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第1話:俺の子じゃないけど、念のため

 子供、ラズはよほど腹をすかしていたのか、昨夜もスープとパンでは全く足りず、ミートボールのゴロゴロ入ったスパゲッティと鶏肉の香草焼きもペロリと平らげていた。サラダは食べなかったからバランスがいいとはいえないが、常時野草かゴミのような何かしか、食べていなかったのかもしれない。俺の前世の祖父は、戦時中芋ばっかり食って、戦後芋が食えなくなったとか言っていたしな。


 うとうとしながらもテーブルに齧り付いていたのを見かねて、メイドが「明日も食べれますから」と言って寝室へ運んだ。執着がすごい。抱き抱えたメイドの肩に齧り付いて叩かれていた。ああ、よだれが………。すまんな。


 そして今朝もよく食べた。オムレツはおかわりをするし、ピッコリーノ(チーズ)も厚切りベーコンも、ついでにブラックプディングもすごい勢いで口に入れていた。実は頬袋とかあるんじゃないだろうか。マッシュルームとトマトは残していたから、やはり野菜が嫌いなのかもしれない。これは改善が必要だな。好き嫌いは良くない。バランス食大事。



 朝食を終え、子供(ラズ)を連れて馬車で教会に向かう。


 教会では、魔力から親子関係を調べることが出来るが、金貨1枚とお高めだ。こういった場合の貴族の血筋を守るためや家庭崩壊を防ぐための必要処置として存在する。本来ならば、子供は授かりもので親子鑑定など、子の存在を否定するような事は教会の教えに反する事だが、それによって家庭不和が起こり、孤児や修道女が増えることを教会も推奨していないため、仕方がないのだろう。


「どこいくの?」

「教会だ。お前と俺の親子関係を調べにいく」

「ふーん。それでアタシがおじさんの子供じゃなかったら、アタシはどうなるの?」

「お前の親に返すことになるだろうな。もしあの女がお前の親じゃないのだとしたら、孤児院行きだ」

「……そっか」


 泣いて「捨てないで」とでもいうかと思ったが、思ったより気丈な子供だった。よく見れば、知性的な目をしているし教育すれば物になるかもしれないが、ドルシネアがなぁ。


「お前はどうしたい?」


 なんとなく、聞いてみた。俺の子であろうとなかろうと、子供に罪はない。まあ産んだ親が悪かったのか、事情があったのかどうかまではわからないが、俺は幸い地位も金もないわけではない。子供の一人くらい下働きとして雇っても問題はない。だから、この子供が働きたいというのなら、それもやぶさかではないと思ったのだ。ラズはギョッとして目を丸くした。


「変なこと聞くんだね、おじさん」

「……おじさんではない。俺はロシナンテという名だ、ラズ」

ロシナンテ(役立たずの駄馬)?」


 『役立たずの駄馬(ロシナンテ)』。前世を思い出しても、あまり役に立ってはいなかった気がするなぁ。上にペコペコ頭を下げて、部下の文句を聞き入れながら折り合いをつける。サンドイッチ職とはよく言ったものだ。折角課長に昇進したのになあ。まぁ、係長と課長の差ってあまりよくわかんないけどさ。給料は上がっても、その分税金も上がって結局手取りは一緒とか、世知辛いよなあ。過労死だったのかなぁ、俺。急性アルコール中毒とかで、ネクタイ頭に巻いて死んでたらなんか嫌だな。保険が下りて家族は金銭面では大丈夫だったと思うが。案外喜ばれてたり。……それもムカつくが。


 まあ、今となってはどうでもいいけど。


「よく知ってるな。なかなか物知りだ。それで、ラズ。お前は俺の娘でない事は確かだと思う。あの女にも行為にも全く覚えがないからな。だが、せっかくの機会だし、もし働きたいというのなら仕事をくれてやろう」

「ほんと?いいの?おじさ…ロシナンテさん幼女好きなの?」

「は?何の話をしてるのだ!?」

「だって奥さんに逃げられたじゃん。仕事っておじさんの愛人?」

「逃げられてない!驚いて勘違いしただけだ!俺の最愛はドルシネアだけだからな!子供を愛人にするような性癖もない!」

「なんだ、意外と純愛主義なんだね。ペドかと思ったよ」

「ペド…っお前、擦れすぎだろう!」

「そうじゃなきゃ、生きていけなかったもん」


 グッと口をつぐむ。確かに、このくらいの子供が市井、いや貧民街で生きていくには、強かで危機管理に富んでいなければ無理だろう。だが、だからと言って子供らしさをなくしていいという物ではない。


「お前、何が得意だ?」

「え?得意って、盗みとか誤魔化しのこと?」

「……それは得意になるべきじゃないことだな」

「えっとじゃあ、逃げ足が速いとか、かわい子ぶるとか、泣きまねとか?あ、しぶといってのもあるかな」


 しぶといってのは特技なのか?


「……足が速いのはいい事だ。エランド(使いぱしり)の仕事ができるぞ。文字は読めるか?」

「字は読めないけど、計算はちょっとだけ?」

「ほう?」

「時々、ゴミ集めのおじさんが来ると、みんなで街のゴミを拾うの。ゴミによっては価値が違って、使えそうなものを拾うと銅貨一枚、普通のゴミだと鉄貨1枚。だけど鉄貨のゴミは15個集めないと銅貨1枚貰えないんでおかしいって言ったんだ。だって鉄貨10枚は銅貨1枚でしょう?あのおじさん、アタシたちが勘定できないだろうと思って誤魔化そうとしたんだよ」

「……そうか。それはよくないな」


 それは、あれだな。使えないゴミを何十個集めようとゴミにしかならないからな。鉄貨をもらえるだけ施されているということなんだろうな。領主計画の一つか。まあ、計算としては間違っていないが。


「でしょ?だからアタシ、ゴミを拾って役に立つような物に見せかける誤魔化しの魔法をかけたの」

「誤魔化しの魔法」

「そ。たとえば、底の抜けたブーツを拾うでしょ。それに誤魔化しの魔法をかけて花瓶に見せかけたり、割れた真鍮のボタンをブローチに見せかけたり」

「いや、ちょっと待て。なんだそれは?」


 誤魔化しが得意って、魔法のことか!


「それは誤魔化しなのか?ブーツは花瓶に変わったのか?」

「ううん。ブーツはブーツ。時間が経つとブーツに戻ったよ。底なしのね」


 あはは、ザマァと黒く笑うラズをみて俺は真顔になった。アレだ。昔話で木の葉を小判に見せかけて人を騙した狸の話。あれ、狐だったかな?


 この子供、魔法が得意のようだが偽装魔法なんてあっただろうか。何属性になるんだ?これを市井に放っておくのは危険な気がする。然るべきところで教育し、真っ当に生きる道を示すべきだろう。詐欺師で捕まり死罪になる未来が見えるようだ。


 教会で親子鑑定はするが、引き取る事は決定した。行き着く先が見える子供を救うのは、貴族の嗜みだろう。


 ……ドルシネアを説得しなくては。「うん」と言ってくれるかな…。だってこの子供の人生に関わってくるんだ。放って置けないだろう、犯罪者になるってわかってて見過ごせるほど、俺も鬼ではない。



ロシナンテ、割と情にあついので捨て置きできないタチです。

転生チートは………なさそう。

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