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騎士団メンツに春が来た?

いつもこき使われている騎士団メンツを熱く見つめる女官がいた!

彼女の視線の先は……?

 フルール王国王宮内にあるカフェテリア。ここは王宮に勤める者なら誰でも利用できる憩いの場だ。

 ランチから軽食、スイーツや夜のおつまみまでメニューは豊富、しかも王宮料理人が作るので、味は保証付き。飲み物も各種いろいろ取り揃えられている。

 ガラスをふんだんに使った明るい空間が人気で、主に執政官や女官、休憩の騎士たちが利用しているが、中には高位高官の姿も見られる。彼ら上官たちには専用のサロンも用意されているのだが、それでもここが気に入って利用しているものも少なくないのだ。


 今日も休憩中の執政官や女官で賑わっている。


 そんなカフェテリアの、中庭に面した窓辺の席で、一人の女官が頬杖をついて外を眺めていた。

 時折ため息もついている。


「ま~た見てんの?」


 別の女官が、お茶の入ったカップと焼き菓子の載ったトレーを手に、彼女の対面の席に陣取って明るく声をかけた。


「いいでしょ! だって素敵なんですもん!!」


 いったん目の前の同僚に視線をやったが、そう言うとすぐにまた窓の外に視線を戻す女官。


「ホント、好きよねぇ。まあ確かに素敵だから、気持ちはわからんでもないけどね」

「でしょう!」


 そう言って、後から来た女官も窓の外に視線を走らせる。

 同意を得た女官は嬉しそうに笑うと、また窓の外を見た。


 彼女たちの視線の先、中庭の広場で、近衛の騎士達が剣の鍛練に汗を流しているところだった。正確に言えば、元特務師団の面々。今はサーシスとユリダリスは不在で、団員たちだけで稽古をしているところだった。


「真剣な顔で剣を打ち合ってるのとか、めちゃくちゃかっこいいのよ」

「あ~確かに。流れる汗すら暑苦しくない、むしろ爽やかだし」

「そうなのそうなの! 制服を脱いでシャツを着崩してるのとか、そこに色気すら感じる」

「無造作に上着を脱ぎ捨てる動作もクラクラしちゃう!」

「汗をぬぐう仕草もたまらん!」

「激しく同意~!!」

「かと思えば、儀式とかでかっちり制服を着てるのとか、もう鼻血ものよね」

「うぎゃ~~~!!!」


 すっかり自分たちの萌えポイントを熱く語る女官二人は、人目がなければゴロゴロとそこらじゅうをのたうちまわっていたかもしれない。

 さんざん萌えポイントを語りまくったところで、


「ここで見てるだけじゃ、ちっともお近づきになれやしないわ!」


 最初から窓の外を見ていた女官がおもむろに立ち上がった。手には決意の拳を握り。


「そうよ!」

「私、ちょっと差し入れでも作って持っていく!」

「おっ、いいねぇ! あんた、何気にお菓子作りとか得意だもんね。それって結構好感度高くね?」

「そう? じゃ、頑張る!」

「頑張れ!!」


 盛り上がった女官は、その日の仕事を終えて自室に帰ってから、せっせと差し入れのお菓子を作ったのであった。


******


 その頃、件の騎士団メンツは。


「おい、ちょ、またあの子こっち見てるぜ!」

「お~、女官のあの子な」

「最近よく俺らの鍛練見てるよな」

「オレ、この間王宮ですれ違った時、めっちゃ顔赤くして俯かれたぞ」

「ええ~? 俺は潤んだ瞳で見つめられたぜ! だからあの子は絶対オレ狙いだって!」

「い~や、俺だっつの!」


 剣の鍛練をしながらも、カフェテリアの窓から見える女官の視線に色めきだつ騎士団メンツ。


「あーんーたーたーちー? やる気あんの?」

「骨、何本もってかれたい?」

「医務室行きたい?」


 もちろんそんな緩んだ空気を綺麗どころトリオが許すはずもなく、冷気漂う笑顔で男どもを見据えている。片手には練習用の模造剣ではなく、いつの間にか真剣が握られていた。

 それを見て一瞬で顔を引き締める騎士達やろーども


「「「「「ぎゃ~!! すんません!! 真面目にやります!!」」」」」


 鍛錬で骨を持って行かれるのは御免こうむりたい彼らは、それまで以上に気合を入れて、一心不乱に剣の稽古に励むのだった。


******


 そして件の女官が、決死の覚悟をして騎士団メンツがたむろする屯所に顔を出したのが、次の日の昼休憩時間。


「あの~……」


「うお! あの子だあの子だ!」


 こそこそと耳打ちしあう騎士団メンツ。そして女官の指名する相手は誰だ誰だとソワソワしだした。

 うじゃうじゃいる男どもの視線の集中砲火を浴びて一瞬怯んだものの、女官はグッと覚悟を決めると、


「これ、食べてください! ずっとファンなんです!! いつも素敵だなぁって見ていました!! お仕事がんばってください! 応援してます!」


 そう言って差し出されたお菓子の入った綺麗な箱。

 相手は……。


「「「ええっ? 私たち?!」」」


 そう、女官は綺麗どころトリオに菓子の入った包みを渡したのだった。

 驚き顔を見合わせる綺麗どころトリオと、


「「「「「そっちかいっ!!!」」」」」


 その場に崩れ落ちた騎士団メンツ(男性に限る)。彼らの悲鳴が、屯所内にこだました。


ありがとうございました(*^-^*)

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