ミモザとベリス ~駆け足版~
ミモザとベリスの馴れ初め。
ちゃんと書こうと思っていたのでざっくり駆け足版w
ベリスとは、私が産まれた時からの付き合いなの。といっても十二も歳が離れているんだけどね。
私の実家が町の仕立て屋をしていて、その仕事で両親が忙しいこともあったから、私は小さいころからベリスの家によく預けられてたの。今となっては黒歴史だけど、おむつだって替えてもらってたらしい。っ……。乙女としては痛いけど、私の記憶にないからまあいいわ。
ベリスは昔っから愛想はよくなかったけど、いつも優しかったから私はとっても懐いていたの。でもベリスは無愛想だけど顔はいいから、近所のお姉ちゃんたちが寄ってきた。それを私は片っ端からペッペッと追い払ったわ。ベリスにべったりと張り付いてね! ベリスの腕にぴったりとくっついて「あかんべ」ってした時の女の人の悔しそうな顔ったら! ベリスだって止めもしないで、むしろ私の好きなようにさせてたから、女の人にはうんざりしてたのよ、きっと。
もちろん「大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」っていうことも言ったわよ。お約束でしょ? でもあの頃は本気で本気でそう思ってたんだから。
いつも隣で私のお世話をしてくれるベリス兄ちゃん。この先もずっと隣にいてくれるものだと、幼い私はそう思っていたのに。
それは私が八歳になった時のことだった。
ベリスが急にフィサリス公爵家の庭師になることになったの。
ベリスの家は代々公爵家の庭師を務めているんだけど、それは直系の人が継いでいたのね。
ベリスのお爺ちゃんから、ベリスの伯父さん――つまりベリスのお父さんの兄ね――へと、庭師長は継がれていたんだけど、その伯父さんには跡を継ぐ男の子ができなかったの。女の子にはちょっとしんどい仕事だからね。そこで弟――ベリスのお父さんね――のところの次男に白羽の矢が刺さったってわけ。 ベリスのお父さんも、王都で腕のいい庭師として有名だったし、ベリス自身も幼いころからお祖父さんに連れられて仕事を見てきたから、そこを色々見込まれたんだろう。
ベリスもその話を断ることをしなかったので、そのまま公爵家に住み込みで仕事をすることになった。
残された私はもちろんしばらくは泣き暮らしたわ。
しかし私は幼いながらも、泣いてばかりじゃ埒が明かないことを理解していたので、ベリスと一緒にいるためにはどうしたらいいのかということを考えた。
ベリスは優秀だから、きっとこのまま公爵家の庭師長になるだろう。
ということは、私もフィサリス家に就職すれば、また一緒にいられるじゃない!
でも一庶民の私、実家は仕立て屋。そんな私がどうやったら公爵家に就職できる?
「どうやったら私も公爵家にいけるかなぁ」
いつものように預けられたベリスの家でグダグダと思い悩んでいると、つい考えが口から出ていたようで、
「そうねぇ。侍女さんならミモザちゃんでもなれるんじゃないかしら」
くすくすと笑いながらベリスのお母さんが教えてくれた。
「侍女?」
「そう。公爵家の方のお世話をしたりする女の人よ。学校で、いい成績を修めたらなれるかもしれないわ」
「学校には誰でも行けるの?」
「行けるわよ」
ベリスのお母さんから根掘り葉掘り聞いた私は、なんとしても公爵家の侍女になるべく勉強を始めたわ。
使用人になるための専門学校の家政科に通い、必死に勉強した。
フィサリス公爵家は使用人にもいろいろ待遇がいいので、超人気の就職先。人気が高いのに採用はほんの少しだから、競争率がハンパない。秘かに王宮よりも就職が難しいと言われているので、学校を主席か、最悪でも次席で卒業しなくちゃ歯牙にもかからない。家政科を主席で卒業するのなんて当たり前。それだけじゃあ盤石とは言えないから、私は後々のためにもヘアメイクなどの副科もとっておいた。
ちなみに後から知ったのだけど、ダリアさんはこの学校の卒業生で、しかも伝説レベルらしい。何がって? そりゃ成績よ。服飾・ヘアメイク・調理、などなど、専科・副科に関わらず総てにおいて首席卒業したらしい。
まあ、それはいいとして。
とりあえず専門学校を主席で卒業した私は、ベリスのお祖父さんのコネも使って(お祖父さんは私のことも実の孫のように可愛がってくれてたからね!)、見事フィサリス公爵家に就職することができた。
でも就職がゴールというわけではなくて、それからも大変だったわ。だって、みなさん当たり前のように主席卒ばかりなのよ? 使用人のエリートみたいな人たちばかりなの。
私のなけなしのプライドなんて、あっという間に粉々だったわ……。
でもベリスに支えられて何とか踏ん張った私。
あの時くじけてしまっていたら、今の幸せはなかったのだろうな。
「オレがついててやるから、がんばれ」
ってベリスが励ましてくれたのを、
「ベリス兄ちゃんのお嫁さんになれるなら頑張る!」
と強引に解釈した私。
「はぁ……。まあ、いい」
「ほんと?」
「ああ」
ちょっと呆れ気味だったけど、最後は笑ってくれたからいいの!
大好きな旦那様と、たのしい仲間と、そしてとっても素敵な主様――公爵夫人のヴィオラ様。
全部を手にした私は無敵なんだから!!
初めこそ宝石の原石のような奥様だったけど、最近じゃあすっかりあか抜けて素敵になられたの。でもまだまだ磨く余地はあるわ。それだけポテンシャルと価値のある奥様だもの!
「奥様ぁ! 今日もしっかり磨きましょうね!!」
「ええ~っと、ほどほどでお願いね!」
ワキワキと指を鳴らして奥様にニッコリ微笑めば、あはっと引きつり笑いなさる奥様。でもそこもおかわいらしいんですけどねっ☆
「何をおっしゃいます!」
「むきゃ~!!」
今日も楽しくお仕事がんばります!!
ありがとうございました(*^-^*)