表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏の空

作者: 龍夜

「ねぇ、もし空が飛べたらどうする?」


夏のいつだっけ?君と一緒に丘の上で話してたときのこと。そのときまだ、君は私の隣に居たんだよね。私、今でもあの日のこと覚えてるんだよ。


「さぁ?分からない。でも・・・・・・・」


あのとき君は一瞬だけ悲しそうな顔をしたんだ。私はそれに気付いたけど、見間違いだと思い込んでた。でも、あの日から君はこうなること分かってたんでしょ?


「でも?」


そのとき君は空を見上げて言ったよね。


「もし、飛べたらどこか遠くに行きたい。でもさ、空はいつも僕たちのそばに在るよ。だから、僕は飛ばなくても良い。」


君は私に向かってにこって笑ったよね。私にはそばに咲いていた向日葵に負けないくらい、そのときの笑顔は輝いて見えたんだよ。


「ふぅ〜ん・・・・。私は空にいる人に会いに行きたいな。」


私は君の顔を見ながら言ったの覚えてる?馬鹿って思った?でもね、私は本気だったんだよ。


「空にいる人?」


君は良くわからないというふうに私を見たね。


「うん!あのね、小さいころにお母さんに聞いたの。空にはね、たくさん人が住んでるんだって。それでね、地上の人を見守ってくれてるって。」


「・・・・・・そうなんだ・・・・・・・。」


「うん。だから、その人たちに会いに行きたいの。」


君のそばに咲いていた向日葵が風に揺れた。


「じゃぁ、きっと僕もその人達みたいになるだろうなぁ・・・・・。」


ぼそって言ったからそんなよく聞こえなかったけど、大体君の言ってることがあのときの私には分かった。


「え?なんで「じゃぁ、そろそろ帰ろっか。」


結局そのあと君とは何にも話さなかった。ただ、君が私の手をずっとぎゅっと握りながら帰ったんだ。何であのときちゃんと聞かなかったんだろう?



今、私の前にいる人はまぎれもなく君で、君は眠っていた。とても気持ちよさそうに、すごく幸せそうな顔をして。あのときから君は病気だったって今、お母さんから聞いたよ。

何で私には言ってくれなかったの?知ってたんでしょ?あのとき、もう駄目かもしれないって分かったんでしょ?なのに、何で無理したの?

最後まで心配かけてさ・・・・・。何でもう起きないの・・・。ひどいよ。おいてかないでよ。私も一緒にいきたかった。

一人にしないで。



ごめん。最後まで迷惑かけちゃったね。本当にごめん。あの日、君には言えなかった。

悲しませたくなかった。どうか、最後まで笑っていて欲しかった。でも、もう心配しないで。僕は空から君を見守ってるから。こっちに来ちゃ駄目だよ?ちゃんと生きて、こっちに来ちゃったときにたくさん話し聞かせてよ。これが最後のお願いだからさ。

君は一人じゃない。僕がいつも見守ってるから。



「もう、起きないんだね。」


私がそう言っても君は返事をしてくれない。


「もう、笑ってくれないんだね。」


何を言っても君には届かない。


「本当に好きだったよ。・・今までありがとう。こんな私を好きになってくれてありがとう。」


私にはこれしか言えないから。

私は今、本当にそう思ったから。

届くといいな。

きっと届くよね。

きっと、空から見守ってくれてるよね?

涙が私の頬をぬらした。

どうか、いつまでも私を見守っていてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ