ファーストコンタクト
模湖ちゃんと初めて会ったのは、9月の刈谷のイベントだった。当時よく撮影していた他のレイヤーさんから「イベントで大型合わせをするのでカメラマンとして来てほしい」と依頼された。
当時のこの合わせは腕の良いカメラマンがメインカメラをして、僕はサブカメラ。要するにオフ写専門で撮影する役割で、たまにメインカメラさんの撮影していない子を飽きさせないよう個撮することもある、みたいな感じ、気楽に依頼を受けて参加することにした。
内容は『31擬人化併せ』
31とはアイスクリームのあの「31」で、例えば、唯一知り合いの主催の愛々さんがコスしたフレイバー「サーティーワンパーティー」の擬人化コスは、
「サーティワンパーティー☆ピンクとブルーのサーティワンカラーで彩った40周年にぴったりのアイスクリームが誕生!やさしい味わいのベリーとミントのアイスクリームに3色の星形チョコレートがキラリ☆さあ、一緒にポップ&キュートなサーティワンパーティを楽しもう!」
とHPに書いてあり、おいしそうでカラフルポップなアイスの画像が貼られていた
このイメージを頭の中に落とし込み、擬人化してコスプレするわけである。彼女はロングヘアー金髪女子のセパレートの衣装でチアリーダーっぽい雰囲気のコスだった。
模湖ちゃんは「キャラメルプレリンムース」男の子で擬人化していた。
HPにはこう書いてある、
「バニラキャラメルムースアイスクリームに、プレリンカシュー(カラメルをかけて砕いたカシュー)と、ホワイトチョコでコーティングされたアーモンドライスクランチ、ブラウンシュガーリボンまで入った贅沢な味わい。」
写真と実際食べたであろう感覚から疑似化コスプレのキャラ設定をするのだから、コスプレイヤーには恐れ入る。
撮影後に一人で31で食べてみた、なるほど彼女(キャラ設定は男子)を食べるとこんな味なんだ、「また食べてみたい味だな」最初の僕が抱いた模湖ちゃんの印象がこの言葉だった。
模湖ちゃんのコスは、ショタのかわいい少年で多分彼女の狙い通りのコス、元気いっぱいな少年のコス。ただそれよりも印象深い事件があり、模湖ちゃんは印象ではなく確実に気になる女の子として脳裏に焼き付いた。
主催の愛々さん等数名が路上に寝転がって俯瞰で撮る構図の時の事件。
「ここに頭を真ん中にして円形に寝転がったところをあの歩道橋の上から撮る感じでどう?」
「かわいい」
「やろやろ!!」
4名のコスプレイヤーが路上に寝転がる、今だったら多分そういった行動は路上を占拠して危険なので規制が入りイベントスタッフから注意を受けるかもしれないんだけど、街中イベントと言うこともあり当時はそういった感覚はなかった。
街中それも駅近くなので一般人も多く通る、隅っこで撮影していても奇妙な格好をした若い娘が何やらやっていると物珍しさに近づいてくる輩も普通にいる。当然だ。今回も例にもれず高校生男子のグループがスマホを手にして近づいてきた。
「なんかスゲーな」
「おう」
そんな会話をしている、「かわいい」なら健全なナンパだけど「スゲー」は不健全の方だ。ミニスカの衣装で丸まって寝転がるとお尻が丸見えになる、アンダースコートでガードはしているものの一般人から見ると丸見えのイメージだ。
「そそるね~」
「俺にも画像回せよ!」
僕は男子高校生に注意をしようと、歩道橋の上から駆け下りた
男子高校生はそのお尻を狙ってスマホをかざした、
「間に合わないか」
階段を駆け下りたその瞬間、その男子高校生と愛々さんの間に模湖ちゃんが座り込んだ。つまりは撮影妨害、お尻をガードしたのだ。
通常コスプレイヤーも一般人の一人で無許可に撮影して良いものではない、撮影にはコスプレイヤー個人の許可が必要だし、掲載にはさらに本人の許可が必要だ。ただこの感覚が一般人にはわからない。テーマパークのゆるキャラみたいに自由に撮っていいものと思うのが普通の感覚なのだ。
摸湖ちゃんの顔をみると少し怒ってふくれっ面だ、ここまでのふくれっ面は初めて見た。その怒ってるけどかわいい感じが僕の印象に残った。
「ちぇ、なんだよ!」
男子高校生は雰囲気を察して足早に歩き去りこの事件は事なきを得た。