ユーフォルビア家の日常
書籍第3巻発売記念リクエストより♪
ヴィオラの実家、ユーフォルビア家の日常、というか、ある日。
ユーフォルビア家の一日は、全員そろった朝食から始まります。
家族だけではありません、数少ない使用人も一緒です。
伯爵とシスルが席に着くと、夫人と執事のオーキッドが食事を運んできます。まだ料理を運ぶには危なっかしいフリージアはカトラリー担当です。
夫人たちによって手際よく料理やカトラリーが並べられると、今日の食事に感謝をしながらいただきます。
「お父様、今日は遅いんですか?」
「今日もいつも通りでそんなに遅くならないよ」
「シスル、学校はどう? ちゃんと馴染めてる? 勉強も大丈夫なの?」
夫人が伯爵に今日の予定を確認したり、ちょっとおしゃべりしながら朝食をとります。
シスルはヴィオラが結婚した後、学校を替わりました。姉――ヴィオラが輿入れするまでは普通の貴族が行く学校に通っていたのですが、シスルの頭の良さを買ったフィサリス家から『是非に』と言ってきたので、上流貴族が通う学校に編入したのです。レベルも高けりゃ授業料も高い、そんな学校です。
「どっちも大丈夫だよ。勉強は余裕。友達もできたし、意地悪してくるやつもいないよ。みんな僕が『誰の(義)弟』かっていうことをよく知ってるからね」
「まあ! それはよかったわ」
にっこり。母と息子は微笑み交わします。その横で、父と娘は黙ってもきゅもきゅと口を動かしています。
仕事に行く伯爵と学校に行くシスルを夫人とフリージアが玄関で見送って、慌ただしい朝が終わりました。
朝食の片づけを夫人とフリージアが終えると、そこからは怒涛の家事労働です。
ヴィオラがいた時は夫人とヴィオラの二人で手分けしていましたが、今は夫人がほぼ一人でやっています。しかし最近ではフリージアも急成長を見せてきていて、かなり戦力になるようになってきました。
掃除・洗濯・庭仕事、そして買い物。てきぱきと二人でこなしていきます。
買い物は、以前はマルシェまで毎日行っていたのですが、最近では行きつけだったお店やさんが配達してくれるようになりました。ふらっと買い物に出るのは気を付けてください、とフィサリス家からお願いされているからです。夫人は、フリージアに交渉の仕方を実地で教えられなくなってどうしたもんかと思っていますが、フィサリス家に迷惑はかけられないので大人しく配達してもらってます。でもやっぱりお値引き交渉は忘れません。次の注文をするときに必ず交渉し、それをフリージアは見て学んでいます。
夕方、シスルが学校から帰ってくると、フリージアはシスルと一緒に勉強します。フィサリス家からはフリージアのために家庭教師を派遣すると言われていますが、まだいいです早いです、と丁重に辞退しています。
勉強が終われば、フリージアはまた夫人のお手伝いをして一緒に晩餐を作ります。最近では刃物を持っても大丈夫な感じになってきました。ヴィオラがいなくなった穴を補って余りある日が来るのは近いでしょう。
そして伯爵が帰ってくると晩餐が始まります。
朝食同様、家族と使用人が和気藹々と食べるのがユーフォルビア流。最近ちょっと品数が増えたので、みんな喜んでいます。
しかし今日の晩餐は少し様子が違いました。伯爵とオーキッドが、何だか落ち着きがないのです。
「あなた、どうかなさったんですか? 仕事で何かあったんですか?」
不審に思った夫人が尋ねると、
「それがだね、今日領地から連絡が入ったんだけど、うちの領地で作っている織物がごっそりと売れたらしいんだよ。しかもほぼ言い値で」
「ええっ!? 本当ですか? 騙されてるんじゃないんですか、それ?」
「いやいや、本当なんだよそれが。これまで細々とは売れてたけど、在庫がなくなるほどごっそりとまでは売れたことなかったからびっくりしちゃって。なあ、オーキッド」
「はい、旦那様」
「在庫がなくなるほどなんですか?! じゃあ結構な収入になるんじゃないですか?」
「ああ、そうだよ」
「まあ~!!」
急な話に、普段は冷静な夫人も驚きを隠せない様子。
「せっかくだし、何か欲しいものとかいいものを買おうか」
ちょっとそわそわしながら言う伯爵ですが、
「何をおっしゃるんですか! もしもの時の為の貯蓄に回しますよ!」
「デスヨネ~」
夫人に一蹴されるのでした。
今日もユーフォルビア伯爵家は平和です☆
ありがとうございました(*^-^*)
ごっそり買って行ったのは特務師団ですw
オーランティア国潜入の際のカムフラージュ(外国産織物の商人に扮装してましたので)に使いました。




