第十二章 雪山の一夜
雪山に不時着したエリスとダイアナ。
生徒の機体が惑星に落ちてしまった、騒然となる教師たち。
遠隔操作が聞かなかったなどと、言い訳にはしない。エリスの練習機を追って惑星な向かったダイアナの練習機を見落としたのは完全な落ち度。
不幸中の幸いなのはエリスとダイアナが落ちた惑星は生物が生存できる環境だと言う事。だからと言って安心はできないが。
「すぐに救援隊を送るぞ」
ローズモンドが言うまでもなく、既に教師たちは救援隊結成に動いていた。
『宇宙の女神がいるのなら、2人を守ってくれ』
宇宙の女神に祈らずにはいられなかった。
☆
惑星の重力に引きずり込まれたエリスの練習機、迫って来るのは雪山。
雪を撒き散らしながら、練習機は斜面を滑っていく。
「これはヤバイ」
本気で命の危機を感じる。もう一度転生できるのかなと変なことまで考えてしまう。
《諦めてはいけない、あなたはこんなところでは終わらない》
この世界に生まれた時、実地訓練でエイリアンと戦った時に聞こえてきた声が、また聞こえてきてた。
聴いた途端、こんなところで終わってなるものかと気持ちが強く沸き起こる。
レバーを掴んで引き、緊急用のブレーキを発動。
雪に埋もれ、ようやく練習機は停止。
宇宙使用の外装だけあり、大気圏突破の熱に耐えられるように作られているてパイロットは安全たが、完全に過熱を防げるわけではない。
熱くなった外装が雪を溶かして蒸発させた。それでもこれでもかという程に積もった大量の雪が機体を冷却させ外装の熱を鎮める。
何とか助かった。エリスは大きな息を吐き、胸を撫でおろす。
ベルトを外し、天蓋を開いてコクピットを降りる。
「えっ」
そこへ着陸してくるダイアナの練習機。
ダイアナも緊急用のブレーキをかけ、練習機を止めようとした。
ところが運悪く、目前には岩壁が迫る。
今の状況では操縦は不可能、岩壁にぶつかって止まるダイアナの練習機。
練習機と言っても戦闘用、頑丈に造られており岩壁にぶつかっも先が壊れただけ。
「ダイアナ!」
すぐさま、エリスは駆け付ける。
コクピットの天蓋が開き、
「死ぬかと思った」
ダイアナが降りてくる。どうやら無事な様子。
「良かった」
自分の練習機を止めた時の2倍以上の勢力でエリスは胸を撫でおろす。
「エリス!」
エリスの姿を確認したダイアナは嬉しさのあまり、飛びつく。
女の子みたいな見た目でもエリスは男の子、しっかりとダイアナをキャッチ。
勢いあまって2人は雪の中を転げまわる。
止まったところで自分のやったことに気が付き、慌ててダイアナはエリスから離れた。
「エリスが無事で良かったよ」
笑顔でやり過ごし、激しくなった鼓動を落ち着かせる。
ヘルメットを足元に置き、エリスはダイアナの練習機の状態をチェック。
「これは専門家じゃないと治せないな」
続いて自分の練習機の状態を見に行く。
手ごろな石に座ってダイアナはエリスを見ている。脱いだヘルメットは膝の上へ。
機関部を調べるエリス。これも専門家でないと修理は不可能だろう。
「……これは」
壊れた機関部に違和感を覚え、ある疑惑を持つが今は黙っておくことにした。
今は疑惑よりも、この星から生還することが第一。
幸いスーツには温度調節機能があるので雪山でも耐えられる、ある程度ではあるが。
保存食が練習機ある。これで数日は生き延びることは可能。
胸ポケットのカード型スマホを取り出し、連絡を取ってみた。
『エリス、無事なのか』
すぐに通じ、ローズモンドが出た。
『ハイ、僕もダイアナも無事です』
2人の無事を聞いたローズモンドの安心した気持ちが伝わってくる。
『位置は把握した。すぐにでも助けに行きたいが、こちらにも準備がある。そっちへ行けるのは明日の朝になるだろう』
「気にしないでください、一晩なら僕もダイアナも耐えられます。目一杯鍛えられていますから」
『そうか、確かにお前たちなら大丈夫だな』
エリスとダイアナことをローズモンドは信頼している。2人とも優秀な生徒だ。
「明日の朝には救援が来るよ」
カード型スマホを胸ポケットのしまいながら告げた。
「そうか、明日には助けに来るのか――!」
ホッとしたのもつかの間、一晩エリスと一緒に過ごすことを自覚してしまう。
顔が熱くなっていくのを感じる。
「どうしたの、ダイアナ」
エリスに声をかけられ、
「な、何でもありません」
火を噴きそうな顔をごまかそうと、急いでヘルメットを被った。大量の雪でも火照ったダイアナを完全に冷やすことは出来ず。
「?」
ダイアナの気持ちに、露程も気が付いていないエリスは首を傾げる。
YouTubeで遭難の動画を見たことはあったが、まさか生まれ変わった自分が雪山で一夜を過ごすことになるとは前世では思ってもいなかったこと。
スーツには温度調節機能のおかけで低体温症や凍傷になる恐れはないが。一応、YouTubeの知識で知った方法で練習機の破片をスコップ代わりに雪洞を作っておく、備えあれば患いなし。
雪洞を作った後は食事。準備をするエリス、保存食だけど。
「ダイアナ、ご飯にするよ」
言うまでもなく、ヘルメットを被っていたら食事は出来ない。深呼吸をしてきもちょ落ち着かせてからヘルメットを外す。
食後、雪洞の中でエリスとダイアナはホカホカのココアを手に寄り添う。
ココアの温もりは体だけではなく、心も温めてくれる。
「ダイアナ、くっつき過ぎじゃない」
ダイアナが首を傾けたら、エリスの肩で枕が出来そうな位置関係。
「狭いんだから、しょうがじゃない」
少し恥ずかしそうに言う。
「狭いかな」
雪洞は広めに作ったつもりのはずなんだけどなとエリスはココアを飲む。その横でダイアナは幸せそう。
翌朝、上から物音がしたのでエリスは雪洞を出て空を見上げる。
そこには小型の宇宙船が浮いていた。胸ポケットに入れているカード型スマホが振動、
すぐに出てみると、
『迎えに来たぞ、エリス、ダイアナ』
思った通り、ローズモンド。
何か幸せな夢を見ていたダイアナも目を覚まし、雪洞から出てきた。
「ローズモンド先生、来てくれたんだ」
思ったよりも早く迎えに来てくれたことに、嬉しそうに宇宙船を見上げて残念そうにエリスを見る。
ラースに生還したエリスとダイアナ。
「2人とも無事だったんだな」
今にも泣きそうなケイシーが駆け寄ってきた。余程心配していたことが窺い知れる。
エリスとダイアナに傷も無し。
ケイシーに続いて、多くの人が2人の生還を喜ぶ中、1人だけ俯いているギート。
「どうしたの、ギート」
そんなギートに気が付いたエリスが声をかけた。
「ごめん、俺が整備をしくじった所為で」
ボロボロと涙をこぼす。途轍もなく、責任を感じている。
「ギートの所為じゃないよ」
えっとギートはエリスの顔を見た。その表情は同情から言ったものではない。
「僕の練習機が戻ってくればはっきりするよ」
エリスが無責任なはったりを言わないことは、ここにいる誰もが知っている。
一日たち、格納庫にエリスとダイアナと練習機が戻ってきた。
ベテランの整備士共にギートはエリスの練習機の機関部を見る。
「これ、爆弾が仕掛けられていたんだ」
自分でいじったからこそ解る、爆弾による爆発の後が。
「間違えねぇ、これは遠隔操作の小型爆弾だな」
ベテランの整備士はより詳しく分析。
「やっぱり」
雪山で機関部を調べた時、エリスも爆弾のことに気がついていたが100%の確証はなかった。でも、その確証を得た。
「整備が終わった後に誰かが忍び込んで仕掛けたんだ」
ギートの語尾が荒い。心血を込めて整備したのに何者かに台無しにされたことが腹立たしい。それは整備士全員が共通している。
もし今ここに犯人がいたなら、袋叩き間違いなし。
「一体、誰が」
ダイアナの語尾も荒い。エリスが危険にさらされたのだダイアナも犯人は許し難い。
「そんなの“アイツ”しかいないだろう」
ケイシーの指摘した人物は誰もが思い浮かべた人物。
「だろうな」
格納庫にローズモンドが入ってきた。
「防犯カメラを調べてみたが、一部消去されていた」
そんなことろは抜かりの無い犯人。
「許せない」
エリス以上に怒っているダイアナ。
「ボコボコしてやる、あのクソ野郎!」
ケイシーは拳を掌に打ち鳴らせる。整備士たちも怒り心頭、やる気満々。
「証拠がない限り、そんなことしたら罰せられるのはこっちだよ」
一番被害を受けたエリスが一番冷静。
「エリスの言うとおりだな。それも奴の計算の内なんだろう」
ローズモンドも冷静さを保っている。だからこその教師なのだ。
「でもこのまま、泣き寝入りするしかないの」
悔しくて仕方がないダイアナ。
「泣き寝入りするしかないよ、今はね」
パッと見れば冷静に見える。でも幼馴染だからこそダイアナは感じたエリス怒っている、冷静に怒っている。
「そうだな」
ローズモンドはにっこりしていた。そのにっこりにケイシーとギートたちは背筋が冷たくなるのを感じた。
雪山の遭難の 雪山の遭難の遭難の話でしたが、技術のことを考慮してこうなりました。話でしたが、技術のことを考慮してこうなりました。




