ユーフォルビア伯爵家にて
いつかのリクエストから♪
近未来のお話。ヴィオラが里帰りしたときのシスルくん視点です。
まだあんまり黒くない?www
「お姉さま! お帰りなさい!」
ぼく――シスル・マンジェリカ・ユーフォルビア――は、久しぶりに会う姉ヴィオラに飛びついた。
「お姉ちゃま~!」
妹のフリージアも同じように、ぼくの反対側に抱きついた。
「シスルもフリージアも元気してた?」
いつも優しい笑顔のお姉さまは、変わりなく元気そうだ。
お姉さまがフィサリス公爵様と結婚し、早いもので一年が経とうとしていた。
「はい! 元気にしてましたよ! 最近は前のように色々足りなくて困ることもなくなりましたし」
まだ十三歳のぼくにはよくわからないこともたくさんあるけど、とりあえず貧乏のどん底は脱した気がする。むしろよくなってきたと思う。
「おかずがね、また一品増えたのよ!」
フリージアが得意そうに胸を張っている。ちなみにフリージアは九歳、まだまだおこちゃまだ。
「そう! それはよかったわ~」
お姉さまがにっこりと笑う。
家にいた時は本当に地味などこにでもいる何の変哲もない女の子だったのに、今目の前にいるお姉さまはとっても綺麗になってびっくりしている。我が姉ながら、うちにいた時は本当に地味だったと思う。社交も嫌いで、家にいるのが一番好きだと言ってはばからないようなお姉さまが、なんであんな名門貴族に見染められたのか、本当に謎だ。
今のお姉さまは、高価なドレスを着て外見だけがきれいになったというんじゃなくて、どちらかというと内側から輝いているという感じがする。うん、ぼくじゃよく言い表せないけど、とにかくピカピカと綺麗なんだ。
「お姉さま、なんか綺麗になりましたね! すっごい地味子だったのがウソのようです!」
ぼくが素直な気持ちを言うと、
「うん、何気に失礼だよね、弟よ。……いい、流しとくわ。う~ん、まあ、そおかなぁ? 別に変わったとは……うん、変わった? 変えられた? あ、でも、中身は一緒よ~」
とはにかみ笑う。途中何をモゴモゴ言ってるのか意味不明だったけど。
「お姉ちゃまはしあわせなんだよね~!!」
横からお姉さまの瞳を覗き込みながらフリージアが無邪気に笑った。
「ええ、そうよ~! 優しい人たちに囲まれて、お姉ちゃまは幸せなのよ!」
とお姉さまも笑った。それにほっとしてぼくも微笑んでさらにお姉さまにすり寄ったら、
「こら。そんなにべたべたしてたらヴィオラが暑苦しいだろ。」
と言ってぼくをお姉さまから引き剥がすヤツがいる。ちっ、旦那いたのか。
義兄上はお姉さまから見えない角度から、ぼくに威圧感たっぷり睨みをきかせてきている。この旦那、いつもお姉様の里帰りにくっついてくるんだよな。
ぼくも負けじとお姉さまから見えないところでじと目で義兄上を見ながら、
「暑苦しいなんて、そんなことないよね、お姉さま!」
「ええ、もちろんよ~」
お姉さまは優しく微笑んでくれるので、ぼくはさらに抱き付いてやる。
義兄上、ぼくにさえも嫉妬してるなんて笑かすよな。残念ながらお姉さまの中のヒエラルキー、ぼくの方が断然上なのにね。
「今日はもちろん泊まっていくでしょう?」
ぼくがお姉さまにおねだりすれば、
「あら。帰るつもりでいたんだけど、そうね、シスルがそう言うなら泊まっていこうかしら?」
お姉さまはちょっと困り顔だけどまんざらでもない様子。
「え?」
そして、お姉さまの急なお泊り発言に焦る義兄上。
「よろしいでしょう?」
小首をかしげて義兄上を見上げるお姉さまは、本当にかわいいなぁって思う。これが計算なら、お姉さまはすごいと思うけど、きっとこれ、天然だ。お姉さまはそんな人だもん。
「え、ええ、まあ……」
義兄上、こ~んなかわいいお姉さまにお願いされたら否とは言えないよね?
「わあ、義兄上! ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
ぼくは無邪気を装って礼を言う。フリージアは無邪気そのものだが。
その後一週間。我慢の限界が来た義兄上が迎えに来るまで、ぼくたちはお姉さまを引き留めてやったのだった。
ありがとうございました(*^-^*)