熱帯夜の悪夢 〜夢オチシリーズ〜
活動報告より
ここは……どこだろう。
真っ暗で周りが何も見えない。
ひとりぼっち、佇んでいる僕。何が……どうなっているんだろう?
何か手がかりでも、と考えて周りを見渡していると、突然まばゆい光が僕を照らした。
まぶしいな、くそ!
手で目を覆い、光から逃げる。
少しまばゆさに慣れたところで、光の中に誰かがいるのに気が付いた。
光に反射してきらめくふわふわのストロベリーブロンド。ああ、それは——
「旦那様」
いやに真面目な顔ーーむしろ無表情に近いーーをしたヴィオラが声をかけてきた。『旦那様』って、前の呼び方に戻ってるのはなぜだ? なんだかよそよそしい態度も気になる。
「ーーどうしたの? いやに改まって」
僕はスポットライトを浴びて佇むヴィオラに近づきながら声をかけた。
いつもならうれしそうに微笑むヴィオラなのに、今日はニコリとも笑わない。
しかも。
「お別れしましょう」
はい? コノ子今なんつった?
「え? ヴィオラさん?? 何て言ったのかな?」
ちょっと理解できなかったぞ。うん、冷静になれ、僕。
いやな汗が背中を流れていく。
きっと聞き間違いか何かだと自分に言い聞かせ、落ち着いてヴィオラにもう一度聞き直したら、
「お別れしましょう、と言いました」
「…………」
今度は一語一語はっきりくっきり聞き取れてしまった……。
なんでだ!? なんでいきなりそんなことを言い出すんだ!? ヴィオラに嫌われるようなことをした覚えもないし、むしろ仲良くやってると思ってたんだけど!?
ヴィオラの発言が、あまりにも衝撃的すぎて絶句していると、
「こんなにたくさんお付き合いなさってる方がいるなんて、知りませんでした」
それまでの無表情から一転、ジト目でこちらを見てくるヴィオラ。
はぁぁぁぁ!? 『お付き合いしてる方』だと!? ヴィオラが愛しくてたまらない存在となった今、そんなもんいるわけないし!!
しかも『たくさん』てどういうことだよ??
「いや、ちょ、待って? ヴィーの言ってる意味がわからないんだけど?? お付き合いしてる人って、そんな人いないけど?」
「あら、◯◯伯爵令嬢、◯◯子爵令嬢、それから、地方に行かれた時の◯◯さん、それから……」
指を折りながらスラスラとよどみなく女の名前をあげつらうヴィオラ。
ちょっとまて。確かにどれもこれも身に覚えのある名前だけど、でもそれ、ものすごーい昔の彼女だからね? 今は綺麗さっばり縁切れてるからね? そもそもそんな昔の彼女のことなんて、ヴィオラは知らないでしょ。
「いったい誰からそんな名前聞いたの?」
誰だ。しょーもないことをヴィオラに吹き込んだやつは? わかり次第成敗してくれるっ!
するとヴィオラは涼しい顔で、
「ご本人たちからですわ」
なんて答えてくれたけど。
はい? ご本人??
わけが分からなくなってボーゼンとしていると、ずらっとヴィオラの後ろから出てくる歴代彼女たち。……何処から湧いてきた!?
そして、
「サーシス様」
「公爵様」
口々に僕の名を呼び、詰め寄ってくる彼女たち。え、なにこれホラー!?
顔は笑ってるけど目が笑ってない!!
ヴィオラは!? ヴィオラはどうしてる? まずはヴィオラを守らないと。こいつらに何かされてないか?
そう思ってヴィオラを見ると、怒ってるでもなく笑ってるでもなく、ただ元のように無表情にこっちを見てるだけ。なんの表情も乗せてないって、これも怖いんですけど!?
「ちょ、くるな!! ヴィオラ?! ヴィオラ! ヴィオラ……」
元カノたちの手を必死に振りほどき、愛しいヴィオラに手を伸ばすけれど————
「うわぁぁぁぁぁ!!」
自分の叫びで目が覚めた。
ガバッと飛び起きると周りを確認する。迫ってきた女どももいない。
まだバクバクいってる心臓を押さえながら窓の外を見れば、まだ夜は明けていないようだ。……そしてここはいつもの寝室だった。
ホッとして息を吐くと、じっとり汗ばんでいたことに気付く。
ああ、嫌な夢を見た。なんであんな夢を見たかな?
そっと額の汗を腕で拭った時。
「うーん、サーシス様、うるさいですー」
かわいらしい声が聞こえた。
ヴィオラが僕の横で寝ぼけながら寝返りを打っていた。
よかった、ヴィオラもこうしていつも通り僕の横で眠ってる。あれは夢だ、僕は悪い夢を見たんだ!
わ〜はははは!! ……はあ、びっくりした。まだ心臓がバクバクしてるけど。
しかし怖い夢だった。
何が怖いって、ヴィオラが僕に無関心なところがだよ!!
……今日は暑くて寝苦しいからこんな変な夢を見たんだな。
気がつけばカラカラになっていた喉を、ベッドサイドに置いていた氷ーーもはやすっかり溶けてただのぬるい水だがーーで潤す。
ふう、落ち着いた。
起きるには早い時間だし、も一度寝るか。今度は幸せな夢を見るぞ!
そう思って布団に潜り込み、ヴィオラ(安眠の素!)を抱きしめようとしたんだけど。
「あーづーいー!(怒)」
「ぶふっ?!」
寝返りがてら振り下ろされたヴィオラの腕が、僕の顔にクリティカルヒットしたのだった
ありがとうございました(*^ー^*)




