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第1話 初めての告白

(あ~、もう、ドキドキが止まらない……。こんなの、まるで、握手会かサイン会の時だよ)


「はぁ、人生初の告白が()()高嶺さんなんてなんの試練なんだよ……」


高嶺(たかね) 氷華(ひょうか)さん。僕達二年生の学年で一番可愛いと言われている……まさに、高嶺の花のような存在の彼女に僕は今日――告白する)


「た、高嶺さん……!」


(ウワー、夕日を背に受けて、校舎裏に来る高嶺さんも美し過ぎる……!)


「ゴメンね、いきなりこんな所に呼び出しちゃって……」


「いえ、構いませんよ。放課後の予定はいつもありませんから。しかし、下駄箱を開けてビックリしました。突然、こんな手紙が入っていたんですから。思井くんとは思いませんでしたけど」


(高嶺さん……僕なんかの名前も覚えててくれたんだ……。あれかな? クラスメイト全員の名前を覚えてるタイプの人なのかな……?)


「アハハ、ゴメンね……。その、なかなか、話しかけづらかったもので……」


(高嶺さんはデブボッチの僕が言うのもおこがましいけど、いつも一人だ。あまりにも美しいその容姿から男子ならず女子までもが話しかけることを躊躇っている。

 当然、僕のような奴もその内の一人だ。いや、僕は女子が相手ならほとんど同じ様になるのだが……。

 だ、だから、手紙に『放課後、校舎裏に来てください』と書いて、その手紙を高嶺さんの下駄箱に入れさせてもらったんだ)


「それで、思井くん。私になんの用ですか?」


「あ、あのね、高嶺さん。同じクラスメイトだけど、今まで全然話してなかったよね。そんな僕なんかにいきなり言われても困ると思うんだけど……」


(言え……言うんだ、僕!)


「好きです、高嶺さん! 僕と付き合ってください!」


(アアアアアアア、言った言った言ったーーー! 緊張して、顔なんて見れないから下を向いて手を差し出してるだけだけど……辛い!

 でも、大丈夫。僕は分かってる。断られることを。高嶺さんなんて、美しく天使とも思える存在だ。今まで告白だって、何十回もされてきただろうし、デブボッチの僕なんかよりももっと良い人と付き合ってるはずだ。

 つまり、これは、玉砕覚悟の告白だ。だから、断られて全然大丈夫。傷つかないから! 泣きもしないから!)


「……あ、ああ、あああ――」


(ん、高嶺さん、なんか呟いてる? あ、そっか、僕が気持ち悪くて気味がってるんだ! だったら、僕から言ってあげないと。高嶺さんに迷惑はかけられない!)


「あ、あの、高嶺さん。実は、これ――」


(えっ!? はっ!? な、なんで、高嶺さん、そんなに真っ赤になりながら口を手で隠してるの!?)


「あ、あの、高嶺、さん……?」


「……は、はい。なんですか?」


「いや、真っ赤だけど大丈夫かな、と思って……」


「……っ! こ、これは、夕日が暑くてこうなっただけです。で、ですから、決して、思井くんの告白が嬉しかった訳ではありません」


「う、うん、それは、分かってるから大丈夫。もう、夏も近づいてきてるし、最近、気温も高いからしょうがないよね!」


(な、なんだ……? なんか、高嶺さんから教室でいる時みたいに冷たい感じがしないんだけど……暑さにやられて溶けたのか? だったら、尚更、早く高嶺さんを家に返してあげなきゃ)


「た、高嶺さん、告白の返事だけど……」


「は、はい」


(断ってくれて大丈夫だよ……ってなんか、上からって感じだし、断ってください、だな!

 しかし、これで高嶺さんとの会話も終わりか……。そう思うと少し残念だけど……まぁ、もともと僕なんかとは無縁の人だ。少しでも話せたことを誇りに思おう!)


「そ、そうですよね。こ、告白してくれたのだから、返事はしないとですね……」


(う~ん、また、ぶつぶつ言ってるし、本格的に危ないのかも。よし、謝って、告白取り消してもらって、僕が先に帰ろう。そうしたら、高嶺さんも帰るだろうし)


「た、高嶺――」


「お、思井くん。じ、実は私も思井くんのことが少し気になっていたんです……。だ、だから、その……わ、私と……つ、つつ、付き合って、ください……!」


「……は、い」


「そ、それでは、失礼します。あ、そ、そうだ。教室では今まで通りにしてください……。その、恥ずかしい……ので……。し、失礼しますーー!」


(嵐のように去ってった……)


「……って、違ーう! 僕と高嶺さんが付き合っ……ええええええええっ!?」

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