ドロウノ② 舞踏会
家に帰ってリビングで皆と寛いでいた私は、買い物から帰ったパパに市販の焼き菓子セットをもらった。
「ふーん。まあまあじゃない?」
食べたときのイレーサーの反応が薄いのはいつものこと。
ペンネスはなにも言わずたんたんと、お茶をいただいている。
私はそれを一口かじる。美味しいことには美味しいけれど、ドロウノの家にあったクッキーのほうがもっと美味しい。
なんだか不思議、クッキーなんて塩と砂糖を間違えなければ大して変わらないものだと思っていたわ。
「イレーサーって何を食べても、ふーんなのね」
「そうだね。取り立てて食べ慣れたクッキーで大袈裟に感動することはないかな……まあ例外はあるけど」
イレーサーはなにかを思い出すように遠くを見つめる。
「例外?」
ペンネスがカップをソーサーにおいて、たずねた。
「昔、兄さんがクッキーを焼いてくれたんだ。それが無駄に美味しくてヤバいもんでも入ってるんじゃないかと調べたくなるくらい……」
ドロウノのクッキーはイレーサー、あの無表情が健康と平和と言わんばかりの彼が認める美味しさらしい。
どうりで美味しいはずの市販のお菓子を美味しく感じないわけだわ。
「ははは……料理上手キャラは、この作品における私の専売特許なんだが?」
パパは沽券に関わるといわんばかりに目が笑っていない。
「まあ兄さんは別に料理が趣味ってわけじゃなくてクッキー限定みたいだよ」
「なぜクッキー作成力にパワーポイントをつぎ込んだんだ」
「さあ、クッキーが好きなんじゃない?」
他愛ない話していると、配達の人が手紙をもってきた。
「誰から?」
「城からだね」
私がたずねると、パパは手紙に封をしていたマークで差し出し人の名を見ずとも断言した。
「もしかしてまた王からの依頼?なんだって?」
「どうやら違うみたいだ。……これはシャーレアに当てられた手紙だ」
「私に?」
どうして私がお城から手紙をもらうのかしら。中を読んでみると、皇子の即位と結婚をかねた舞踏会をやるというのでその招待についてだった。
カラーズの知り合いだから私は呼ばれたということかしら。
こういうものの参加にはパートナーをつれていくべきなのよね。
私がローブ無しに外出したくないのは他国出身というのもあり、珍しい髪色だからと求婚される事が多いというのもある。
それにパートナーがいれば求婚者もきっと現れないだろうし。
「ちょっと出かけてくるわ!!」
「どこに」
「ドレスに合うアクセサリーとかを見に行くの!」
あとは彼を舞踏会の同伴相手に誘う。
「え……参加するの?」