route.ヴェルタァク① 年
カラーズのことは私が決めることじゃない。皆でフィードの家を後にして家に帰った。
「すべてを話しておくよ」
「突然どうしたの」
パパが真剣な顔で何かを言おうとしている。
「私は初代パレッティナ皇帝の息子……元第一皇子だった」
「ええ!?」
まさか信じられない。皇帝の息子ということにも驚いたが、初代といったらいくつだろう。
「なぜそのこと今?」
というかどうしていままで黙っていたのに今話すのかしら。
「ずっと言おうとしていたが、中々言い出せなくてね」
「えっと……パレッティナの最初の皇様がブークトレアの最後の皇族だから…大体60~50年は前の話よね?」
「ああ、だいたいまだここがブークトレアだった頃に産まれたのは間違いない」
「…でもそんな年には見えないわ。なにか秘密でもあるの?」
魔法使いのように若いままいられる魔法でもかけているとかだろうか。
「それはこのあと、追々話すよ」
「ええ」
「私には弟がいるんだという話は以前したね」
「ティードラァに取りつかれていた人ね」
「私と弟は仲がよかったが、父はそれを良しとしなかった。次期皇帝の座をめぐり、争わせたかったんだろう」
「それで…どうなったの?」
彼が生きているということは戦いはしなかったのだろう。
「勿論、殺しあうなんて出来なかった。だから私は約26歳で城を去ったんだ」「それで…どうしてまたここに戻ってきたの?」
「城を出て、十年は経った日、叔父がパレッティナの二代目に即位したことを知ったんだが…」
「なにかあったの?」
「弟が皇帝にならなかったことが気にかかって、一度パレッティナに戻り城内の知り合いに訪ねた」
「もしかして…新しい皇帝が悪い人だったの!?」
「本の読みすぎじゃないかい?弟は私が去ったのを自分のせいだと悲観して即位しなかったらしい…。叔父は性格の悪い父の弟とは思えないほど良い人だよ」
「お父様のことが嫌いなの?」
「ああ嫌いだよ」
「そんなに爽やかな笑顔で!?」「父子仲はともかく、パレッティナを再び去った。私は誤って崖から落ちて瀕死になったところをマデェールという魔女に救われたんだ」
「マデェールって伝説の最強魔女のクイーン・マデェール!?」
「知っているのかい?」
「物語りにも沢山出ているあのクイーン・マデェールよ!?パパと知り合いだったなんて…」
「お前がそんなにマデェールのファンだったとは…」
「マデェールが命を助けてくれて、その後どうなるの!?」
「シャーレア、落ち着こう命を救われた代償としてマデェールに生きた年を取られたんだ」
「生きた年?」
「30歳だった私は6歳位に若くなった」
「マデェールはどうして年なんて…」
「マデェール曰く魔女は年をとった分、強くなるらしい」
「それで…寿命は縮まないの?」
「有り難いことにね。今も定期的に年を差し出してこの見た目を維持しているんだよ」
「…できればそこは知りたくなかったわ」
大好きな魔法のマデェールの話が出て嬉しいはずなのに、パパからマデェールの話を聞いたとき、なんだか変な気持ちになったのはなぜだろう。