お嬢さんを僕にください 本番編 〜ユリーさんとリアさん その6〜
活動報告より。
そしていよいよ、ユリダリスがカルタムたちのところに挨拶にやってきました。
公爵家のサロンに通されたユリダリスは珍しく緊張しているようで、右手と右足が同時に出そうな勢いです。
カルタムとダリア、そしてユリダリスとステラリアは、向かい合って座りました。
こっそり話を聞く気満々だったヴィオラですが、「こら、盗み聞きしない」とサーシスによって別部屋に連行されたのはご愛嬌。
「お嬢さんと結婚させてください! 誰よりも何よりも大事にしますし、泣かせるようなことは絶対しませんから」
ユリダリスは直球でステラリアの両親にお願いすると、ガバッと頭を下げました。
いつもニコニコしているカルタムが今日は珍しくいかつい顔をしているかと思うと、その横でダリアは、困惑気味に状況を見守っているようです。
一瞬の静寂を破ったのはカルタムでした。
「何処の馬の骨ともわからん男に、大事な娘はやれん!」
頑固オヤジのように腕組みし、ユリダリスを睨みつけるカルタムでしたが、
「あなた。侯爵家のご子息様ですよ。しかも旦那様の部下でありご友人ですし」
いつも通り冷静にツッコミを入れるダリア。
「うん、知ってる。いや、一回言ってみたかっただけだよ、満足したから!」
「「「…………」」」
お約束のセリフを言ってご満悦なカルタムは、さっきまでとは打って変わって笑顔を浮かべています。
そんなカルタムを呆れ顔で見る三人ですが、本人は全然気にしてないようです。
しかし咳払いを一つして真顔に戻って、
「とまあ、冗談はそれくらいにして。うちの娘はそんな、侯爵様のご子息のところに嫁にいけるような身分ではございませんので……」
やはりここはいちおう断りを入れようとしました。
「身分など気にしなくて大丈夫です! 私は三男ですし、貴族というよりもはや一介の騎士です」
「いやいや。そうおっしゃりますが、たかが使用人の娘との結婚など、やはりご両親は本心ではお許しになっておられないのでは」
「そこは大丈夫です! リア、この間の話はした?」
「はい」
「侯爵家を訪れたお話は聞いております」
ステラリアの言葉を受けて、カルタムたちが首肯すると、
「ご両親がウンと言わなくても、もうプルケリマ家ではリアが僕の婚約者だと認められていますので」
ニッコリ笑うユリダリスでした。
「恐れながら、まさかの男色疑惑……」
「それ、おたくの主人の戯言ですから!! ぜんっぜん違いますから!!」
疑わしげなカルタムに、食い気味に突っ込むユリダリスです。
「うちの"娘"でよろしければ……」
そう言ってカルタムとダリアが顔を見合わせています。
「その"娘"さんがいいんです!!!」
また勢いよく突っ込むユリダリスでした。
晴れて婚約者同士となったユリダリスとステラリア。
ユリダリスはステラリアを伴って、騎士団の創立記念パーティーに出席しました。
二人を見て驚いたのは、ユリダリス(とサーシス)の部下の面々です。
「プルケリマ小隊長が女連れ!」
「い〜〜っつもなんだかんだ言ってパートナー連れてこなかったアノ小隊長がっ!?」
「しかもあの子って、こないだまで姫さま付きの女官だった子じゃね? いつの間にか見かけなくなったなぁと思ったら……!」
「彼女作る時間あったの? ねえ、そんな時間あったの? 俺なんて今日のパートナー、オカンだぜ?」
「ぷぎゃ〜〜〜!!」
「「「「「くっそ、いつの間に〜〜〜!!」」」」」
リア充爆発しろ。と呪いをかける面々でした。
*** おまけ ***
「ステラリアの援護をしなくては! 身元保証だけでいいのかしら? ステラリアは出自もはっきりしているしいい子ですよ、大丈夫ですよ、っと」
便箋に書き付けるヴィオラ。
「えらくざっくばらんな身元保証書ですねぇ」
「直筆サインがあれば大丈夫でしょ? あ、そうだ、サーシス様も書いて下さいよ! サーシス様なら後ろ盾にもってこい☆」
苦笑しながら見ていたサーシスに、ペンと便箋を押し付けるヴィオラ。
「はいはい」
「あとはロータスとぉ、お義母様かな。お義母様から王妃様とかの推薦もらえるかなぁ? もらえたら完璧なんだけどなぁ」
「これ就職試験か何か?」
指折り数えながらブツブツ言うヴィオラを微笑ましく見つめるサーシスでした。
のちほどヴィオラの推薦状を見たロータスに「書式がなっておりませんね」と添削された(しかも真っ赤)のは内緒。
*** おまけのおまけ ***
「リアに会いたいから連れてきなさい」
というプルケリマ侯爵夫人からのリクエストで、ちょくちょく侯爵家に呼び出され……げふげふ、遊びに行くようになったステラリア。
今日もおいしくお茶飲みましょうね〜と言いつつ侯爵夫人が取り出したのは、何やら封書らしきもの。
「あれからね、こんなものが届いたのよ。フィサリス公爵夫妻、前公爵夫妻、公爵家の執事、王宮からは王妃様や姫君たちから『ステラリアなら大丈夫☆』っていうお墨付き」
クスクス笑いながらずらっとテーブルに並べました。
「まあ!」
まさかの応援団に、ステラリアがびっくりしています。
「おおすげぇ……錚々たるメンツだなぁ」
ユリダリスも感心しながら書簡を見ています。
「こんなに応援団がいるなんて、リアは愛されてるのね」
そう言って優しくステラリアを見つめる侯爵夫人でした。
ありがとうございました(*^ー^*)
 




