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第8話 彼女の家

「僕の家はこのまま真っ直ぐなんですけど、高嶺さんは?」


「あ、私はこっちです」


(そっか……高嶺さんの家は、分岐してる三本道を右に行くのか……右ルートは高級住宅が並ぶ通り……やっぱり、僕が住む世界よりも全然違う……)


「それじゃ、ここでお別れですね。高嶺さん、また明日」


「あ、あの、思井くん!」


「どうかしました?」


「あ、あの~」


(どうしたんだろう? 高嶺さん、モジモジし出して……は、も、もしかして、おトイレ我慢してる!?

 そりゃ、高嶺さんも人間なんだしトイレくらい行くよ。でも、なんでそれを僕に!?)


「……っ、お、思井くん! この後、お時間ありますか? その、もう少しお話したいので、良かったら……わ、私の家に遊びにきませんか!?」


「い、良いんですか!?」


(高嶺さんの家なんて、多分全人類が一度は訪れたいと思ってるはず……。それなのに、僕なんかが行っちゃって良いのか!?)


「は、はい! 思井くんのお時間があればですけど……」


「暇です! 暇で暇で暇です! むしろ、暇しかないです!」


(帰ったらなんかしようと思ってたけど、大した用事じゃないだろ! 高嶺さんの家なんて、この先、行けるか分からないんだし、チャンスを逃すな!)


「じゃ、じゃあ、案内します!」



「こ、ここが、高嶺さんの家……ゴクリ……」


(なんて、大きくて立派なんだ……! あの三本道から、少ししたら、すぐに高級住宅街になって、周りも大きくて立派な家ばっかりだけど……高嶺さんの家は周りより一際輝いて見える……!

 なんていうか、高嶺さん……期待を裏切らないな……!)


「って言うか……僕制服のままだけど、良いのかな!?」


(……と、言っても、私服も大して持ってはいないんだけど……)


「何を気にしているんですか? 私も制服ですよ?」


「そ、それに、せっかくの高嶺さんの家だし、お菓子の一つくらい用意しておかないと……」


「そ、そんな、気を使わなくて大丈夫ですから! 思井くんは、私の家を特別みたいに扱わないで……ほしいです」


「高嶺さん……?」


「はっ、ど、どうぞ」


(高嶺さん、どうしたんだろう? 一瞬、元気がないように見えたけど……。そ、それよりも、玄関に入ったら挨拶。玄関に入ったら挨拶。

『こ、こんにちは、はじめまして。僕、高嶺さんと、お、お付き合いさせてもらっています、思井です!』……よし、これだ!)


「こんにちは……はじめまして……」


「思井くん、どうぞ」


「あ、はい……お邪魔します……。

 ……あの、高嶺さん、親御さんは――」


「ああ、マ……お、お母さんとお、お父さんはいつもこの時間お仕事でいないので緊張する必要ないですよ」


「えっ……」


(そ、そんな……鍵を閉めながら、そんな重要なこと軽々と言っちゃうの!? え、と言うか……じゃあ、今、僕と高嶺さんの二人っきり!? 交際二日目で彼女の家で二人っきりっていいのか!? いや、よくない。何も起きないように最新の注意を払わないと!)


「どうしたんですか、思井くん。突っ立ってしまって。早く、上がってください」


「お、お邪魔します……!」


(何も起きないように……起こさないように……!)

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