第十章 競技祭
競技祭が始まります。
カスタマイズされた機体。当人に合わせてのカスタマイズなので操縦に慣れるのも早い。
みんな練習機の操縦に慣れた頃に行われるのが競技祭。様々な競技で生徒を競い合わせることによりり、お互いを成長させるのが目的。軍学校の生徒たちの感覚で言えば地球の体育祭の乗りに近い。
「これより、競技祭を開催したします。生徒の皆さんも宇宙の女神に背を向けるような行動はしないで頑張ってください」
エックハルト校長が競技祭開催を宣言。
競技祭は団体戦と個人戦があり、個人戦の花形種目は練習機によるレース。
このレースにエリスは参加する。本人が志願したのではなく、有志による推薦があったから。
折角推薦してくれたからには期待には応えるつもり。幸いギートたちの整備してくれた機体の性能は上々。
正し、不安要素はある。それはこのレースにフィリップが参加していると言う事。
あのフィリップのこと、もろに対抗してくるだろう。
エリスの方も負けると悔しいので、負けたくはないとは思っているが。
宇宙空間にずらっと横一列に並んだ練習機。それぞれ生徒たちに合わせたカスタマイズ済み。
コクピットに座ったエリスは深呼吸して自分をリラックスさせておく。気持ちを乱してしまえばミスに繋がる。
10・9・8・7・6・5・4・3・2・1、始まるカウントダウン。0と同時に横一列に並んだ練習機は一斉にスタート。
最初にトップに踊り立ったのはフィリップの練習機。それもそのはず彼の希望通り、機体はスピード特化型にカスタマイズされているのだ。
「そうさ、私は天才なんだよ。誰であろうが私に追いつくことなど出来はしない」
笑いながら、さらに加速。
フィリップの練習機はかなりのスビートで宇宙空間飛ぶ。どんどん他の練習機との距離が広がっていく。
さらに加速は続き、ダントツトップになるフィリップの練習機。
「おいおい、このままじゃフィリップの奴が1位になってしまうじゃないか」
宇宙ステーションにてモニターを見ていたケイシー。
モニターにはダントツ1位のフィリップの練習機が映し出されている。そうなればフィリップのこと、ここぞとばかりに威張り散らすのは間違いなし。
散々にエリスを罵り、マウントを取ってくるははず、そんなのは見たくない。
「まだフィリップが1位になるとは決まっていないわよ」
エリスと付き合いの長いダイアナは焦りは見せず、むしろ微笑みさえ見せていた。
まっすぐ走るだけならスピードがものを言う、でもレースのコースは直線だけではない。
カーブに差し掛かった時、出せるだけスピードを出していたフィリップの練習機は曲がることができず、大きくコースをオーバーしてしまう。
エリスの練習機は無駄なくカーブを曲がった。エリスに合わせてカスタマイズされた機体はバランス型。どんなコースにも状況にも操縦次第で柔軟に対応できる。
コースをオーバーしてしまったフィリップ。大きく距離を開けていたのに、その差は逆転。
他の生徒の練習機も次々とフィリップを抜いていく。
慌ててコースに戻って広がった差を縮めようとさらにスピードを上げるが、焦った状態の行動はミスに繋がる。
あまりにも急激に加速したことにより、練習機はバランスを取れずにスピン、あらぬ方向へ飛んで行ってしまった……。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
一位でゴールしたのはエリス。次々とゴールしていく練習機。
フィリップは教師の遠隔操作で無事に帰還できたが、失格となる。
「1位おめでとう、エリス」
「やったなエリス、流石は俺が見込んだ男だぜ」
練習機から降りたエリスをダイアナとケイシーは褒め称えながら出迎えた。
「ありがとう、ダイアナ、ケイシー」
相手をほっこりさせる笑顔で感謝。
ふとギートの姿が目に入り、エリスは駆け寄る。
「ありがとうギート。君の整備してくれた練習機、僕の思い通りに動いてくれたよ」
裏表のない気持ちでお礼を述べる。
たちまち照れてしまいギートはもじもじ。
そんなギートを見た整備士たちは楽しげに微笑んでいた。
「どう責任を取るつもりだ! 全て貴様の所為だぞ」
和やかな雰囲気を台無しにする怒号。見てみればフィリップがレプティリアンの整備士の襟首を掴んでお怒りの様子。
「ボクはあなたにあったカスタマイズしましたし、それに希望通りにしたんですよ」
言い訳ではなく、本当のこと。
「じゃ何で私が負けたんだ? 整備にミスでもなければエルフである、この私がヒューマンごときに負けるはずなんかないんだよ」
エルフの端正な顔もここまで歪んだなら、醜く見えてしまう。
これは見過ごせないと、エリスとダイアナとケイシーとギートが止めに行こうとする。
エリスの姿を確認したフィリップはレプティリアンの整備士を突き飛ばし、
「私がレースに負けたのは整備にミスがあったからだ、その事を肝に銘じておくんだな」
吐き捨てて去っていく。
「何だよ、あの態度。負けたのを整備のせいにするとは」
不快感をあらわにしているのはケイシーだけではない、ダイアナもギートも整備士たちも不快だと感じていた。
「大丈夫」
手を差し伸べるエリス。そこには下心のない親切心からだっただが、レプティリアンの整備士はその手を振り払った。
「お前がフィリップに勝ちなんかしなかったら、ボクは叱らずに済んだんだ!」
あまりのことで呆然としているエリスを尻目に、レプティリアンの整備士は走り去っていく。
地上での競技祭。目の前にそそり立つ壁にケイシーは両手を当てた。
壁を何m動かせるか競い合う競技。ただ壁を押すだけではない。進むごとに壁はどんどん荷重され、重くなる。
パワーと集中力が要の競技。
開始のベルが鳴り、参加者たちが一斉に壁を押す。
最初は軽かった壁は距離が進むうち、どんどん重くなっていく。
参加者の中には途中で力尽きて、へたばってしまう生徒も。
「うおっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
幾人もの生徒がリタイアする中、ケイシーはパワーと集中力に気合をぶち込み壁を押し続ける。
重くなっていく壁を押し続け、ケイシーはこの競技で1位になった。
「俺がチャンピオンだぜ!」
ガッツポーズを決める。
高速で飛んでくるボールをラケットで打ち返すダイアナ。
飛んでくるボールは1つだけではない。あっちこっちから何発ものボールが高速で飛んでくる。
この競技で要になるのが動体視力と瞬発力と敏捷。
縦横無尽に飛んでくるボールをダイアナは走り回りながら、たった1つも見逃さずにことごとく打返していく。
ダイアナもこの競技でチャンピオンになる。
『少しでもエリスに近づけたかな』
チャンピオンになって嬉しい気持ちもあるが、一番大事なのはエリスの足手まといにならないこと。
競技は宇宙での体育祭をイメージしました。




