あの日の自分をやっぱり殴りたい
活動報告SSより。
好奇心旺盛になってきたバイオレットの質問にタジタジするパパw
書籍8巻冒頭の元ネタ。サーシス視点です♪
「おかえりなしゃいませ、おとーしゃま!」
そう言って誰よりも先に駆けてきてくれるのは、最近ますますかわいく成長してきたバイオレット、三歳。
トテトテと走ってきて僕に飛びつくのがマイブームで、僕はそれをひょいっと抱きとめる。
「ただいま、レティ。今日もお利口さんにしていたかな?」
「してました!」
そう言ってにこーっと笑った顔はヴィオラに似ていると思う。
やばい、うちの子マジかわいい。
僕がバイオレットのかわいさにデレデレしていると、
「おかえりなさいませ、サーシス様。レティったら、お父様とお話ししたいってずっと待ち構えていたんですよ〜」
僕たちのやり取りを笑いながら見守っていたヴィオラが言った。
「僕に話? 何だろう?」
「さあ? レティは最近いろんなものに興味が出てきたみたいで、『なんで、どうして』ばかり言って、みんなを質問攻めにしてるんですよ」
確かに好奇心が旺盛になってきたバイオレットは、とにかく「これは何? どうして?」など質問を繰り返している。特にロータスとダリアにはくっついて離れないらしい。
その矛先が、今日は僕らしい。
「そっか。じゃあご飯を食べたらお話ししようか」
「は〜い」
僕はバイオレットを抱っこしたままダイニングに向かった。
「あのねあのね」
晩餐後、僕はバイオレットを膝に抱き、サロンのソファーに座っている。
まだ流暢にしゃべれないながらにも、一生懸命に話そうとするうちの子超かわいい。
「なに?」
何を聞かれるのか、ちょっと楽しみにしながらバイオレットの質問を待った。
しかし、帰宅してからずっと締まりのなかった顔が(大丈夫、自覚してる!)、次のバイオレットの言葉で引き攣ることになろうとは……。
「おとーしゃまとおかーしゃまはどうしてけっこんしたの? おかーしゃまとどこでであったの?」
ぶふ〜っ!!
セーフ。なにか口に入れていたら吹き出すところだった……。って、バイオレット! よりにもよってその質問するか〜!
ちょっと特殊な事情で結ばれた僕たちだから、そのなれそめを素直に話していいものかどうか……って、絶対よくないよな。
どうしたものかと僕が目で助けを求めると、ヴィオラやロータス、その他の使用人たちが一斉に目をそらせた。おい、ここは一人で乗り切れってか!
「う〜ん、お父様がお母様を夜会で見かけたのがきっかけかな」
「ふうん。じゃあ、先におとーしゃまがおかーしゃまを好きになったの?」
「そうだよ!」
結婚した後からとはバイオレットの前では言えないけどね。
でも間違いなく僕の方が先にヴィオラを好きになった、それは言い切れるぞ! あ、ヴィオラがうつむいて肩を震わせてる。
「おかーしゃまにはなんていったの?」
「え?」
「けっこんしてくだしゃいっていったの?」
「「え〜と」」
無邪気に聞いてくるバイオレットに、これにはヴィオラと二人で焦る。
「結婚してくださいって−−」
……言ってないな。
ヴィオラの顔にも『言われてねぇな』って書かれてある。
あの時のセリフ……うわぁぁぁ!! 絶対思い出したくないっ!!
もうなんなんだよあの時の自分、最低最悪じゃないか!! ほんっっっとあの時に戻れるなら、自分を殴り飛ばしてプロポーズやり直したい!!
僕の心はあの時を思い出して自己嫌悪に陥ってるというのに、バイオレットは純粋にキラキラした目でこっちを見てくる。
くっ、うちの子リアル天使か!
焦っているのを悟られてはいけない、でもこの苦しい状況をどう切り抜けようかと悩んでいると、
「あっ、ほら、お父様はお母様のおうちが困ってるのを助けてくれたんですよ〜。で、そんなお父様をお母様は好きになっちゃったので、結婚しましょうってことになったんです〜」
救世主キター!
ヴィオラが、わかるようなわからないような微妙な答えを言ってくれた。辻褄とかなんかいろんなものがおかしいことになってるけど、全然オッケー。助かった!
「そうなんでしゅね」
「そうなんだよ」
バイオレットが納得しているからこれでいいのだ!
『ありがとう!』
『どういたしまして』
バイオレットの頭越しにヴィオラとアイコンタクトする。
そういう意味では僕らって共犯だよなぁ。なんてったってプロポーズが『愛人と一緒にいたいからカムフラージュの結婚ヨロ!』で、その答えが『借金返してくれるならバッチコイ☆』だもんな。といっても罪深いのは僕だけど。全面的に僕が悪い。
いやほんと、あの時の自分を殴りたい……っ。
それより緊急課題。
バイオレットが今より大きくなってまたこの質問を繰り返してきた時のために、ヴィオラと『いい感じ』の答えを考えておかねば。
ありがとうございました(*^ー^*)




