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隠者が示す、運命の輪

金遁の術を完成させ、公認クエスターへの推薦を待つばかりとなったある夜。セナは南雲の命を受け、大使館の地下図書室にある「禁忌の書架」の整理を任されていた。

カビ臭い古書の香りに混じり、ふと、甘く冷たい香水の匂いが鼻をくすぐる。

影を殺して近づいたセナが見たのは、書棚の隙間に腰掛け、空中に浮いたカードを眺める一人の男だった。

「……誰だ」

セナの問いに、男はゆっくりと顔を上げた。整った顔立ちに、どこか世俗を離れたような浮世離れした微笑。男は手にしたタロットカードを、長い指先で弄んでいる。

「おや、気配が全くなかった。流石は南雲殿が育てた『星の欠片』だ」

男は魔法使いだった。それも、ただの術士ではない。彼が指を弾くと、空間に『Der Eremit(デア・エレミート/隠者)』のアルカナが浮かび上がり、青白い燐光を放って周囲を照らし出す。

「我が名はアルカナ。真理の探究者であり、君のような『運命の変わり目』に立つ者を観察するのが趣味でね」

セナは警戒を解かず、手首の隠しから、暗器を指先に凝縮させる。だが、アルカナと名乗った魔法使いは、悪びれる様子もなくカードを一枚、セナの足元に投げた。

「怯える必要はない。君の中に流れる『奈落の血』と、その手に宿した『黄金の意志』。その矛盾が混ざり合う時、世界にどんな旋律が流れるのか……私はそれを見届けたいだけさ」

アルカナは立ち上がり、すれ違いざまにセナの肩に手を置いた。その手は驚くほど冷たく、しかし魔力の奔流を感じさせるほどに力強かった。

「じきに南雲殿から呼び出しがあるだろう。……セナ、君の歩む道には常に星が降る。それが吉兆か凶兆かは、君自身が決めればいい」

霧が晴れるように、魔法使いの姿はかき消えた。

足元に残されたのは、床に落ちた**『Das Schicksalsrad(ダス・シックザールスラート/運命の輪)』**のカード。

数分後、南雲からの呼び出しが届く。その手には、セナを公認クエスター「星影丸」へと変えるための、輝くシャードが握られていた。

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