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裏と表!!  作者: ADA
3/4

3話

 そして次の日。

 俺はいつもと変わらぬ朝を迎える。

 時間は7時ぴったり、習慣になっているので目覚ましは殆ど必要ない。

 ただ寝起きは頭がほとんど回転していない。

 親は、朝早くから家には居ない。きっと徹夜だろうな。

 姉は珍しく朝早くに仕事に向かったのだろうか、コンコンと部屋をノックするが、声が聞こえない。

 「珍しいな」

 俺はそんなことを呟きながら、下の階へ向かっていく。

 洗面台の扉を開けて、歯を磨き、顔を洗って、寝癖をなおしていると、ピンポンとインターホンがなった。

 「どちら様でしょうか?」

 「宅急便です!」

 随分朝早いな、と思っていたが俺は頭が殆ど回らずに、印鑑を持って外に出た。

 「お待たせしました!」

 とは、言ったもののその後の言葉が出ない。なぜなら、そこには人が入れそうなほど、でかいダンボールが……常識的に考えてこのサイズはおかしい。

 流されるままに、印鑑を押して宅配のおじちゃんは車に乗って行った。

 そして、しぶしぶ置かれた荷物を持ち上げようと……あれ……重すぎるんだが……何が入ってやがる!

 「重いぞ……親父のか?」

 文句を言いながらもグッと持ち上げて、開けていた扉を通り、玄関にダンボールを置く。

 「重いって、失礼ね」

 いきなり箱からにょきっと顔が出来てきた。あぁ、顔ね、え……顔? ……顔だって?

 「うぉおおおおおおお! 化け物!」

 慌てて蓋を閉じると、ダンボールが怪物の頭に当たる。

 「怪物とか辞めてよね。それに痛いわよ! 扱い雑すぎるわよ!」

 再び出てきた顔を見ると、春日?

 「春日?」

 「桜って言ったでしょ? というか驚いたわよね? 虎の家に……来ちゃった」

 制服姿の春日がダン箱から上半身を出していた。手をもじもじとしているが可愛くない。

 全然可愛くない。むしろ驚きすぎて死ぬかもしれなかったんだ。殺人未遂だろ。

 「馬鹿じゃねーのか! 死ぬところだったぞ!」

 「死ねばよかったのに」

 「温度差激しいな、おい!」

 「これは愛よ? そう罵倒という名の愛の告白なの!」

 そっか! と納得してしまいそう演技だ。クォリティーが高い。

 いくらなんでも、演技派過ぎるだろ。女優にでもなれよ、もう。

 「演技はそこまでだ。というか、一体何しに来たんだ?」

 「監視するって言ったじゃない? でも、心配じゃない? だから、あなたの家を調べてやってきたって訳!」

 「そうか……玄関はあちらになります。GO HOME!」

 「はーい! 帰りますわ。……ってそんな分けないでしょ?」

  一応ノッてくれるんですか。いや、礼は言わないけどな。

 「だから、一緒に学校に行きましょ?」

 「だが断わる!」

 「昨日、私が告白された子……あなたの親友よね?」

 関係ないだろ、それ。そう思っているが、何故か彼女は含み笑いをしている。

 「そんな親友が、あなたと私がチューをしたって噂が流れれば……どうなるのかしら?」

 「最低だ! あんた最低だよ!」

 「最高? ありがとう!」

 「言ってねーよ、どんな変換機能のついてる脳なんだよ!」

 「ッチ……取り敢えず、そういうことよ!」

 舌打ちした後に、胸張って言ってんじゃねーよ、無い乳が……とか、言ったら殺されそうなので辞めておく。

 「玄関先はうるさいから、癪に障るが、家あがれば?」

 「そう? なら、お邪魔しますわ」

 丁寧にお辞儀をして、入ってくる。ついついその綺麗な動作に見惚れてしまう。

 ほんとのお嬢様みたいじゃないか。

 「何? 見とれてるの?」

 にやっと笑って、じっと俺を見てくる。

 「み、見とれてねーし!」

 「ぷっ……あっそ」

 「笑うんじゃねーよ! 無いち……」

 「それ以上言えば殺す」

 殺気を後ろから飛ばしている怪物を、素早くリビングに通して、ソファーに座らせた。

 「飯は?」

 「まだだけど? でも、セロリーメイトもってるから」

 ぱらぱらと、黄色い箱を上下に振る。……良くない、実に良くないぞ!

 俺は、残念な性格で、健康にはうるさい。

 そして何故か、料理のことになると熱くなってしまう。

 「駄目だ。ちゃんと朝ごはんは食べなければ、体は活動しない、いいか、朝ご飯を抜くと脳の働きが鈍くなる!」

 「あっ……はい」

 萎縮した様子で、桜は頭を下げてきた。

 あぁ……俺はんとなにやってるんだろうか。だが、いまさら収まりがつかない。

 「それでいい。簡単なものだが食わないよりましだ!」

 俺はやっちまった感を隠すように、素早くエプロンを装着し、胃を驚かせないように、少し薄めの味噌汁をつくり、暖かくふかふかのご飯を、おかずには、昨日の残りだが肉じゃがを温める。

 席に座ってもらって、ばんばんと並べる。こういう時に、自分の根っこの部分の料理好きはとめることが出来ない。

 俺もエプロンを外し、少し温めの緑茶を注ぎ、席に着く。

 「手際がいいわね」

 「毎日俺が用意するんだ。その代わり昼飯代もらって、手を抜いて、惣菜パンだけどな」

 「へぇー」

 感心したような目でこちらを見る。何だこれ……物凄く恥かしいぞ。

 「お嬢様っぽい、桜の口に合うかは知らないぞ」

 「いいわよ。おいしそうだし」

 本当に嬉しそうに笑う。……少し可愛らしいと思ったのが悔しいが。

 「手を合わせてください」

 「「いただきます」」

 久し振りに誰かと一緒に朝ごはんを食べた。

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