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織田信行が行く(改)  作者: あひるさん
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鳴海城(1552年)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

2024.9.26改訂

 信行は反信長一派粛清後の始末を付けてから那古野城に向かった。信行は普段と同じように振舞っていたが、家臣の中には目を逸らす者や怯える者が居る事から粛清の一件が原因で必要以上に恐れられているように思われた。


「秀貞は家老職を外して政秀の下に付けた」

「どんな様子でしたか?」

「馬鹿な事をしたと凹んでいたが、吹っ切れた感じだったな」


 秀貞は斬首を覚悟していたが直接関与していない事を理由に一官吏からのやり直しを命じて身柄を政秀に預けた。周囲からは白い目で見られたが、しがらみから解放されたので秀貞本人は何ら気にする事なく飄々としていた。


 信長と信行は政秀を交えて話し合いを行い、次のように人事を定めて布告する事になった。


当主:織田信長

那古野城主:織田信長

末森城主:織田信行

守山城主:織田信光

筆頭家老:平手政秀(那古野城付)

次席家老:内藤勝介(末森城付)

次席家老:青山信昌(守山城付)


「兄上、お願いしたい事があります」

「何だ?」

「鳴海の安堵状と駿河への物見を認めて頂きたく」


 三河との国境で小競り合いが続いている上に、鳴海城の山口教継が今川の調略を受けて寝返りを画策しているという噂が流布されていた。信行は今川の現状視察を兼ねて鳴海城に出向いて教継の意向を探ろうと考えた。


「良いだろう。鳴海が今川の手に渡れば一大事だからな。吞める条件なら受け入れてくれ」

「承知致しました」

「勝家か盛次を連れて行けよ」


 信行は熱田商人の加藤光泰に連絡を取り、商家の手代として駿河に同行する事を含めて諸々の調整を行った後で末森に戻った。そして休む間もなく数名の家臣を伴って東海道を東に向かった。


*****


 信行は敢えて先触れを出さずに鳴海城を訪れた。教継は突然の来訪に驚いたが疑念を抱かれないよう普段と変わらない態度で信之を出迎えた。


「これを渡してくれと兄上から頼まれてね」

「拝見致します」


 中身は鳴海城の安堵状だが、信行が言った事は全くの出鱈目であり、不要だと言う信長に頼み込んで無理矢理作らせたモノである。


「兄上から伝言も預かっている。東の守りは教継に任せると」

「信行様は冗談が得意なようで」

「その理由は?」


 信行は出された茶を啜りながら教継に訊ねたが、笑みを浮かべていたのが一変して能面のように表情を出さなくなった。


「ウツケを御館様と認める事は出来ません」

「兄上を舐めているようだな。お前が今川と緊密に連絡を取り合い、刈谷と知多を狙っている事を兄上は知っているぞ。それでもウツケと呼べるのか?」

「何だと!」

「それと私を亡き者にするなら慎重に物事を進めるべきだ」


 信行はスッと立ち上がると刀を抜いて切先を教継に突き付けた。言葉には出さなかったが、当主の息子が必ずしも放蕩三昧であるとは限らないぞと態度で示した。


「隣の部屋から殺気がダダ漏れだ。大方、教吉が槍でも構えているのだろう?」

「信行様は化け物なのか…」

「失礼だな。私が化け物なら兄上はそれを率いる閻魔様と言ったところだな」


 襖が開けられて予想通り教吉が出てきたが、その背後には兵士が付いていて教吉の首に刀を突き付けていた。


「私は化け物だから先んじて手を打たせてもらった」

「信行様が化け物とは山口様も上手い事を言われる」

「まさか…」


 教吉の背後から顔を出したのは予想通り勝家だった。信長から指示された上に勝介からも強く言われた事から勝家を同行させていた。 


 勝家は城に入ると背格好が似た兵士の一人に金を握らせて甲冑を借りて身に付けると城内を探索した。程なく槍を持った教吉を見つけたので後を付けていき、別室に入り合図を待ってところを背後から近付き無力化した。


「聞いておられる筈ですが、御館様は反対派を一掃され強固な体制を築かれておられる」

「反対派を一掃?」

「所謂コレですな」


 勝家は手で首を掻き斬る仕草を見せた。林通具を筆頭に領内で数十名の家臣が処断されて各城で晒し首にされていた。


「粛清した話は聞いていない」

「城内に今川の間者が紛れ込んでいる可能性が高いな」

「教吉、今すぐ虱潰しに探せ。血を流しても構わん」


 教吉は一礼すると部屋から出て行き、家臣を集める声が聞こえてきた。


「山口様、御館様はウツケではなかった。周りを油断させる為に敢えてそのフリをされていた」

「それなら納得がいく」

「某や盛次もそれに気付かず馬鹿な真似をしました。信行様に過ちを認めて生かされている次第です」


 勝家は盛次と共に織田に忠誠を誓い、次に裏切るような事があれば族滅されてもそれを恨まずと書かれた誓紙を信行に出していた。


「信行様、某も織田家に忠誠を誓います。今回の件について如何なる処分が下されても受け入れます」

「よく言ってくれた。鳴海を全力で守る事でその処分の代わりとする」

「承知致しました」


 信行と勝家は翌朝早くに城を出て光泰との合流地点に向かった。教継と教吉は繋ぎ役を含めた今川の関係者を全員始末した後、信長と勝介にその旨を伝える使番を送った。

【登場人物】

織田信光 1516〜

 →織田家臣、信長と信行の伯父

青山信昌 1515〜

 →織田家臣

加藤光泰 1510〜

 →熱田の商人

山口教継 1490〜

 →織田家臣

山口教吉 1526〜

 →織田家臣、山口教吉の長男

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