会えないお嬢様 〜バイオレットと王太子様3〜
リクエスト企画SSより♪
王太子様、レティちゃんに会いたいけど……w
僕の誕生日パーティーに来てくれたフィサリス家の令嬢・バイオレット。
まだ六歳だけど両親のいいところばかりを集めたようなかわいらしい様は、僕の心をかき乱した。
「公爵令嬢はまだ六歳でございますよ」
「うるさい、そんなこと百も承知だ」
側近にため息をつかれても平気だ。
パーティーの時はあまり話すことができなかったので、バイオレットと仲良くなりたいと思った僕は『王宮でお茶でもしよう』と誘ってみることにした。
手紙をしたため、公爵家に送る。
返事まだかな〜とウキウキしながら待っていると、
『おさそいありがとうございます。わたしはまだおうきゅうに行くには小さいので、もっとレディになってから行きたいとおもいます』
という断りの手紙が来た。
もっともといえばもっともなので、『王宮でお茶計画』は失敗ということだな。
この手紙はかわいいので永久保存しておく。
別の日。
僕が勉強していると、三番目の姉・ミリスティカ姉様がどこからか帰ってくるのが見えた。
いつもと違う質素な馬車に、あまり派手でないシンプルなドレス。まるでお忍びのような?
「姉上、どこに行かれてたのですか?」
「ん〜? ちょっとそこまで」
「はあ? ちょっとそこの、どこに行ってたんですか?」
「……んもう、レティのところよ。内緒なんだから」
「えええ〜!?」
やっぱりお忍び外出。しかもバイオレットのところって超絶羨ましい!
……いいこと思いついた。僕もお忍びで公爵家に行けばいいんじゃないか!
——なんて甘いことを考えて公爵家に急いだってのに。
「王太子様ともあろうお方がお忍びなど、言語道断でございます」
なんと、公爵家の執事にお説教される羽目に。しかも家にも入れてもらえず。
「姉上はよくて僕はダメなのか?」
「王女様のお出かけと王太子様のお出かけでは訳も重みも違います」
「まあ、そりゃ、確かにそうだけど……」
そうこうしているうちに近衛が僕を連れ戻しにきてるし! しかも先頭はフィサリス公爵とか!
「ご安心ください。殿下のことは通報しておきました」
「僕は犯人か何かか!」
「旦那様、お早い到着でございました」
「うむ。——ところで殿下。こっそり抜け出すなど、どういうおつもりかな? 周りの警護のことを考えてくださいね」
しれっと執事が公爵に報告していたようで、僕はあっさり公爵たちに捕まって連れ戻されてしまった。もちろんそのあとは、いろんな人からしっかりこってり怒られた。
もうこうなったら正面突破だ。
なかなかバイオレットに会えないじれったさから、僕は公爵に直談判することにした。
「公爵! レティに会いたいんだが、王宮に連れてきてくれないだろうか!」
「——殿下。人の執務室をノックなしにいきなり開けて第一声がそれですか」
バーンと近衛副隊長室の扉を開けながら僕が〝お願い〟したら、公爵がじとんと僕を睨んできた。
「まあ、それはいいとして。で、レティを連れてきてくれるのか?」
「お連れしたいのは山々ですが、娘はまだ幼く、マナーもまだ完璧とは言えません」
「マナーがなんだ。かわいいレティがどんな失敗をしても誰も咎めたりしないぞ!」
「咎められはしませんが、後々〝あの時あんな失敗をした〟と言われるかもしれません」
「それもいい思い出だろう」
「年頃になった時、そんな黒歴史を聞かされて娘が傷つくことがあったらどうなさるおつもりですか?」
「いや、それはその時は妃にもらう——」
「却下です」
「却下はやっ!」
「というわけで、娘に王宮はまだ早いです。以上。私は殿下と違って忙しいので、邪魔をしないでください」
そう言うと公爵は僕を執務室からつまみ出した。
ああもう、直談判もダメだったか。
それからもあれやこれやと誘ってはフラれ続けて半年後。
ミリスティカ姉様の誕生日パーティーが行われることになった。
「これならレティもくるはず!」
「公爵令嬢も招待されていましたね」
「やっと会えるぞ!」
「ロリコン殿下とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」
「やめろ!」
バイオレットを気に入っている姉上、ナイス人選!
僕は公爵一家の到着を今か今かと楽しみに待っていたというのに。
「……風邪?」
「はい。朝から熱が出ておりまして、残念ながら今日は欠席させていただきました」
非常に残念なお知らせ。
ああ、また会えなかった……がっかり。
ありがとうございました(*^ー^*)
こちらは『未来』のお話なので、ひょっとすると変わる可能性もあります。




