第十六章 修学旅行
エリスたちが修学旅行に行きます。
学校行事の一つ修学旅行。
この世界にも修学旅行があり、気が合う者同士でチームを組み、好きな旅行先を選べるシステムになっている。
迷うことなくエリスはチームメンバーにダイアナとケイシーを選択。2人とも大歓迎。
それどころか最初から、エリスが誘わなくてもダイアナもケイシーもエリスを誘うつもりでいた。
エリスは旅行先に“ある星”に行きたいと言ったところ、これも快くダイアナもケイシーも承諾してくれた。
ダイアナはエリスの行きたいところが私の行きたいところ、ケイシーはエリスの選んだ場所ならはずれはなし。そんな理由で。
エリスが選んだ旅行先は……。
「ここが地球の日本なのね」
物珍しそうに町を見るダイアナ。
「俺たちの星に比べて文明は進んでないが、何だろうなんか安心できる景色だな」
街並みを眺めるケイシー。
エリスが選んだ旅行先は地球の日本、転生する前に住んでいた場所。
もう二度と来ることは出来ないと思ったいた地球の日本に来ることができた。込み上げ来るものに涙が零れる。
「どうしたのエリス」
「心配ないよ、ちょっとゴミが入っただけだから」
心配するダイアナに常套手段の言い訳で誤魔化すエリス。ここが前世に住んでいた所だよとは言えるはずがない。
旅行先に辺境の星へ行くことは許可されているが、殆ど交流がない場合、正体を隠す必要がある。
ぶっちゃけ、地球から見ればエリスたちは宇宙人になってしまうのだから。
こっそりと、いくつかの国と交流しているリトルグレイがツアープランナーをやってくれ地球用の服や宿泊先を用意してくれた。
チョーカー型の翻訳機。外国人観光客との設定なのでこちらがしゃべる際には片言の日本語になっている。
エリスには前世の記憶があるため、翻訳機を使わなくても日本語は解るのだけど、そのことは隠しているので翻訳機を使うことにした。
エリスとダイアナとケイシーは日本の町中を歩く。前世で住んでいた頃とあまり変わらない街並み、あれから地球では何年たっているのだろうか……。
そんな街並みがさらにエリスの懐かしい気持ちを刺激してくる。
見るもの触れるものダイアナとケイシーには珍しいものばかり、あれは何これは何と尋ねると町の人たちは親切に教えてくれた。
あれもこれもエリスは何かは解っていたけど、話を合わせて置く。
町の散策をしていると、
「何かいい匂いがするな」
匂いの元をケイシーは探し始め。
「あれね」
ダイアナが匂いの元を見つけ出す。そこにあったのは、
『あれは屋台』
一目で何の屋台か解ったエリス。
ダイアナとケイシーに屋台の前へ、一足遅れてエリスも屋台の前へ。
「いい匂いがするね、これは何なんですか」
興味深そうにダイアナが訪ねる。
「外人さんかね、これはたこ焼きだよ。食べていくかい」
気軽に教えてくれる、屋台のおじさん。
ツアープランナーから、日本円を渡してもらっていたので買うことに。
渡される六個入りたこ焼き三つ、近くの公園のベンチで食べることにする。
あつあつのたこ焼き、とろみのあるソースが塗られ振りかけられている鰹節と青のり。
つまようじに刺さったたこ焼きを一つ、ふーふーと息をかけてましてからお手本とばかりにエリスは食す。
冷ましたことで口中で耐えれる熱さ、カリッした表面にふわふわの生地とコリコリの蛸、紅ショウガと天かす入り。
とても美味しい、懐かしい味。転生してまたたこ焼きが食べられるなんて。
「それがたこ焼きの食べ方、どうして知っているの?」
エリスの食べ方を見ていたダイアナが質問してくる。
「なんとなく、こう食べるんだと思ったんだよ」
と言っておく。
「うぉー、これは熱い熱い熱い熱い熱い!」
唸りながらも、
「でもその熱さがうまい、熱くてうまい」
美味しくてケイシーのテンションが上がる。
ダイアナはエリスを見習い、ふーふーと息を吹きかけて十分に冷ましてから食べる。
「これ、本当に美味しい」
食べたことのない味、感じたことのない歯ごたえに満面の笑みを浮かべる。
用意してくれ宿泊先は日本人には馴染み深い造りの宿屋。
「この床、もしかして植物なの」
部屋に通されたダイアナは畳を物珍しそうにしげしげと見つめている。
「何か癒される」
ケイシーは畳に寝そべり、ぐでんとなっいる。
そんな2人を背にエリスはテーブルに用意されていた急須にお湯を注ぐ。
「それ、紅茶か?」
起き上がってケイシーが寄って来る。鼻をヒクヒクさせ、紅茶とは違う香りを嗅ぐ。
手際よく湯呑に注がれた緑色のお茶を見つめるケイシー。
「このお菓子も一緒にどうぞ」
お茶と共に用意されいたお茶菓子を差し出す。
「おお、甘い」
お茶菓子を食べたケイシーの第一声。
「エリス、何か手慣れていない」
エリスは内心、しまったと呟く。世では毎日のような淹れていたお茶、手慣れていて当然である。これをどうやって誤魔化そうかと思っていたら、
「苦っ」
お茶を飲んだケイシーが顔を顰める。
別にケイシーが助け舟を出したわけではなく、偶然の産物。
おかげでお茶に興味を持っていかれたダイアナは、どれほどの苦さなのかと試してみる。
「この苦みがお菓子の甘さを引き立てているわよ」
そう言われてケイシーも試してみる。
「本当だ。でもこれにも砂糖入れた方がいいんじゃないか」
お茶に入れる砂糖は無いかと探してみるが、テーブルのどこにも見当たらない。
『そんなにもお茶、苦いかな』
お茶をすするエリス。毎日のように飲んでいたお茶、生まれ変わってもあまり苦いとは思えなかった。
エリスとケイシーは露天風呂へ。混浴ではないでダイアナとは別々。
「へぇー、空を見ながらお風呂に入るのか、風流だな」
初めての露天風呂、空を見上げるケイシー。源泉かけ流しの温泉。
今生では初めてだけど、前世では露天風呂には入った経験がある。さてどうやってマナーを教えればいいいのかエリスが考えていると。
「外人さんだね」
どこにでもいそうな風貌のおじさんが話しかけてきた。
「お風呂に入る前にはかけ湯をするんだよ」
親切にマナーを教えてくれて、お手本も見せてくれる。
おじさんに倣いケイシーは手桶でかけ湯、続いてエリスも。知っているけど、初めてのように装いながら。
さぁ、これからお風呂に入ろうとした時、何やらケイシーがしげしげとエリスを見つめてきた。
「お前、本当に男なんだな」
「当り前じゃないか」
小柄ではあるが軍学校で鍛えた体は伊達ではない細身で締まった体、胸に膨らみはない。
エリスが男性であることを確認、ケイシーが少し残念そうなのはエリスの気の所為?
「でも、相変わらずお尻は可愛い形しているんだな」
なんてことを言い放つ。顔が赤いのはお風呂の熱の所為だろう、きっとそうに違いないとエリスは思うことに。
「触ったら、どつくからね」
「解ってねって、もう殴られるのはこりごりだ」
入学の時、エリスのお思を触って鉄拳制裁を食らい、ダイアナに警告を受けたことはいまだに忘れてはいないはいない。
風呂につかるエリスとケイシー。
「おお、俺たちの所の風呂と同じようでなんか違うな。お湯がしみ込んできて全身の疲れが抜けていく感じがするぞ」
気持ちの良さのあまりに脱力気味。
お湯にエリスは浸り、軽く目を閉じる。
『そう言えば父さんと母さんと、温泉に行ったことあったな』
前世の父さんと母さんのことを思い出していた。
『今、どうしているんだろうか、元気にしているんだろうか……』
自分が死んだことで悲しい思いをさせているんだろうか、その悲しみから立ち直ってくれているんだろうか。
想い出せば思い出すだけ切なくなるので、お湯で顔を洗って思い出を振り払う。
もう自分は生まれ変わったのだから。
夕食で出された料理の数々、その中でもダイアナとケイシーの目を引いたのは。
「この魚、生だよね」
「おいおい、生のまま食うのかよ」
どこを見ても魚に火を通す物は見当たらず。小さな鍋はあるが蓋の下には具が入っているぽい。
魚を生で食べる文化は無かったダイアナとケイシーが躊躇するのも無理はない。
エリスにしてみれば二度と食べる機会が無いと思っていた刺身が目の前にある。
「僕が食べてみるよ」
ダイアナとケイシーが止めるより早く、ワサビを醤油に解いて刺身を口の中へ。お預けも毛旋回である。
心配そうに見ているダイアナとケイシーに、
「美味しい」
と言って見せる。懐かしい上、本当に美味しかった。
エリスが食べたのを見てダイアナも覚悟を決め、刺身を口に入れる。
「エリスの言うとおり、美味しいわこれ」
エリスとダイアナが食べるのを見て、ケイシーは恐る恐る刺身を食べてみた。
「うめー」
次の一切れは恐れることなく食べる。
「エリス、この黒い液体に緑のを入れるのよく解ったわね」
゛なんとなく、そう思ったんだよ」
地球に来てから、誤魔化してばかり。内心、事情を話せないことにダイアナとケイシーにエリスは誤っておく。
エリスにとっては懐かしい、ダイアナとケイシーに初めて。でも行きつく感想は美味しい。
「魚以外の料理もおいしいわね」
「このエビに衣が付いている奴。衣はサクサクで中身はぷりぷりだ」
どの料理もこの料理もエリスにとって、懐かしくて美味しい。
このような形でエリスたちは日本に来ました。




