表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/73

王太子様、恋に落ちた? 〜バイオレットと王太子様2〜

リクエスト企画より♪


今回はちゃんとレティに会えた王太子様w

 今日は僕の十二歳の誕生日パーティー。

 王宮に貴族やその子供たちを呼び、盛大なパーティーが開かれる。

 なぜ子供たちもかって? それはそこから未来の側近や友達(いわゆるご学友ってやつか)、妃の候補が上がるから。

 子供って言ってもさすがに赤ちゃん連れてくるのは大変だから、下は六歳からって決まりがある。なんとなく分別つく年頃ということで。

 毎年誰かがパーティーデビューするんだけど、今年は〝アノ〟フィサリス公爵家の娘がデビューする。

 今日の招待客はみんな、僕の誕生日よりもそっちに気が向いている。


 あの公爵とヴィオラの間の子供、どんなお嬢様なんだろうって。


 かくいう僕も期待している一人だけど。

 幼い頃から大好きなヴィオラの娘だぞ? かわいくないわけがない。あ〜でもなぁ、ヴィオラはかわいいけど、公爵がかわいくないからなぁ。ここジレンマ。

 以前、偶然王宮内で出会ったことがあったけどあれはマジ天使だった。

 刹那の邂逅で名前も聞けずに終わったけど(てゆーか公爵がさっさと連れて行ってしまった!)。


 不安と期待が入り混じった複雑な気持ちで招待客の挨拶を受けていると、


「フィサリス公爵様、奥様、お嬢様、ご到着!」


 という声が聞こえてきた。

 おお、とうとう来たか!

 どんな子に成長したか早く見たくて入り口の方を見ていると、招待客たちがきれいに左右に分かれて道を作っていた。

 花道とも言えるそこを堂々とやってくる公爵。

 いつも以上にゆったりとした歩調なのは、今日はヴィオラではなく娘をエスコートしているから。二人の後ろからヴィオラがついてくる。でも娘は小さくてまだ見えない。


 ようやく僕の眼の前まで来た公爵一家。


「ディアンツ殿下、お誕生日パーティーにお招きいただき、ありがとうございます」

「王太子殿下、お誕生日おめでとうございます」


 優雅に騎士の礼をする公爵と、上品に挨拶するヴィオラ。

 そんな姿も僕の目には入らなかった。

 なぜなら。


「おうたいしさま、おたんじょうび、おめでとうございます。はじめまして、バイオレットともうします」


 一人前のレディのような挨拶をするバイオレットに釘付けになってしまったから。


 え、ちょっと待って、めっちゃくちゃかわいいんですけど!? 天使が成長して大天使になってる。


 ふわふわとした濃茶の髪にクリッとした濃茶の瞳。柔らかそうな淡い水色のドレスがとてもよく似合っている。

 父上(国王)や僕を前にして緊張している感じが、庇護欲をそそられる。

 癪だけど公爵は美形だし、ヴィオラは言わずもがな。そのいいとこ取りをしたようなバイオレットは、六歳にして将来楽しみな感じがすごいする。

 それに、


「ごあいさつ、ちゃんとできました!」

「うん、よくできたね。えらいえらい」


 公爵に向かって得意げな顔をするバイオレットの、なんとも言えないかわいさったら……!

 ちゃんと挨拶しなくちゃいけないという緊張から解放された、その屈託のない笑顔の破壊力。

 まだ僕たちの前だということをすっかり忘れて素に戻ってしまうところは、普通の子どもらしさがあってめっちゃかわいい。僕も公爵に負けず劣らずデレデレした顔になってしまってると思う。

 ヤバい。落ち着こう、自分。相手は六歳だ。

 でもでも、かわいいは正義だ。……って、どっちなんだ!

 僕が葛藤しているその横で、


「小さいのにえらいな、バイオレットは」

「上手にご挨拶できましたよ」


 なんて、父上も母上もメロメロになってるし……。その目は完全に孫を見る目ですよ!




 そうだ、バイオレットは今日の招待客、しかもデビュタントなんだから、僕が特別かまったっていいんだよね。

「バイオレット、こっちで僕と一緒にお話ししようか。今日初めて会うしね。好きなお菓子も飲み物も、なんでも持ってきてあげるよ」

 僕が自席にバイオレットを誘うと、その大きな瞳でじっと僕を見つめたかと思うとその瞳を潤ませ、

「ごめんなさい、さっきバーベナお姉ちゃまが私の席をよういしてくださったの」

 ぺこりと頭を下げるバイオレット。

「そっかぁ。じゃあ、あとでダンスはできる?」

「まだあまりとくいじゃないんです。いつもロータスに『もっとがんばりましょうね』って言われちゃうの」

「そっか」

 そんなしゅんとした顔をされたらぎゅっと抱きしめてやりたく……おっと、公爵が射殺さんばかりの視線でこっち睨んできてる。ヤバい、これはバイオレットを泣かせでもしたらフルボッコにされるパターンだ。

「大丈夫、大丈夫、きっと上手になるよ! じゃあ、ダンスじゃなくて……」

 僕が、どうやってバイオレットをここに引き止めておこうかと考えていると、


「あ、バーベナお姉ちゃまがわたしをさがしてる! わたし、いかなくちゃ」


 バイオレットはそう言うと、さっと踵を返してアルゲンテア公爵令嬢たちの元に行ってしまった。


 これって、フラれた……? 今日、僕、主役だよね? 主役の誘いを断るって……。こんなところで六歳児の無邪気さ爆発か〜い!


 僕が地味に凹んでいると、


「ディアンツ、ドンマイ。レティはよく知らない王太子様よりも、いつもかわいがってくれてるバーベナさんたちの方がいいんですってよ」


 いつの間にかそばに寄ってきていたすぐ上の姉——ミリスティカ姉様が慰めてくれ……てないな、これ。めっちゃ笑いをこらえてるから。



 それから、どうしてもバイオレットと仲良くなりたい僕は、あの手この手で『王宮に遊びにおいで』とバイオレットを誘うのだが、いかんせん公爵(家?)のガードは固く、次に会えたのは次の年の誕生日パーティーだった。

ありがとうございました(*^ー^*)


こちらは『未来』のお話ですので、ひょっとしたら『未来』は変わってくるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ