突撃☆フィサリス公爵家!
いつかのリクエストから♪
シスルとフリージアが公爵家に遊びに行くことに。時間的に、『周辺状況』8話目、『ユーフォルビア家にて』よりも前。シスルくん視点
「よかったらうちに遊びにおいでよ~」
というお姉様の誘いにのって、ぼくと妹のフリージアはフィサリス公爵家に遊びに行くことになった。
公爵家からお迎えの馬車がきた。うちのと全然違う立派な馬車に、さすがにちょっと気が引けるなぁ。
そんな馬車に揺られてお屋敷に着いたのはお昼前。
これまたうちとは違う、超立派なお屋敷。……いやこれもうお城でしょ。
あまりの格の違いに、さすがにお屋敷の中に入るのをためらっていると、
「いらっしゃ~い!! シスル、フリージア! 今日はゆっくりできるでしょ? なんだったら泊まっていってよ」
「うん、ありがとう」
「ありがとう、おねえちゃま」
門のところまで迎えに出てきてくれたお姉様が、そう言ってぼくとフリージアをハグしてきた。
変わらないお姉様の優しさにホッとする。
「ね、ロータス、いいでしょう?」
「もちろんですとも。いらっしゃいませ、シスル様、フリージア様」
お姉様が後ろにいたおじさんに確認すると、おじさんは優しくニッコリと笑いながら同意してくれた。執事さんかな。オーキッドよりも若そう。しかもかっこいい。
しかし大きなお屋敷だなぁ。うちの何倍あるだろう? でもそんなことを口にするのはちょっと恥ずかしいので黙っていると、感激に目をキラキラさせたフリージアが。
「おっきなおやしきね、おねえちゃま!!」
無邪気に言えるフリージアが羨ましい。
お屋敷の中に入ると、
「まあ! こちらが奥様の弟様と妹様ですかぁ!」
「キャ~! かわいい~!」
「妹様、ちっちゃい奥様みたい~!!」
「でしょ~! 私も可愛くてたまらないんです~」
待ち構えていた使用人さんたちにもみくちゃにされた。お姉様も同じようなこと言って、ニコニコして止めないし。
お昼の用意ができるまでサロンに案内されたんだけど、とっかえひっかえ使用人さんが顔を出しては、さっきみたいなことを言っていく。
使用人さん、多過ぎでしょ。しかもちょーフレンドリーだし。びっくりした。
「ムッシュウ、マドモアゼル! カルタム特製お子様ランチですよ~。たーんと召し上がれ!」
そう言って白い帽子と白いエプロンをした陽気なイケメンおじさんが、僕とフリージアの前に、見たこともないような御馳走がのったお皿を置いていった。たくさんのってるけどかわいらしく一口サイズになっている。すごいなぁ、一人づつにあるんだ。家ならみんなでとりわけなのに。
「うっそ、カルタム自らお給仕とか!」
「ははっ、マダ~ム! 今日は特別ですよ~。なんてったってマダ~ムのかわいいご兄妹がいらっしゃってるんですからね~」
「すみません奥様、厨房を抜け出してまで会いたかったみたいです」
「ははっ! ダリアは厳しいねぇ。ほら、ムッシュウたちを見てると、うちの子たちの小さい時を思い出すじゃないか!」
「仕事中です」
お姉様とエプロンのイケメンおじさんと真面目そうなおばさんが話をしている。さっきからおばさんは呆れ顔でおじさんを見ている。
カルタムさんって誰か知らないけど、面白いおじさんだな。
うちの庭を整備してくれたベリスさんと庭園を散歩したり(これがまた広すぎてびっくりした!)、ひっきりなしに来る使用人さんたちから差し入れられるお菓子をいただいていたりしたら、あっという間に夕方近くになった。
サロンに戻ると、使用人さんたちの手でぼくとフリージアのお泊り支度がすっかり整えられていた。夜着とか明日の着替えとか、何から何まで、しかも新品。ちょ、仕事早すぎでしょ。その仕事の早さにまたまたびっくりさせられた。って、今日は驚いてばかりだ。
「すっかりお泊り用意ができてますねぇ!」
「はい! せっかくですもの、ゆっくりしていってほしいですからね」
「ありがとう!」
お姉様が侍女さんたちと話している。
そしてお姉様が僕たちの方に向かって、
「じゃあ今日は私のベッドで一緒に寝ましょ! とってもおっきいのよ~!」
「わぁ! 本当?! おねえちゃまと一緒のベッド、楽しみ~!」
うれしい提案をしてくれた。
無邪気に喜ぶフリージア。でもぼくもうれしい。
そうしてぼくたちのお泊りが確定したころ。
「奥様、旦那様がお戻りになられました」
サロンでまったりとしていたお姉様を、侍女さんが呼びに来た。そうか、義兄上帰って来たのか。義兄上に会うのも久しぶりだなー。
そんなことを思いながら、お姉様と一緒にお出迎えする。
「ただ今戻りました、ヴィー! 今日も一日機嫌よく過ごせましたか?」
義兄上は出迎えたお姉様を見つけるや、抱き付いてきた。人目とか気にしないのかな。
しかし相変わらずコノヒトお姉様大好きだなぁ。お姉様を見た途端に笑み崩れたよ。
義兄上に会うのは久しぶりだなぁってさっき思ったとこだけど、いつ以来だっけ? ……ああ、そっか。お姉様がお屋敷で粗相をしてしょげて帰ってきた時だっけ。あの時の義兄上、ソッコー迎えに来てたね。
実家にお姉様を迎えに来た時の義兄上を思い出す。結局ぼくとフリージアでお姉様を引き留めたんだけど。
ぼくがしれっと二人を見ていると、お姉様は義兄上を押し戻しながら、
「はい! 今日はシスルとフリージアが来てくれてますの! 一緒に晩餐、よろしいですか? 今日は泊まっていってもらおうと思ってますの」
「モチロン、ヨロコンデ!」
ぼくたちの方を見てお泊りのことをお願いしている。義兄上は今初めてぼくたちに気付いたようで、ぼくと目が合うと一瞬ひくっと頬をひきつらせた。
おいおい、義兄上。棒読みだぞ。ぼくたち、いや、ぼくの方を意識してんの、丸わかり。
あの時ぼくがお姉様を引き留めたのを根に持ってんな!
でもそんなこと、知ったこっちゃない。
「お邪魔します」
「おじゃまします!」
ぼくとフリージアは、無邪気な笑顔で義兄上にごあいさつしたのだった。
ありがとうございました(*^-^*)




