夜会にて
いつかのリクエストより♪
近未来の夜会にて。
王宮で開催される夜会の招待状が届いた。
僕も特に夜会など社交が好きなわけではないし、ヴィオラに至ってはむしろ嫌いな方なので、こういった招待状が来るとまず二人でげんなりする。
しかし今回は王宮、もちろん主催は国王だからよほどの理由がない限り欠席は許されない。
貴婦人としてのヴィオラの評判はうなぎのぼりにも拘らず、毎日のように行われている夜会などの社交場には滅多に姿を現さない希少性から、社交場に姿を現せば老若男女問わずヴィオラに人だかりができる。そして今回もそうなるだろうことは想像に難くない。
夜会などで着飾ったヴィオラは本当に綺麗で、他のやつ――とくに男には見せたくないのが本音。見せるのがもったいない! 見るな減る。
どいつもこいつもヴィオラとのダンスの機会や会話する機会をうかがっているし、しかも隙あらば口説こうという不埒な輩までいる。本当に油断も隙もありゃしない。
だから僕は自ら防波堤になろうと、
「今日こそは僕から離れないでくださいね」
『こそ』に力を込めてそのサファイアブルーの瞳に念を押せば、
「はい、もちろんですわ」
とにこやかに細められるそれ。あーもう、このやり取りを毎回しているような気がするが、いつも邪魔が入って上手くいったためしがない。
今宵こそはこの手を離すもんかとヴィオラの手を力を込めて握った。
……握ったのだが。
「ヴィオラはどれがすき? すぽんじけーき? たると? むーす?」
「そうでございますわね、う~ん、タルト、でございましょうか」
「わかった! フィサリスこーしゃく、たるとをもってきて」
「……」
今の状況を説明すると。
齢6歳の王太子殿下にしっかりと手を握られ、6歳ながらの精一杯で口説かれているヴィオラ。やるな、6歳。胃袋から掴もうというのか! ……いや、それはどうでもいい。
その天使のような外見の王太子に目を細めながら相手をしているヴィオラは、国王陛下・妃殿下のおわしますテーブルに一席を許され、ずっと王太子に絡まれている。
そして王太子はヴィオラを独占するだけでは飽き足らず、僕をパシリに使う。……このガキ。今日の敵は独身貴族どもではなく王太子だったか!
無邪気という名の被り物をすっぽりとかぶった王太子は、僕を横目でちらりと見てからおもむろにヴィオラにすり寄り、
「ヴィオラ、ヴィオラ、ぼくが大きくなったらおよめさんになってね」
「まあ、うふふ。嬉しいことをおっしゃってくださいますが、その頃にはおばさんになってしまってますわ」
「ヴィオラならだいじょーぶ!」
よくわからない自信に胸を張る王太子を、また微笑ましいものを見るように暖かく微笑むヴィオラ。
こら、クソガキ! ドサマギで抱き付くんじゃない!
ヴィオラの腰に張り付いたそれをべりっと剥がしながら、
「残念でございますが殿下。ヴィオラは私の奥さんですからね」
とどす黒いオーラを発しながら極上の嫌味笑みで殿下に進言すると、
「え~? ヴィオラだってオッサンよりもわかくてピチピチしててかっこいいおとこのほうがいいとおもうんだ~」
……可愛らしく口を尖らせて言ってるが、言ってる内容は可愛くないぞ!!
ありがとうございました(*^-^*)
王太子様、6歳とありますが後々変わるかもです。
6歳と書いて『だいたいそれくらいのお子ちゃま』と読んでくださいw
深く考えずゆるーく読んでやってください。