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未来予想図

懐妊後、結構時間経ってます。八ヶ月くらいでしょうか。

旦那様のお休みの日。

 ポカポカと暖かい陽気に鮮やかな新緑が目にも眩しい季節。

 暑くもなく寒くもなく、ちょうどよい柔らかな風が吹き抜ける昼下がり、僕とヴィオラは庭園に出ていた。

 仕事が休みで天気のいい日には、こうして庭園でのんびりと過ごすことが多くなった。――いつぞや、ここでヴィオラとベリスの仲を疑ったのは黒歴史だ。ヴィオラとミモザにはいつまでもそれをネタにされるけど。……まあ、あの時から、こうして庭園でのんびりするのもいいなと思いだしたんだが。


 いつでも綺麗に整備されている芝生の上に敷物を敷き、その上にまだ幾重にも毛布を重ね、さらにクッションを配置すれば準備万端。これで冷えないし、座り具合もフカフカでばっちりだ。

 敷物の後ろではテーブルとパラソルがセッティングされ、ロータスやステラリアがランチとお茶の準備をしてくれている。

 念入りにクッションを整えてから、僕は日傘を手にして佇んでいるヴィオラに微笑みかけた。


「これでいいかな?」

「はい、充分ですわ」


 そして華奢な体を支え、ゆっくりとヴィオラをクッションの上に座らせる。

 僕もその横に座ると、昼食が運ばれてきた。

 カルタム特製のサンドイッチはヴィオラのお気に入りだ。そういう僕も、気に入ってる。

 以前の僕ならばこういった軽食はあまり好まなかったんだけど、ヴィオラが好むので一緒に食べているうちに、だんだんとその良さがわかってきた。

 いい香りのお茶も運ばれてきて、のどかなランチタイムが始まった。


「今日は体調どお? 無理して食べなくてもいいけど、やっぱりたくさん食べた方がいいんじゃないかな」

「お天気がいいせいか、今日は気分がいいですよ大丈夫です。食べられるだけ、いただきます」

「そう」


 ヴィオラは最近まで体調が良くなく、もともと小食だったのがさらに食が細くなってしまったので、少し過保護になってしまうが、今日は顔色もいいし本人が言うとおり調子がいいのだろう。それでもにっこりと微笑んだ頬が、少しほっそりとしたなと思う。

 



 文句なく美味しい昼食をいただき、満足感と幸せに満たされる瞬間。

 気が付くと、隣でヴィオラがうとうとと舟を漕いでいた。


「ヴィー、眠いの?」

「美味しいものをお腹いっぱい食べたし、日差しは暖かいし風は気持ちいいしで、眠たくなっちゃいました~」


 目をつぶりながらふわぁ~とあくびをする。これはもう半分寝てるな。

 そんなヴィオラを無邪気だなぁと、周りにいる使用人たちの頬も緩む。

 そのままゆらゆらしているのを見ているのも楽しいけどやっぱり危ないから、よく手入れされた柔らかいストロベリーブロンドを引き寄せ、僕の膝に誘導すると、


「あ、膝枕」


 ふにゃんと破顔する。そのかわいらしさにドキッとする。

 そのドキドキを悟られぬよう、僕は何食わぬ顔でその形のいい頭を撫でる。


「ゆっくり寝てていいよ」

「ふふふ、ありがとうございます」


 猫のように頬を摺り寄せ、幸せそうに目をつぶるヴィオラ。

 僕はそのまま柔らかな髪を堪能し、もう片方の手で丸く膨らんだお腹を撫でる。

 よほど眠たかったのか、あっという間に夢の国に旅立ったヴィオラ。

 でもいくら陽気がいいとはいえ、眠ってしまえば体は冷えてしまう。身ごもっているからだを冷やして大事に至ってはいけない。

 僕は後ろに控えるロータスを振り返り、


「ロータス。何か身体に掛けるものを。冷えてはいけない」


 と、毛布か何かを用意するように言いつけると、


「はい。こちらを」


 初めから用意してあったのか、すぐさま軽くて暖かい掛物が手渡された。僕はそれを受け取ると、そっとヴィオラの身体に掛ける。

 すやすやと眠るヴィオラの顔を見ているだけで幸せだけど、あと数か月もしたらお腹の子に会える。男でも女でもいい、ヴィオラの子供だから、きっとかわいいに違いない。ああ、親ばかになりそうだ。僕。

 

 そんな他愛のないことを妄想する、麗らかな午後――。


ありがとうございました(*^-^*)

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