第十一章 模擬戦
競技祭の続きになります。
個人戦の花形種目が練習機によるレースなら、団体戦の花形種目は練習機による模擬戦。
それぞれのチームに分かれ、ペイント弾で戦う。
ペイント弾が命中した段階で撃墜したとみなされて失格、模擬戦から離脱することとなる。
模擬戦前夜、ギートたち整備士はエリスの練習機を整備中。
模擬戦で戦うのは何もパイロットだけではない、整備士たちも一緒に戦っているのだ。
信頼されて任されたからには全力を尽くし、整備をする。
ここが整備士の腕の見せ所。
明日の参加者の機体の整備も終わり、無人になった格納庫。
真っ暗な格納庫にライトを片手に侵入してきたのはフィリップの機体を整備したレプティリアンの整備士。その手には工具箱があった。
立ち並ぶ練習機を一つ一つ確認していき、
「この機体だ」
エリスの練習機の前で立ち止まる。
今一度、周囲に誰もいないことを確認して工具箱を床に置き蓋を開き、レプティリアンの整備士は工具と“ある物”を取り出す。
翌日の昼過ぎ、模擬戦に参加する練習機がずらりと整列。
エリスとダイアナは同じチーム。何せ幼馴染で大の仲良し、コンビネーションに申し分なし。
エリスのコンディションは問題なく、エリスと同じチームだと思うだけでダイアナのコンディションは整う。
エリスとダイアナの対戦相手のチームにはフィリップがいる。
教師たちもフィリップのエリスに対する対抗心を重く見て直接対決を避けようとしたが、フィリップが強引にチームメンバーの入れ替えを行い、エリスとダイアナの対戦相手のチームに加わってしまったのだ。
この行動に教師たち、特にローズモンドは悪い予感しかしない。
模擬戦の開始。エリスの実力を知っている敵チームの練習機三機が先制攻撃を仕掛けてきた。
一瞬、機体が消えたかに見えた練習機三機の生徒は驚く。エリスが機体を下方に落として攻撃を躱したと解った時にはペイント弾を撃ち込まれ、あっさりと離脱。
さらに攻撃してきた敵チームの攻撃をものともせず躱すと同時に、エリスはペイント弾を撃ち込み離脱させていく。
次々と仲間がやられ、敵チームはエリスを強敵と改めて認識して一斉に襲い掛かった。
繰り出される攻撃を華麗に躱しながら、ペイント弾を撃ち込んでいく。
こうなったらと敵チームはエリスの機体を包囲、一斉に攻撃を行おうとした練習機たちにペイント弾が撃ち込まれる。
何が起こったのか?
「私のこと忘れているよ」
いつの間に、そこにいたのかダイアナの練習機。
エリスの練習機に気を取られているうちに、ダイアナの練習機がペイント弾を撃ちこんだのだ。
見事なまでの連携、相性はばっちり。
エリスの練習機の前に、一機の練習機が止まった。誰がパイロットなのかは確かめるまでもない。
「一騎打ちを望んでいるのか……」
フィリップのこと何か卑劣なことを企んでいるかもしれないが、逃がしてはくれないだろう。
この一騎打ち、受けるしかない。
意を決して練習機を動かす。
呼応するかのように、フィリップの練習機も動く。
誘いをかけてくるフィリップの練習機。しかしエリスは誘いには乗らない。
エリスが誘いに乗らないと解ると、フィリップの練習機が突っ込んできた。
ペイント弾を撃って来るが、その攻撃は見切り済み。
躱したかと思うと、素早くフィリップの練習機の背後を取り、ペイント弾を撃と撃とうとする。
静かに見ていたダイアナはエリスの勝利を確信。
操縦席にいたフィリップは焦ることなく、隠し持っていたリモコンを取り出す。
満面の笑みを浮かべ、リモコンのスイッチを押した。
エリスの練習機の後部側から、突然に破裂音が響く。
「えっ?」
戸惑うエリス、コクピットには警報がけたたましく鳴る。
殆ど操縦を受け付けない。エリスの練習機はコントロール不能となり、落ちていく。
「エリス!」
ダイアナはエリスを追う。
「下賤なトカゲにしては、指示通りに出来たではないか」
仕掛けて置いた“ある物”小型爆弾はちゃんと作動した様子。
我慢できず、フィリップは笑い出す。
「いかん」
すぐにローズモンドは遠隔操作しようとしたが、何故かエリスの練習機は遠隔操作出来ない。
遠隔操作機能もレプティリアンの整備士は外していた、フィリップの指示通りに。
モニターにはエリスの練習機が近くにあった惑星の引力に引っ張られ、落ちていく姿が映し出されていた。その後を追うダイアナの練習機の姿も。
想定外の事態に教師たちはダイアナの練習機を遠隔操作して止めることを忘れてしまっていた。
惑星に墜落してしまったエリスとダイアナの練習機。




