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織田信行が行く(改)  作者: あひるさん
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内憂の排除(1552年)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

2024.9.26改訂

「信行様、今が最大の好機です」

「信長様を追放して家督を継ぐべきです」

「ウツケに織田家の命運は任せられません」


 信行が葬儀を終えて末森城に戻った直後から林通具を中心とする反信長一派による日参が始まった。


「私の考えは既に固まっている。改めて申し伝えるのでしばらく待ってほしい」


 信行は蜂起を迫る通具らに対して自重するように求めて追い返していたが、日を追う毎に酷くなるので政務に影響を来すようになった。


「通具が政務を怠り、猟官紛いの動きをしている事は知っているな?」

「はい」

「付家老なら然るべき措置を取るのが役目だと思うが」

「今のところ政務に支障をきたしておりませんし、弟は信行様の事を考えてやっていると申しておりますので」


 兄の林秀貞を呼んで何度か改善を求めたが理由を付けて動こうとしないので信行は強硬手段に出る事を決めて那古野城に人を走らせた。


*****


 数日後、信行に呼び出された秀貞は部屋に入るなり顔を顰めた。見たくもない人物が信行と並んで座っていたからである。


「秀貞が政務多忙で行き届かない面がある。よって内藤勝介を新たに付家老として筆頭役に任じる事にした」

「それは…」

「秀貞、異論は認めないぞ。お前が蒔いた種だからな」


 信行に正論を突かれた秀貞は何も言い返せなかった。その横で勝介が恐ろしい形相をしているので言葉を発すればしっぺ返しを喰うと直感した。


 事情を知らず説得に訪れた通具も職務怠慢を理由に叱責された事から反信長一派による日参はその日を最後に無くなり、一時的だが普段と変わらない日常に戻った。


*****


「お呼びと聞きましたが」

「お前の考えを聞きたくてね」

「考え?」

「兄に背いて身を滅ぼすのか、兄に従い一国一城の主を目指すのか」


 信行に呼び出された柴田勝家はいきなり決断を迫られて動揺を隠せなかった。通具からは上々の感触だと聞いていたのに信行の口振りからそのようなモノは一切感じなかった。


 勝介が来てから露骨に動けなくなったが水面下では活発に動いており、那古野に居る同志からも順調だという知らせが通具に届いていた。


「お前を信じて言うが、私が立つ事は無い。天下統一を目指す兄上を支えるのが私の役目だ」

「天下統一?」

「日の本を一つにする意味だ」


 勝家は頭を殴られたような衝撃を受けた。放蕩三昧でウツケと呼ばれている信長がそこまで考えているとは思わなかった。そして通具らによる信行擁立計画は信長にも知られており、成功は万に一つもない事を実感した。


「御館様の真意を読み取れなかった某の過ちでした」

「分かってくれて幸いだ」

「一つお聞きしたい事が。某が認めなければ?」

「お前は生きて城を出る事は無かった」


 信行が手を叩くと小姓が襖を開けた。そこには勝介とその配下十数名が斬り込める態勢を取っているのが見えた。家中では鬼柴田の異名を誇る勝家でもその上をいく勝介が相手では勝てる見込みは無かった。


「勝家に頼みたい事がある」

「何なりとお命じ下さい」

「先ずは…」


 信行との話し合いを終えて部屋を出た勝家の顔は憑き物が取れたような明るいものになっていた。


*****


 信行から緊急招集する旨の通知が届けられて末森城は早朝から集まった家臣でごった返していた。その中で反信長一派は信行が反旗を翻す決断をしたと思い込んで意気盛んになっていた。


「織田家の今後を踏まえた体制に改める事にした。名前を呼ぶ者には特別な役目を与えるので心して受けるように」

「…」

「林通具、次に〜、最後に〜。名前を呼んだ者は役目を解いた上で処断する」


 騒々しい雰囲気だったが一瞬で静かになった。誰もが互いに顔を見合わせた後、名前を呼ばれた者が居る方向に視線を向けた。


「お待ち下さい!」

「どういう意味ですか!」

「御館様に対する謀叛を画策した罪だ。私に話を持ち掛けた事が確固たる証拠だ」


 通具たちはその場から逃げようと立ち上がったが、勝家が率いる一隊が広間に突入して抵抗する間もなく捕らえられた。


「勝家、貴様!」

「何とでも言え。俺は過ちを認めて考えを改めただけだ」

「畜生」


 通具は勝家に罵詈雑言を浴びせたが厳重に縛られているので犬の遠吠えにしか見えず、周囲から失笑されて恥の上塗りをする形になった。


「林秀貞、身柄を那古野に送り御館様に判断を委ねる」

「はっ」


 大捕り物を見た秀貞は覚悟を決めていたのか逃げる事なく自ら縄につき外へ連れて行かれた。秀貞は直接的は関与はしていないが、謀叛を察知していながら通具を止めようとしなかったので間接的な関与を疑われた。信長の判断次第になるが通具と同様に処断される可能性が高いとされた。


 通具に加担していた者の中で勝家以外では佐久間盛次が土壇場で信行に寝返った。勝家と同様に信行に呼ばれて勝介同席の元で説得された。一方捕らえられた通具らは申し開きの場を設けてくれと懇願していたが聞き入れられる事なく翌日には首を刎ねられた。

【登場人物】

内藤勝介 1505〜

 →織田家臣

柴田勝家 1522〜

 →織田家臣

佐久間盛次 1523~

 →織田家臣

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