」
「見たことのある植物や見たことのない植物もあるな」
日本庭園を見て回るダイアナとケイシー。
季節ごとに景色が変わるんだよと話さず、エリスは一緒に日本庭園見物を楽しむ。
エリスとダイアナとケイシー以外にも観光客が来ている、その中には外国の方も。そのおかげでエリスたちもあまり目立たない。
『思い出すな、家族と来た時のこと』
家族とはアランやシャーロットではなく、前世の家族のこと。
エリスは生まれ変わる前、家族とこの日本庭園へ来たことかある。ここを観光に選んだのはダイアナとケイシーに、この思い出の場所を見せてあげたかったから。
楽し気にエリスとダイアナとケイシーは日本庭園を散策。今日は快晴でとても心地よい。
ダイアナとケイシーと和気あいあいと、見て回っていたら……。
「!」
突然、立ち止まるエリス。その目からは堪えることの出来ない涙が零れ落る。
「どうしたの、エリス」
「エリス、大丈夫か」
突然、泣きだしたエリスを心配して声をかけてくるダイアナとケイシー。そんな二人に何も答えることの出来ないエリス。
観光客の中にいる老夫婦。二人のことをエリスはよく知っている。生まれ変わっても忘れたことなど、一度も無かった相手。
老夫婦は前世の両親、老けてはいたが見間違えるはずがない。
「どうかしましたか」
気が付いて老夫婦が近寄ってきた。
ますます涙が溢れ出てしまう。どうしたらいいのか解らずにダイアナとケイシーはオロオロ。
ようやく落ち着いたエリス、ハンカチで涙を拭く。
日本庭園の隅にある休憩場にエリスとダイアナとケイシー、老夫婦は来ていた。
「ありがとう、いろいろ思い出してしまって」
ハンカチを返す、嘘は行っていないが詳しいことも話せない。
「いろいろ思い出してですか……」
老夫婦の旦那さんがしみじみとした表情で日本庭園を見回す。
「ここはね、息子との思い出の場所なんですよ」
ハッとエリスは思い出す、今日は地球の月日で家族旅行をした日。前世の両親は思い出の場所に来ていたのだ。
眺めているうちに老夫婦の奥さんが泣き始め、旦那さんが寄り添い慰める。
そんな老夫婦を見てて、事情をダイアナとケイシーを察して詮索なんて野暮な真似はしない。
「……」
未だに自分のことを思ってることにエリスは、切なくとも嬉しい複雑な感情を抱く。
初めて老夫婦と出会った時は不意打ち状態だったことで泣くのを押さえられなかったが、今は堪えることが出来た。
軍学校で鍛えた心技体は伊達では無し。
涙を拭いた奥さん、旦那さんはエリスたちの方を見て。
「ここであったのも何かの縁。どうでしょう、一緒にお昼を食べに行きませんか」
エリスとダイアナとケイシーは顔を見合わせ、お互いの意思が同一と確認して老夫婦の誘いを受けた。
全員で日本庭園近くにある食堂に入る。エリスとダイアナは隣通しでその横にケイシー、向かいの席に老夫婦。
この店には生まれ変わる前に来たことがある、老夫婦と共に。
エリスにとって、思い出沢山な店。
運ばれてきた料理は地元の名物料理。名物に旨い物なしと聞いたことあるが海の幸と山の幸がバランスよく盛りつけられ、とても美味しい。
最初めて見る料理に戸惑いを見せていたものの、ダイアナとケイシーは一口食べてすぐに気に入った様子。
以前に来た時と変わらいいい味。再びこの味に出会えるなんて。
ニコニコ顔で料理を食べているエリスを老夫婦は見ていた。
ふと、視線が合う。
「失礼した、つい君を見ていると息子のことを思い出してしまってな」
「本当に全然見た目も年齢も違うのに、不思議とあの子と一緒にいる気がするの」
僕が生まれ変わった息子です、父さん母さん。とはいえるはずはない。その言葉をエリスは我慢、奥の奥に押し込める、思いと共に。
再会できて嬉しい反面、切なさも持つ。もう涙は零さない。軍学校で鍛えていたことへの感謝。
「すまん、辛気臭くなってしまったな。ご飯を続けよう」
旦那に促され、みんなは食事を続けた。
料理を食べ終えた後、みんな一緒に食堂を出る。
「今日は本当にありがとうございました」
お礼を述べてエリスはお辞儀。
「今日は私たちも楽しい思いをさせてもらいました」
奥さんも会釈。
「そうだ、これを君に渡しておこう」
旦那さんは懐から取り出した布に包まれた物をエリスに手渡す。
何だろうとダイアナとケイシーの見る中、包みを開く。
「これは……」
包みの中から出てきたのはリストバンド。エリスが前世で鍛錬の時に着けていたもの、つまり老夫婦にとってはは形見の品。
「これはいただけません」
その事を痛いほど解っているエリスはリストバンドを返そうとした。
形見の品とは解らずともダイアナとケイシーにもリストバンドが老夫婦に取って大切な品なの解る。それを会ったばかりのエリスに渡すなんて。
「いいんですよ、何故かそのリストバンドはあなたが持っている方がい。そんな気がするのです」
旦那さんに奥さんも同意。これ以上、返そうとすると老夫婦を悲しませてしまうだろう。
「これは大切にします」
受け取り、もう一度お辞儀。
エリスが受け取ったのを見て、それは本当に幸せそうな笑顔を見せる老夫婦。
宿に戻って夕食の後、
「ちょっと、外の空気を吸ってくる」
ダイアナとケイシーに断ってから外へ。
すっかり日は落ち、空には月と星が輝く。
テラスに来たエリスは周囲に誰もいないことを確かめ、ベンチに腰を下ろす。
懐から布に包まれたリストバンドを取り出した。
今日出会った前世の両親、思い浮かんでくる記憶と込み上げてくる感情。ここには誰もいない、零れ落ちる涙を我慢しない。
いきなり何者かが寄り添ってきた。驚いて見てみると、いつの間にか隣にダイアナが座っていた。
エリスが何かを言う前に、
「実地訓練の時、こうしてくれたでしょ」
故郷を失ったダイアナにエリスは寄り添ってくれた、今度はダイアナの番。
ダイアナはエリスが涙を流している理由を知らない。知らくてもいい、知らなくても寄り添うことはできるのだから。
思い出の再会。




