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織田信行が行く(改)  作者: あひるさん
14/41

木下藤吉郎(1554年)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

2024.10.7改訂

 清州城を拠点に諜報活動をしている勘兵衛から兄信広に関する情報が届けられた。善住坊から渡された手紙に目を通した信行は思わず顔を顰めた。


「これは拙いな」

「義龍の遣いに対して扱いが悪いと不平不満を漏らしていたようです」

「安祥城の件で兄者の能力を疑問視する者が居るのを忘れたのか?」


 信広が義龍の遣いと対面して信長に対する不平不満を打ち明けたという。鳴海城で対今川を受け持つ弟信行や清州城で対斎藤を受け持つ伯父信光に比べて自分は信光の寄騎扱いである事に不満を抱いていた。信長が尾張統一を機会に尾張守を名乗り、信行に尾張介を名乗らせた事も不満に拍車を掛けていた。


「兄上や孫六はこの事は既に知っているのだな?」

「はい。御館様は監視を続けろと頭(鵜飼孫六)に指示を出しました」

「影響が出ていないから手は出さないという事か」

「おそらく。尾張介様はどうされますか?」

「兄上が動く素振りを見せたら直ぐに知らせてくれ」


 信広は庶子とはいえ信秀の嫡男になるので家中でもそれなりに人望はある。その人物を信長が討つような事になれば尾張が再び乱れる可能性があった。それなら自分が手を下して汚名を被る事で信長に害が及ばない様にすれば良いと考えた。


*****


 ある日城内での政務を済ませた信行は勝介と盛次を伴って城下を見て回った。信長の肝煎りで導入した関所撤廃と楽市楽座の施策が上手く行っているかを確認する目的があった。楽市楽座は近江の六角義賢が導入しているものを模倣したが、関所撤廃は近隣勢力では実施している所が無く手探りの状態である。


「小売商人の姿が多くなったように見えるが」

「実際に増えております。一部の大店から反発されましたが概ね受け入れております」

「尾張に人と金を呼び込む為に兄上が考えた施策だ。成功させなければ導入した意味が無い」

「規範を守らない者に対しては厳しい態度で臨んでおります」


 信行の管轄下にある鳴海・刈谷・河和・内海の四城では法令を守らない者には厳しい罰則を定めており、雇用している大店にも連座を適用して法令遵守を徹底させている。導入当初において織田家に関わりのある大店が法令違反を大規模にしていたので信行は容赦なく店の権利を取り上げて潰している。


「止めなさい」

「人の邪魔をして何が楽しいのですか!」


 前方から言い争う声が聞こえて来たので信行たちは様子を見に行くと人が群がっていた。野次馬を掻き分けて行くと小売商人の夫婦が浪人風体の男数名と揉めていた。浪人が小売商人に対して場所代を払えと脅迫して商品にもケチを付けていた。


「何処の差し金か知らないが、私の目の前でやってくれるじゃないか」

「信行様、ここでお待ち下さい」

「盛次、程々にな」


 盛次は腕捲りすると一人で浪人の前に出て、突然現れた盛次に驚く浪人たちを問答無用で投げ飛ばした。立ち上がろうとする浪人を蹴り飛ばすなどして身動きを取れなくした。騒ぎを聞きつけた兵士が集まってきて野次馬を解散させると信行たちが居たので驚いていた。


「この連中は?」

「小売商人の商いを妨害していた。大店が関与している可能性があるから厳しく取り調べろ」

「承知致しました」


 盛次一人にボロボロにされた浪人たちは兵士の手で城に連行されていった。残された商人夫婦は恐怖のあまり座り込んでいた。信行は二人に近づくと目線を合わせる為に目の前で座った。


「大丈夫か?」

「助けて頂きましてありがとうございます」

「無事で良かった。しかし災難だったな」

「少し前から商いの邪魔をするようになり、今日は商品に手を掛けたのでカッとなりまして」

「刀を持つ浪人相手に啖呵を切るとは大したものだ」


 信行は浪人相手に怯まなかった商人に興味を持った。この男は何かを持っているように思えてきたので召し抱えるなり、御用商人に取り立てて手の内に入れておくべきだと思った。


「私は木下藤吉郎と申します。横に居るのは家内のおねと申します」

「私の名は織田信行。後ろに居るのは内藤勝介と佐久間盛次で私の寄騎だ」

「よりき?」

「兄上の家来で私が預かっていると言えば分かるかな?」


 藤吉郎はしばらく考えた後、血相を変えて突然頭を下げた。


「城主様とは知らず、申し訳ございません」

「謝る必要はない。正しい事をやったのだから胸を張れば良い」

「無礼を承知でお願いしたい事が」

「私に出来るなら」

「家来に加えて頂きたいのです」

「何やら事情があるように見える。城で話を聞かせてもらおうか」


 藤吉郎が思い詰めた様子だったので腰を落ち着けて話を聞く必要があると判断したので信行は藤吉郎とおねを伴って城に戻った。おねと名乗った女性についてはどこかで見たような気がしたので信行は記憶の糸を辿っていた。


【登場人物】

織田信広 1531~

 →織田家臣

木下藤吉郎 1537~

 →鳴海の商人

木下おね 1538~ 

 →藤吉郎の妻 ※生年を変えています

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