第八章 夏休み
この星にも夏休みがあります。
学期末がやってきた。この世界にも夏休みがあり、3ヶ月近くもあるアメリカとは違い日本と同じ1月ちょっと。
しかし、その前にやって来るのが期末試験。
筆記試験は中間試験とは比べ物にならない難しさ、実技試験はエリスとフィリップが受けた模擬戦闘に似たもので仮想空間にて単独でエイリアンと戦う。最もあれ程いじわるではないが。
中間試験と同じく、前半に筆記試験が行われ後半に行われる実技試験。
両方とも過酷ではあるが、生徒たちは教師たちのしごきや猛勉強に耐え抜いてきたことで鍛えに鍛え上げられたのだ。
期末試験でこけてしまうような奴なら、ここまで残れてはてはいない。
乗り越えるのが困難な壁でも、諦めなければ乗り越えることが出来る。
期末試験が終了し、そしてカード型のスマホに発表される結果。今回の堂々の一位はエリス・リーン。
「凄いよ、エリス。一生懸命、がんばった結果だね」
「流石は俺の見込んだ男だぜ」
褒めるダイアナとケイシーの2人も上位に食い込んでいる。
フィリップはカード型のスマホを見て硬直中。顔色を表現するなら真っ青の先の白。
エリスに気が付くフィリップ。顔色は白から赤となり、凄まじいマイナスの感情の感情の溢れる目で睨む。
ケイシーが何か言おうとしたが、エリス止めた。余計なガソリンを投下して炎上させる必要はない。
憤慨のあまり、フィリップは文句を言いたくても言葉が出てこない。取り巻きの様子も同じ。
歯ぎしりをすると、取り巻き共に校舎裏へ。
そのままにしておいた。出来るだけフィリップは関わりたくはない。
昼食の時間。今日もエリスとダイアナとケイシーは食堂に集まる。
「フィリップの奴、あの後な校舎裏で教師たちにスマホで抗議したんだってよ、何でも筆記試験は私の方が上だから、この結果はおかしいってな」
誰かから聞いた情報を話すケイシー。
「無視されたら、今度は直接職員室に乗り込んだっだってよ。最も門前払い同然で追い出されたけど」
あの発表は期末試験の結果だけではない、一学期にやってきたことの全ての成果が評価がされるのだ。
「ざまあみろと言いたいけど、これでますますエリスはフィリップに敵対心を持たれるね」
ダイアナの言う通りである。おまけに一方通行の敵対心だから始末に悪い。
終業式が終わり、エリスとダイアナとケイシーが廊下を歩いていると、正面にフィリップが現れる。今日は取り巻きを連れていない。
「どんな汚い手を使って一位を取ったか知らないが、いつまでも騙し続けられると思うなよ」
中間試験と同じようなことを言った。
ダイアナとケイシーが文句を言おうとしたが、
「根拠はあるの」
先にエリスが問う。
「あるに決まっている。下等なヒューマンが私たちエルフより優れているはずなんがない。エルフはあらゆる面でどんな種族より優秀なんだよ」
それは根拠でも何でもないとフィリップは自覚しておらず。
「そう思いたければそう思ってればいいよ。僕は僕のやるべきことをやっていくだけだから」
きっぱりと言い放つ。
「私もエリスと同じだよ」
「俺も」
ダイアナとケイシーが相槌を打ってくれる。
フィリップは人差し指をエリスに突きつける。
「必ず化けの皮を剥がしてやるから覚悟しておけ」
本気でエリスが汚い手を使ったと信じている様子、そうしないとプライドが保てないのだ。
歪んだプライドと憤りを纏いながら、フィリップはエリスとダイアナとケイシーの横を通り過ぎて去っていく。
すれ違いざま、
「ヒューマンの身の程を教えてやる」
エリスの耳元で囁く、嫌味満載の笑みを浮かべて。
フィリップのエリスに対する敵対心の拡大、ダイアナの懸念が的中。
かと言って敵対心を持たさないために手を抜いてわざと負けてるなんて以ての外、出来るならフィリップとは関わることは避けたい相手であるが、それは難しいだろう。同じ学校にいるのだから。
そしてやってきた夏休み。
アランの操縦する中型宇宙船でエリスとダイアナはフェガヌにやってきた。
夏になれば毎年来ていたフェガヌ。でも今は焼け野原と廃墟と化し、ジョニーとアルビンとビリーとネイサンと遊んだ森もない。悲しくて辛い思い出があるのにフェガヌに来たいと言ったのはダイアナ自身。
ダイアナは花を置き、黙祷。故人に追悼すると同時にエイリアンを叩き潰すことを誓う。この誓いを立てるためにフェガヌに来たのだ。
ダイアナに続きアランも黙祷、エリスも黙祷するが前世の習慣が無意識に出て手を合わせる。
「花を供えてくれたのか」
背後から声がかけられた。いつの間にか喪服を着たでかい男が立っていた。
でかい男。身長だけではなく、服の上からでも解る筋骨たくましい体。印象そのものがでかい。
一目見た瞬間、何故かエリスはでかい男を熱いと感じてしまう、温度ではない感じそのものが熱いのだ。
「もしかしてフェガヌ出身かね」
「ハイ」
とダイアナは頷く。
ふと、見ればでかい男の手には似合わない花束が握られていた。
「あなたも」
ダイアナに尋ねられたでかい男は頷き、地面に花を置き黙祷。
黙祷が終わったタイミングを見計らい、
「君はオーギュスト君だったな」
アランが言う。
「これはリーン大佐、お久しぶりです」
丁寧に頭を下げる。大佐はアランが軍にいた頃の階級。
「では、私は次の任務がありますので」
もう一度、頭を下げてから去っていく。
「あの人は?」
先ほど感じた熱さが気になり、エリスは尋ねてみた。
「彼はかっての部下のオーギュスト・バルバストル。スペリオルでサラマンダーと融合している」
スペリオル、精霊と融合した超人。
「あの人がスペリオル」
エリス自身も目標にしているスペリオルを初めて見た。前世の感覚で言えばあこがれていたヒーローに出会った、そんな感覚に近いかも知りない。
ダイアナも感動している様子。
家に帰ってきたエリスはオーギュスト・バルバストルのことを検索して調べてみた。隣にはダイアナ。
オーギュストは軍学校を卒業後にサラマンダーと融合してスペリオルになる。アラン・リーンの部下を経て今は艦長となり、現役で活躍中。
爬虫類タイプの最大級“ドラゴン”を素手で倒したこともあると。
ちなみに“ドラゴン”は地球のドラゴンと大体同じ姿。
空中に浮かぶスクリーンに映し出されるドラゴン。前世ではファンタジー世界の存在ドラゴンが実在しており、いずれ戦うことになるかもしれない存在。
転生したことも予想していたなったことだけど、ドラゴンと戦うことに可能性があるんて埒外。
「すごいね、“ドラゴン”を素手で倒すなんて」
ダイアナは感心と言うより、憧れが強い。いつか自分もスペリオルになりたいと目標を強くする。
「うん、それになんか熱い人だったね」
と言ったところ、ダイアナは首を傾げた。
「熱い人? 熱い人と言うより、冷静な感じだったじゃない」
素直に見れば、確かにオーギュストは冷静な感じがする人。でもエリスはオーギュストの冷静さの他に確かな熱さを感じたのだ。
「熱血とかじゃなくて、雰囲気が熱いって感じがしなかった? オーギュストさんに会った時に」
そう聞かれ、当時のことをダイアナは思い出してみる。
「言われてみれば、少し熱い感じがしていたかな?」
「少し……」
どうやらエリスとダイアナの感じたオーギュストの熱さの強さは違うようだ。エリスの知らないことだが、父親のアランは熱さを全く感じておらず。
何故、オーギュストの熱さを感じることがではのか、まだエリスは解らないこと。
夏休みをエリスとダイアナは海や山へとエンジョイしつつ、宿題はしっかりとやっておく。この世界にも夏休みの宿題はしっかりとあり、それも軍学校なので内容はとても厳しい。
また自主的鍛錬も欠かさない。オーギュストとの出会いがエリスとダイアナにとっていい経験となっようで自分たちもスペリオルをなりたいと、より一層やる気を発揮させた。
夏休みはレジャーだけではなく、自分自身を成長させるチャンスでもある。
エリスくんがスペリオルのオーギュストと出会いましたね。




