始まり
7月21日_____学生ならば、この日は夏休みに入る1日前だと、大騒ぎするだろう
だけど、俺…いや、表の全国民はいまげっそりしていると思う
俺の通う高校、私立日和学園ではいま全生徒だけではなく全教員も検査を受けている
「次!2年2組、火山 陸! 」
『…はい』
火山陸…それが俺の名前である
どこか威圧感がある検査官の前に立ち、検査官が持っている虫取りカゴのようなものを見る
中には何もいないと思うが、そうではない
俺が妖怪のことを見えていないだけ
「ふむ、見えていないか。では帰ってよろしい。」
『はい、ありがとうございました。…さようなら』
そう言って検査官に背を向け、早足で検査場から出ていく
_______ここ日本では妖怪というものが存在している
昔から、妖怪は人を喰い世にいる。ただし、妖怪と言っても
"玉藻"やら、"海坊主"などは昔に封印されている
今残っている妖怪は全て、有名な妖怪ではない
そして、そんな妖怪を祓う祓い屋という職業がある
噂では祓い屋は不思議な力を使う。
妖怪と祓い屋は日本を半分に分けて、その下のところで暮らしており、妖怪は半分から上には結界が貼ってあるようで行けない。
日本の半分から上は"表の国"半分から下は"裏の国"と俺たちは呼んでいる_______
ああ〜…早く家に帰ってテレビ見たい…
そんなことを思いながら地面を見下ろす
黒い色をしたコンクリートがあるだけ
…一回でいいから、祓い屋が使うという不思議な力を使ってみたいな
ま、そんなことできないだろうけど
即結論を出し、ふと、裏路地の道を見る
この街は裏路地がたくさんあり、そのせいで犯罪が裏路地で起こることもしばしば
そんな裏路地の道端に、長細いナニカが落ちている
足がふらりと裏路地の道に向き、歩く
普段の俺ならみなかったふりをしてそのまま歩いていくのに、なぜか、今日は見なかったふりをしなかった。
夏休みで浮かれたかな…
落ちているナニカ前についてしゃがむが、一向に何かわからない
さすが、光が入ってこない裏路地だな
落ちているナニカを掴むと、チリンっと音を立てた
『…鈴がついているのか?』
チリンとなる鈴の音を聞きながら裏路地を出て、手に持っているナニカを見ると、鮮やかな黄色と赤色が目に飛び込んできた
『なんだ…?これは…』
見ていると、この長細いナニカは引き抜くことができるようだ
『警察に届けるなら、何かわかったほうがいいよな…』
まあ、そんなヤバいものではないだろう
そう思い、抜いてみると…
『かっ…刀!?』
懐剣…所謂、短剣というものが俺の手の中にあった
俺は一目散に刀を裏路地に放り投げてしまった
カランと音が少し遠くの方で鳴り響いた
『なんっでこんなところに刀があるんだよ!!』
そう言ったところで、ハッと我に帰った
こんな街中で刀とか言ってしまったら通報されるかもしれない。
恐る恐る周りを見ると、近くには誰もいない。
『…っ、はぁ…よかった』
一瞬、コンクリートにへたり込みそうになったが、こうしてはいられない。
早く、早く家に帰ろう。あんなものを見てはいない、俺は何も見ていない
あれーなんで俺こんなところに立ち止まってるんだろー。あーそっかー靴紐が解けたんだったー
『は、早く、家に帰ろう…!うん、俺は何も見ていないぞ……!…よしっ!』
足を一歩踏み出し、俺は家への帰路に帰っ
「いってえええぇぇええ!!お前!!もっと優しく戻せよ!!!」
そんな声が背後から聞こえた
声が聞こえた瞬間に、足音が近づいてきて、最後に俺の肩に手が置かれたのか重みが加わった
『…え?』
俺の肩を掴んでいるであろう人を見るために後ろを振り返る
俺の目に飛び込んできたのは赤と黄色がやけに強調された着物を着た人物だった
____これが、俺の運命を変えた瞬間だった